甲高く、しかもはんぱでない声量。
更には独特のイントネーションが、車に乗り込もうとした私の耳を襲った。私は反射的に、声のした方へ
首を向ける。
それは店の出入り口で、長身の男と連れだって訪れた金髪の若い女が、店から出たばかりの鈴原夫妻
に駆け寄っているところ。男は、高校生くらいの女の子に腕を抱えられている。彼らの子供にしては大き
すぎる。歳が合わない。親戚か何かだろうか。
駆けている女の、背の中ほどまで伸びた天然の金髪が、一瞬、あの頃の惣流に重なった。
まさかと思った。
他人のそら似と疑った。
でも、その後に続いた委員長の台詞が、それが現実であると私に教えてくれた。
「アスカ!」
そして、鈴原トウジの一声。
「センセ、シンジやないかい!」
碇と惣流が生きていた、生きていてくれた。
しかも、これ以上ないくらい幸せそうに笑っている二人。
連れだっているところからして、彼らは恋人同士か夫婦に違いない。よく見れば、碇の腕から離れない少
女は惣流に似ている。髪の毛も栗色で、碇と惣流の子供と考えてよさそうだ。早い時期にできた子供
と
考えれば、辻褄は合う。あの子が見た目通りの歳だとすると、生まれた時期に少々問題はありそうだが。
それはともかく、私も、あの喜びの輪に入りたい。
が、場の雰囲気を壊すわけにはいかない。事実を知ることが出来ただけで良しとするべきだろう。
私が顔を出したところで・・・
「おとうさん、なんで泣いてるの?」
「え?あ、いや、目にゴミが入っちゃってな。
それより、シートベルトしたか?」
「ちゃんとやってるよ。見えないの?おとうさん」
「そ、そうだったな。じゃ、行くぞ」
私は、息子の前で嗚咽を漏らすまいと必死に堪えながら家路を急ぐ。
碇の生存を、早く妻に伝えなくては。
私は知っている。妻はまだ、碇への想いを捨てていない。同窓会に一度も出席しなかったのは、碇のいな
い現実を認めたくなかったからだ。私と結婚したのは、何かの間違いか気の迷いでしかない。
それでもいい。妻が未だに碇を想っていてもいい。私は、妻の喜ぶ顔が見たい。
その顔はきっと、今まで見たことないほど綺麗であろうから。
でらさんから元クラスメートの人から見たエヴァキャラのその後のお話をいただきました。
姿を消したシンジとアスカ‥‥。
いったい何があったのでしょうねって、
>あの子が見た目通りの歳だとすると、生まれた時期に少々問題はありそう
ナニがあったのですね(笑
奥様も今では旧友殿が一番好きですから、アスカ×シンジの幸せを素直に祝ってくださると思いますよ。
素敵なお話でした。みなさんも是非でらさんに読後の感想メールをお願いします。