だ〜くさいど   in Asuka

    作者:でらさん














    惣流・アスカ・ラングレー。
    独系アメリカ人の父と日独ハーフの母を持つ、クォーターの天才美少女(自称)。
    彼女は今、ドイツから日本への船旅の最中。それも、後少しで終わりに近づいているところ。
    その彼女の前に現在進行形で立つのは、同年齢の碇シンジ。そしてその横に、彼の臨時保
    護者となっている、葛城ミサト一尉。
    他に二人の少年がいるが、そちらは無視する。はっきり言って、描写が面倒だ。鈴原トウジ、
    相田ケンスケと言えば大抵の人は分かると思うので、適当に想像してもらいたい。
    アスカ、碇シンジ、葛城ミサトの三人は特殊な組織に属し、特殊な立場にある。特にアスカと
    シンジは、彼らにだけしか扱えない兵器のパイロット。特殊中の特殊。そして現在も、特殊な
    場所にいる。国連軍太平洋艦隊旗艦、空母オーバー・ザ・レインボーの甲板上である。
    作戦行動中の艦であるが故に、障害物の少ない甲板上は当然として風は強く、五人が相対
    した時、アスカ嬢の短いワンピースの裾が風で捲れ上がるハプニングがあった。
    関係者に気の強さで知られる彼女は、少年達にショーツを見られた腹いせに彼らの顔面へ
    平手をお見舞い。
    が、シンジには巧く避けられてしまった。
    一瞬、顔色を変えて再度シンジに手を出そうとしたアスカは、彼と顔を合わせるや、何か悟っ
    た様子で引き下がった。シンジもミサトに強く自制を促され、アスカに突っかかることはなく、
    互いに自己紹介をしてその場は収まっている。
    トウジとケンスケは、収まらない様子でアスカに文句を言ったが、彼女は無視。ついでに作者
    も無視する。面倒だ。


    「さて、自己紹介は終わったから、みんなで艦隊司令に挨拶に行くわよ。
    私に付いてきて」


    「挨拶なんて、ミサト一人で充分でしょ?
    子供が発令所に入ると、司令も気分悪くしそうだわ」


    「それもそうだけど、アスカとシンジ君は関係者だから」


    「だから、関係者代表でミサトが挨拶すればいいじゃない。
    アタシは、サードチルドレンに使徒戦のことで聞きたいことがあるの」


    アスカの言うことが正論なのは、ミサトも分かっている。取材などの特別な事情以外で、作戦
    行動中に部外者を空母の発令所に入れるなど、普通は難しい。
    しかし、ネルフが国連軍の上位組織であることをここではっきりと主張しておきたいミサトは、
    適格者二人を同席させて時代の変化を認識させたいのだ。
    その辺の所を、すでに大学を出ている聡明なアスカに説明すれば彼女も理解しそうなものだ
    が、チラチラとシンジへ視線を送りながら喋るアスカの真意がミサトには透けて見える。
    要は、シンジと二人きりになりたいだけらしい。数年前、ドイツ支部に出向していた関係でアス
    カと面識のあるミサトは彼女の一目惚れが信じられないが、そう判断するしかない。
    シンジも表面上は興味なさそうにしているが、彼の好みからしてアスカはど真ん中的中の少
    女。二人きりになりたいに違いない。
    実情はどうあれ、少年少女の恋のさや当ては見ていて微笑ましく、茶々を入れてからかいた
    いくらいだが、仕事は仕事。
    二人とも、ネルフの一員なのだし。


    「でもね」


    「アスカ、葛城を困らせちゃいけないぜ」


    ミサトに助け船を出したのは、ひょいといった感じでいきなり現れた、無精髭の男。
    歳の頃は、三〇前後。ミサトと同じくらい。無精髭とはいえ不潔感はあまりなく、伸びた髪の毛を
    一本に縛ったその姿は、ファッションとしてそれなりに視ることができる。くたびれたYシャツにス
    ラックスといったスタイルのセットで考えると、叩き上げの刑事に見えなくもない。
    アスカは、彼の姿を認めると顔を綻ばせて小走りに駆け寄り、その腕に抱きついた。


