午睡

作者:でらさん












「ねえ、シンジ」


「そんなに続けて無理だって。もう少し、休ませてよ」


「バカ!そっちじゃないわよ!」


「じゃあ、なんだよ」


「運動したら、喉乾いたわ。
冷蔵庫から、何か持ってきてよ」


「自分で行こうとは思わないの?」


「うん」


「・・・何で?」


「男として、当然よ。
アタシの体を好きにする代償と思えば、安いもんじゃない。風俗に行けば、かなりのお金、取られるわよ。
ま、風俗にアタシほどの女がいるとは思えないけど」


「そういう問題?僕達、婚約してるんだけど」


「婚約したからって、無条件に体を許すと思ってんの?
いやね、男って。一度許したら、際限なくつけ上がるんだから」


「アスカ」


「何よ」


「僕達、何で今ベッドの上で裸なんだろうね。
今日は、新居の家具探す予定だったろ?」


「アンタが玄関でアタシを押し倒して、そのまま・・」


「違う。
僕が玄関のドアを開けたら、君がバスタオル一枚で待ちかまえてて、いきなり抱きついてきて僕のズボンを」


「やめやめ!
仕方ないじゃない!お互い何だかんだ忙しくて、一週間ぶりに会ったんだから!」


「じゃあ・・
一緒にベッドを出て、一緒に飲み物を探さない?」


「・・・うん」







「あったま痛た〜・・
って、ここどこよ。おまけに、わたし裸だし」


「よう。目が覚めたか、洞木。
とりあえず、コーヒーでも飲めよ」


「あら、気が利くわね、相田。ありがと・・・ん?」


「どうした?インスタントは、口に合わないか?」


「きゃ〜〜〜!!
あんた、わたしを犯したわね!この変態!初めてだったのに!」



「ま、待て、洞木!落ち着け、殴るな!
確かに俺は、やることやったが」


「やっぱり犯したんじゃない!訴えてやる!」


「だから、落ち着けって!これを観ろ!」


「ビデオで撮影までしてたのね。それをネタに、わたしの口を封じようとするなんて・・
どこまで卑劣な奴なの!」


「あのな、誘ったのは、お前の方なんだぞ。
ほれ、証拠」


『女のわたしにここまでさせて、逃げるつもり?』


『洞木。お前、相当酔ってるぞ。朝になって、”覚えてませんとか、犯された”なんて、言わないだろうな?』


『わたしを誰だと思ってるの?真面目一筋二十年の、洞木ヒカリよ!』


『やっぱ、酔ってんな。
でもビデオで証拠は残してあるし、据え膳食わぬは男の恥と言うし・・
この機会を逃したら、いつ童貞とおさらばできるか分からん。
相田ケンスケ!行きます!』