    「加持さん!」


    加持は、アスカの初恋の相手。シンジへのそれとは別に、親近感は失っていないようだ。
    ミサトはどこか安心し、旧知である加持へ言葉を投げた。
    旧い知り合いというより、昔の男と言った方がいいか。学生時代に付き合い、結婚まで考えてい
    た男だ。


    「加持、あんたも一緒に来てたの?」


    「俺は、アスカのガード兼保護者だからな。
    アスカの異動に伴って、俺も本部へ異動ってわけだ。出世コースに乗ったかな、俺も」


    「あんたがネルフ高官なんてことになったら、世も末だわ」


    「ははははは、まあ、そう言うなよ。
    それより、早く発令所に行かないと拙いんじゃないか?俺も付き合うよ。
    アスカ、行くぞ」


    「・・・は〜い」


    加持の言うことには従うのか。
    アスカは渋々と同意し、加持の腕にぶら下がりながら発令所へと向かうのだった。








    発令所でのやりとりは、艦隊司令とミサトの緊迫感溢れるシリアスな展開であったのだが、この話
    の趣旨とは相容れないので省く。ついでに、発令所に同行できなかった他二名の少年達について
    も、無駄なので省くことにする。
    そんなわけで、とりあえず公的な行事は終ったので各々には自由な時間が与えられている。
    アスカは、すぐにでもシンジに対するアクションを起こすと思われたが、彼女は加持とどこかに消え
    てしまった。
    で、どこで何をしているのかといえば・・・


    「加持、てめえ、自分の立場ってもんが分かってんのか?あぁ!?」
    (※注 アスカです)


    加持にあてがわれた士官用の一室で、加持は壁を背にアスカに詰め寄られ、床に尻を着いた。
    先ほどまでの少女らしい口調はどこへやら。堅気とは思えない品のない台詞が、美少女イメージぶ
    ち壊しでポンポンと出てくる。


    「お、俺が何かしたか?」


    「何かしたかだと?
    アタシがサードと二人きりになりたがってんの、分かっただろうが!
    それを邪魔しやがって。空気、読めよ」
    (※注 アスカ)


    「で、でもな、アスカ。
    ネルフ関係者として国連軍へ挨拶するのは」


    「黙れ。
    てめえの主人は、誰だ?」
    (※注 アスカだってば)


    「ア、アスカ・・様です」


    「それでいい。
    てめえの生殺与奪権は、このアタシが握ってること、忘れるんじゃねえぞ」
    (※注 アスカ)


    「は、はいぃぃ!」


    加持は、何でこんなことになったのか嘆く前に、反射で返事をした。
    誰かに見られたら情けないどころではないが、実際問題、アスカに頭が上がらないのは事実なので
    仕方ない。
    普通なら、いくら弱みを握られたといってもこんな少女に屈することなどあり得ない。脅される前に必
    要な措置(殺害も含む)を執るだけ。
    が、しかし、アスカは妹のような存在だし、何より彼女はエヴァ弐号機のパイロット。手を出せる人間
    ではない。


    「分かったら、シンジと二人きりになる機会を作れよ。
    一目惚れしちまったんだ」
    (※注 アスカ)


    「君が、一目惚れ!?
    あのサードチルドレン、碇シンジにか?
    言っちゃ悪いが、君に値する男とは、とても・・・」


    加持も、シンジのことは、ある程度知っている。色々な意味で、有名な少年であるから。
    ネルフ本部司令の一人息子にして、エヴァ初号機のパイロットに選出されたサードチルドレン。
    しかも初搭乗時のシンクロ率は、前例のない高率。すぐ後の実戦でも、損害を被りながら見事使徒を
    殲滅している。
    とはいえ、資質はともかく実力の評価は芳しいものではない。時間をかけて鍛えれば才能を発揮する
    と思われるが、現在のところは普通の中学生に毛が生えたようなもの。一〇年近く専門の訓練を受け
    てきたアスカとは、雲泥の差がある。
    更に、戦闘に向かない内向的な性格とか、父のゲンドウとの軋轢を原因とするやる気の無さが職員
    の士気を低下させているともいう。
    総じて言うなら、肯定的な評価を下せる少年ではないということ。
    顔は、割と整っているようだが。
    しかし、アスカの印象は違う様子。