「・・・・」


「観ての通りだ。何か、言うことはあるか?」


「・・・酒癖悪かったのね、わたしって」


「酒癖云々の前に、昨日のお前は飲み過ぎだ。
とにかく、それ飲んだら風呂でも入れよ。
家には俺達以外誰もいないから、気を遣う必要もないぞ」


「相田」


「何だ?」


「相手があんたで良かったわ。不幸中の幸いってやつね」


「喜んでいいのか怒るべきなのか、よく分からん」






「だらしないわね。二回ぐらいで根を上げるなんて・・
こんなんじゃ、子供ができないわ。二桁楽勝のシンジ君を見習って欲しいわよ」


「ミ、ミサト。
腰を振りながら愚痴をこぼすのは、やめてくれんか」


「やめて欲しかったら、きっちり仕事をこなしなさい。子作り週間は、始まったばかりなのよ」


「相手がアスカなら、二桁くらい軽いんだが・・」


「私の体じゃ、不満だっての!?加持リョウジ君!?」


「だから、それはやめろって!
し、搾り取られる。血が出そうだ・・」







「ふっ、相変わらず見事な寝顔だ、レイ」


「碇。貴様、またレイの部屋に隠しカメラを仕掛けたのか?
今度ばれたら、本当に命が危ないぞ」


「冬月。お前には、この寝顔の価値が分からんのか。
これは、人類の宝だ!」


「うむ・・
確かに、これは」


「今のレイは、大輪の花が最高に美しさを誇る時期なのだ。まさに美術品。
それを鑑賞するのが罪だと言うのか!」


「お前の考えに賛同はするが、隠しカメラは拙い。
命が惜しかったら、気づかれない内に撤去するんだ。いいな?」


「・・・考えておこう」







「これよ、これ。セックスの後は、これが美味しいのよね」


「それ、スパークリングワインだろ?」


「そうよ。だから、どうしたの?」


「出かける気は、無いんだね」


「何を今更・・
家具探しなんて、いつでもできるわ。最悪、同居が始まってからでもいいし。
ほら、アンタも飲みなさい」


「はいはい」


「また、一緒に住めるのね・・
もう五年だっけ?別居になってから」


「そうだね。中学出てすぐだったから」


「アタシ達がこんな関係になった時期だから、この世の終わりみたいな感じがしたわ。
ミサトにも食って掛かったっけ」


「今考えると、僕達も甘かったよ。状況に慣れすぎて、特権を当たり前のように享受してた」


「ヒカリに言わせると、別居してからもアタシ達の生活は変わってないそうだけど」


「まあ、ほとんど毎日、互いの部屋を行き来してたからね」


「無条件にピルも支給されたしさ。
ヒカリが鈴原と別れたのも、アタシ達に一因があったのよ。シンジは知ってた?」


「それは、初めて聞く話だね。どういうこと?」


「アタシ達の付き合いに刺激された鈴原が、ある日、ヒカリに強引に迫ったの。
でもその頃のヒカリは、まだそこまでの付き合いを望んでなかった。ただ一緒にいられればいいというような、
初な想いだったらしいわ。ヒカリは、思いっきり鈴原を突き飛ばしたんですって」


「洞木さんは、トウジに裏切られたと思ったわけか」


「ちょっと待って。それほど単純じゃないの。
鈴原を突き飛ばしたものの、ヒカリの想いは全然変わってなくて・・
それどころか、恋人として付き合うなら鈴原の気持ちに応えなくちゃいけないって、考えを変えたのよ」


「それで?」


「世の中って皮肉でさ。
一度拒否された鈴原は、ヒカリに遠慮して手を繋ぐのも躊躇するようになっちゃったの。
ヒカリはその気になったのに、今度は鈴原が萎縮しちゃったのよ。それがきっかけで関係がギクシャクし出して、
結局、付き合い自体を止めることになったってわけ」


「知らなかったな。そんな事情があったなんて。
トウジは、何も言わなかったから」


「見かけに依らず、神経質みたいね。鈴原って。
アンタの方が、よっぽど野獣だわ。アンタがアタシを襲ったのは、付き合い始めてすぐだったもんね」


「野獣とか襲ったとか、人聞きの悪いこと言うなよ。
完全に合意の上だろ?」


「まあ、拒否はしなかったわ」


「て言うか、アスカが拒否したことなんて、あった?」


「余計なことは、忘れなさい」








「風呂に入れって、ああいう意味だったのね。
やっぱり、あんたは軽蔑すべき対象だわ」


「悪かったよ。本当に、そんなつもりじゃなかったんだ。ただ、その・・我慢できなくてよ。
大体、全然抵抗しなかったのは、どういうわけだよ。
今だって、この通りの状況だし」


「酔った勢いとはいえ、あんたは、私の初めての男だしさ。こうなったら、一回も十回も百回も同じよ。
でも、こんな事は今回限りよ。わたしがあんたの女になったなんて、思わないで」


「お前が初めてだったとは、知らなかったよ。
トウジと別れてからも、何人か付き合ってたろ?」


「付き合ってはいたけど、手繋いだくらいよ。抱かれてもいいなんて相手は、いなかったわ」


「堅いんだな、洞木は」


「わたしが普通で、他の女が軽すぎるのよ。
でも真っ昼間からこんな事してるわたしも、軽い女の仲間入りね」


「じゃあ、惣流はどうなんだ?
付き合い始めてすぐだったろ?あいつら」


「アスカ達の場合、普通に考えられないわ。いろんな意味で、常識が通じない人達だもの。
それに、アスカは碇君だけしか見てない。軽いとは、とても言えないわね。
相田だって、それを知ってたからアスカを諦めたんでしょ?」


「シンジと惣流は、初めて会った時から互いを意識してた。あの間に入り込むなんて、まず無理さ。
それに、俺は夢は追わない主義でね。手の届く範囲で充分。
・・と言ったところで、今まで彼女の一人もいないけどな」