    「アタシはな、加持。人の噂や字より、自分の目と耳、直感を信じるんだよ。
    あれは、ただもんじゃねえ。アタシには、分かるんだ。
    それと、アタシに値するかどうかはアタシ自身が決める。てめえが勝手に決めるんじゃねえ」
    (※注 アスカ)


    「す、すまん。
    とにかく、そういった機会は日本に着いてから」


    「バカ野郎!今すぐだ!」
    (※注 アスカ)


    「すぐって、俺にも仕事がだな」


    「アタシに、同じこと二度言わせる気か?」
    (※注 アスカ)


    「わ、分かりました!
    すぐに手配します!」


    「最初から、そう言えばいいんだよ。
    ったく、グズが」
    (※注 アスカ)


    悪態を付く秀麗な顔を間近で見る加持は、せめて言葉使いだけでも何とかならないものかと思う。
    日本語を覚える過程で任侠映画を観たことが影響したようだが。
    自分以外の人前では普通なので、意識して使い分けているのは流石といえば流石。恐らくという
    か確実に、シンジの前では一生こんな言葉など使わないだろう。
    そもそも、アスカと出会った当初は彼女も普通だった。
    いや、普通に見えた。
    朗らかで自信に満ち、聡明な能力と秀麗な外見を併せ持つ彼女は、まさにドイツ支部のアイドル
    だったのだ。
    その少女から想いを寄せられ慕われるようになり、自分がもっと若ければと思っていたころ、彼女
    は本性を徐々に現し始めた。
    心の病を患った母から拒絶され、その死を間近に見たトラウマを抱えたアスカは、自分が強くなる
    しかないと自己啓発に励み、結果として鋼のような心を手に入れた。それが天才的な頭脳と結び
    ついたのは、加持にとって、そしてドイツ支部にとっても不幸であったろう。
    加持の躓きは、些細なことだった。
    当時付き合っていた同僚女性とは別の女性と浮気したことをアスカに知られ、それをネタにちょっ
    とした機密情報を漏らしてしまった。
    すると、今度は機密漏洩をネタにしてより高度な情報を要求。
    その時点で、自分も処分される覚悟で拒否しておけばよかったのだが、支部に残らなければなら
    ない事情もあったので、これが最後と言ってアスカの要求を呑んでしまった。
    が、そんな約束が守られる筈もなく、アスカは次々と加持に難題を吹っかけてくる。その過程で他
    の職員も弱みを掴まれて絡め取られていき、ドイツ支部はアスカに裏から支配されるような権力
    構造となっていったのだった。
    加持は、ネルフの上位組織ゼーレと日本国内務省のエージェントも兼ねた三重スパイとなり、危険
    な綱渡りを余儀なくされた。
    自分から進んで三重スパイなどやるはずはない。無謀だということは、加持も充分に承知している。
    全てはアスカに嵌められた上のこと。それでも、なってしまったからにはやるしかない。止まれば、
    自分の命もそこで終わる。泳ぎ続けなければ死んでしまうマグロのようなものだ。


    (全ては、あれのせいか)


    アスカの後ろ。ベッド脇に置いてあるジュラルミンのケースが、加持には恨めしい。
    その中にある物を本部へ持ち出すのが、加持が本部の司令、碇ゲンドウから託された役目。その
    役目がなければ、アスカに付け入る隙を与えなかったものを。


    (進む道、間違えたかな、俺)


    悔やんでも悔やみきれない。
    加持は、時間を戻せるなら戻したいと、本気で思うのだった。







    不意に襲来した、海棲型の使徒。そして、海での戦闘。
    それは、偶然にも弐号機を積んでいた輸送船で一緒だったアスカとシンジによる同乗シンクロ。しか
    も、シンクロ率の新記録樹立というおまけまで付いて終了した。
    偶然を演出したのはアスカに命令された加持だが、それは表に出ることなく、派手な戦闘が話題に
    なっただけ。艦隊の損害も、大したものではなかったし。

    日本に着いたアスカは、本部で着任の挨拶の後、あちこちへの挨拶まわりと女子寮での新生活の
    準備で忙しく、シンジとろくに逢うことも出来ない。たまに会っても、シンジはアスカのような女の子が
    苦手らしく、会話が進まない。ミサトから聞いた話だと金髪好みだというから、すぐにでも親しくなれる
    と思っていたのだが。
    ネルフの職員食堂で加持と同じテーブルに座るアスカは、食後のジュースを飲みながら愚痴ってみる。


    「いまいち進展しないのよね。
    シンジってば、なんか警戒してるし」


    机にひじを突き、両の掌に顎をちょこんと乗せて空を見るアスカは、何も知らなければ本当に可愛い。
    何も知らなければ・・・の話。
    不幸中の幸いか、言葉使いは矯正されている。
    シンジの前で、何かの弾みで素が出てしまうと思ったら、急に怖くなったそうだ。その調子で性格も矯
    正されたら、加持は非常に嬉しい。神を身近に感じることだろう。


    「ま、まあ、アスカの魅力を持ってすれば、その内に」


    「アタシは、気が短いの。
    そうだ!」


    突然に目を輝かせ、こちらを見るアスカが加持には怖い。
    こんな時のアスカは、大概、難題を持ちかけてくるのだ。


    「一緒に住めば、一気に進展確実よね」


    確かに言う通りだが、彼らの歳で同居など、無茶が過ぎる。
    シンジはミサトのマンションに居候しているものの、部屋の余分はないと聞いたこともあるし。いくらな
    んでも、今回ばかりは・・・


    「というわけで、何とかしてよ。
    出来るでしょ?凄腕の諜報員さんなら」


    「それとこれとは、話が別だし」


    「出来るわよね?」


    「俺には、あまり時間が」


    「やれって言ってんの」


    「・・・はい」


    どうすりゃいいんだよと加持が頭を抱えたくなったその時、神の救いか、緊急警戒警報が使徒の来襲
    を告げたのだった。
    それは、まさに救いだった。

    シンジにいいところを見せるのだと言って、士気倍増状態で戦闘に挑んだアスカではあったが、分離
    増殖という特殊な能力を持つ使徒にあっさり敗北。シンジと共に、副司令の冬月から説教まで喰らう
    始末。敗北そのものより、シンジの前で醜態を晒したことにアスカはショックを受け、加持に当たること
    もなく落ち込んでいた。
    加持は、その隙に分離増殖使徒への対処法を考案。ミサトへ提示して、彼女はそれを採用。ミサトは
    ゲンドウの了承を得て、即実行に移った。
    ダンスを通じてパイロット同士の呼吸を合わせ、使徒の急所であるコアへの同時攻撃の精度を上げる。
    作戦そのものは単純かつ明快で、誰もが考えそうなことではあったのだが、加持はアスカの要求を満
    たすべく頭を悩ませていたことが作戦の発案に繋がったようだ。
    落ち込んでいたアスカは、この作戦を聞くと、一も二もなく合意。すぐさま荷物を纏め、葛城宅へ押し掛
    けてしまった。可能な限り寝食も共にし、生活リズムまでも合わせると望ましいとの補足文がアスカを
    狂喜させたのは、言うまでもない。
    部屋は、シンジが遠慮して自分の部屋を明け渡し、彼は物置として使われていた小部屋に移っている。
    シンジの優しさにアスカが惚れ直したのは、これまた当然だろう。
    訓練が始まると、予想に反してアスカはミスを繰り返し、なかなかシンジと動きを合わせられない。
    が、それはアスカの作戦。意外に運動神経のいいシンジと本気でやるとすぐに訓練が終わりそうだっ
    たので、わざとミスしてギリギリまで訓練期間を引き延ばしたのだ。
    その思惑は見事あたり、一つ屋根の下で約一週間を過ごす内にシンジの警戒感は徐々に薄くなって
    いき、アスカとフランクな会話をするようになって親密度も増していった。そして二人きりの夜となった
    訓練最終日には、ついにキス・・・
    翌日、無事成功の内に作戦を終えたアスカは、珍しく加持へ礼を言ったほどである。
    これで、ようやく自分も楽になる。奴隷のような状態からも解放される。
    加持がそう考えたのは、無理からぬこと。アスカは目的を達したのだから。
    ところが・・・


    「命を救ってくれた勇者と、可憐なお姫様。その上、こんな綺麗な星空。
    絶好のシチュエーションよね。
    アタシの言いたいこと、分かるでしょ?」


    「ま、まあ・・な」


    アスカから、ちょっと話があると宿の外に呼び出された加持は、予想通りの展開に顔を引きつらせた。
    満天に煌めく星空が、綺麗すぎて哀しい。
    浅間山の火口に潜んでいた使徒の幼生を殲滅したその日。麓にある温泉宿に、アスカと加持はいた。
    もちろん、二人だけで宿に泊まるはずがない。シンジ、ミサト、その他ネルフのスタッフ達も一緒。
    作戦成功を祝い、ついでに温泉でもと、ミサトが一軒の宿を借り切ったのだ。
    宴会はすでに終わり、したたかに酔って寝る者、温泉を愉しむ者、まだ飲んでいる者。それぞれに今
    この時を愉しんでいる。
    アスカは今日、シンジに救われた。
    弐号機にしか使えない耐核耐熱装備を装着して煮えたぎるマグマにダイブし、使徒の幼生を捕獲し
    ようとしたのだが、捕獲直前に使徒が羽化。ほぼ瞬時に成長した使徒は格闘の末に殲滅したものの、
    装備の冷却パイプとワイヤーを破損。固定の推進器を持たない弐号機は、火口の奥深くへと沈んで
    いく。
    アスカも、これで終わりかと短い人生を振り返ろうとしたその時、機体はガクンと揺れて止まった。
    そして、上へ向かって引き上げられていく。
    反射で見たモニターには初号機がアップで映り、その片隅には、シンジがいた。
    彼は耐熱装備のない素の初号機で火口に飛び込み、弐号機の腕を掴んだのだ。
    その時、母の死以降、流れたことのない涙がLCLに溶けて消えていった。
    シンジへの気持ちは浮ついたものではなく愛だと、アスカが確信した瞬間である。


    「分かってるなら、ミサト連れて消えてちょうだい。
    できれば、他のみんなも連れてって」


    髪の毛をアップに纏め浴衣を着たアスカには、歳に似合わぬ色艶が見て取れる。同居が始まって以来、
    急速に関係を深めている彼らが、すでにいくところまでいっていても不思議はない。ミサトによると、限り
    なく黒に近いとしか言えないそうだ。ミサトもどうしたわけか、彼らの関係については口が重い。
    状況から考えれば、関係は確定的。そんな二人がすることといえば一つしかない。
    それは、普通の倫理観を持つ加持に容認できることではない。万が一の場合、自分に責任が押しつけ
    られることも考えられるし。


    「し、しかしだな、君らはまだ」


    「医療部から薬貰ってるから、そっちの心配はないわ。
    要は、妊娠しなきゃいいんでしょうが」


    「いや、倫理的に」


    「消えて。今すぐ」


    「・・・・」


    アスカは、有無を言わさぬ調子で自分を見上げる。
    彼女が折れることはないと理解した加持は、諦めて同意し、どうミサトを誘うか考えながらその場を
    後にした。

    自分が解放されるのは、いつになるだろうか。
    ひょっとして一生・・・
    そんな馬鹿なと言い切れる自信が、加持にはない。あのアスカが、一度手にした力を、そう簡単に
    手放すとは考えにくい。今のアスカは、ドイツ支部さえ顎で使えるのだから。
    使徒戦は遠くない将来に終わり、アスカとシンジは、間違いなく結婚するだろう。
    自分とミサトは、結婚できるのか。
    ミサトは使徒戦が終わったら考えると言ってくれているが、どうも不安だ。アスカが余計なことをして
    くれなければいいが。


    「心の暗黒面、ダークサイドか。
    確かダースベーダーは、死ぬ間際で正気に戻ったんだよな。
    ・・・ま、映画だからな、あれは。
    ははははははははは・・」


    乾いた笑いは、すぐに消え、加持は嫌なことを考えまいとするように懐から携帯を取りだし、ミサトへ
    連絡を取るのだった。








    シンジ編へ

    でらさんからアスカの暗黒面(爆)のお話をいただきました。

    こんなアスカはあまり見たことありませんよね。というか私は知らない!

    おもしろいお話でありました(笑)ぜひ、でらさんに感想メールをお願いします。

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