「ま、希望を持ち続ければ、その内いい出会いがあるわよ」


「なら、それまで洞木が相手してくれよ。いいだろ?」


「ん・・・また?何回するのよ。調子に乗らな・あっ!
お風呂でも散々したのに・・あっ」


「親父、出張で今週一杯帰ってこないんだ。
暫く泊まっていけよ」


「ちょ、ちょっと、そんな」







「も、もう駄目だ。一滴も出んぞ」


「お疲れ様。
ビールでも飲んで、一休みして。はい、どうぞ」


「おお、気が利くじゃないか、ミサト。
・・・・・・美味い!今日のビールは、いつになく美味いな!」


「でしょ?リツコ特製の強精剤入りだもん♪」


「・・・なんだと?」


「即効性だから、もう効いてきてるんじゃない?」


「う、嘘だろ。もう、何も出ないはずだぞ。だが、この体の高ぶりは・・
くそお!我慢できん!」


「ふふ、完璧に効いたわね。
絶対、妊娠するわよ!」







「碇、いつまで眺めておる。
仕事も溜まっているのだぞ。これでは、休日出勤した意味がない」


「あと五分だけ待て。
五分経ったら、仕事に戻る」


「五分もいらないわ」


「レ、レイ!お前が、何故ここに!?
ここに映っているのは、一体」


「保安部は、私の指揮下にあります。裏工作など簡単です」


「くっ・・・」


「カメラを仕込んで乙女の寝顔を覗くなんて、最低ね。万死に値するわ」


「レイ君、こんな男でもネルフの頭だ。命だけは助けてもらえまいか」


「・・・副司令が、そう仰るのなら」


「そ、そうか、レイ!やはりお前は、ユイに似て優しい子だ!」


「死ななければいいのね」


「え?」


「全治一ヶ月くらいでいいですか?副司令」


「あ、ああ、それくらいなら」


「そ、そんな・・
レ、レイ、女の子がそんな薄気味悪い笑いをしたらいかんぞ。と言うか、シャレにならん!
誰か助け・・・
どわ〜〜〜!!」






「メール、誰から?」


「ヒカリ。
昨日の夜、相田なんかと飲んで一騒ぎしたらしいわね。
二日酔いで、気分最悪だって」


「洞木さんが二日酔いね・・
昔の彼女からは、想像もできないな」


「いつまでも昔のままなわけないじゃない。
このメールだって、男の部屋からかもしれないわ。酔って男の部屋に連れ込まれて、そのまま・・
なんて話、よく聞くし」


「まさか。
洞木さんに限って、それはないよ」


「じゃあ、賭ける?
ヒカリが男の部屋にいたら、アタシの勝ち。ホテルとかでもアタシの勝ちよ。一人なら、アンタの勝ち。
負けた方は、勝った方の言うことを何でも聞くの。どう?」


「いいのかい?
もう、昼過ぎだからね。僕の勝つ確立の方が高いよ」


「さ〜て、それは、どうかしらね。
電話してみれば分かるわ。ヒカリの番号はと・・・よし!
・・・・・・・・出ないわね」


「無視されてんじゃないの?」


「いい度胸ね、ヒカリ。ネルフの科学を舐めんじゃないわよ。強制通話機能ON!」


「強制通話機能?なに?それ」


「相手の意志に拘わらず、携帯を通話状態にする機能よ。こっちのコントロール下に入って、電源を切ること
もできないの。テレビ電話機能も当然ONになるから、携帯の置き場所によっては部屋の状態も分かるわ。
元々、アンタの浮気防止のために組み込んでもらったんだけど、こんな時に役立つとは思わなかったわね」


「ぼ、僕の浮気防止ね。君らしいよ。
でもそれって、違法じゃない?」


「ネルフに合法も違法もないでしょ?」


「ま、まあ・・」


「そんな事より、ほら、聞こえるでしょ?男と女の、妖しい声。
携帯の位置も丁度いいみたいね。ベッドの枕元だわ」


「・・・洞木さん。
僕は君に失望したよ」


「アンタね・・
ヒカリも二十越えた女なんだから、男くらいいるわよ。
賭は、アタシの勝ちね。覚悟しなさい、シンジ」


「お手柔らかに頼むよ・・・
って、あれ?この部屋、どっかで見た事あるな」


「そう言えば、この独特の癖毛にも見覚えあるわ」


「・・・ケンスケか?」


「相田とヒカリが?」


「・・・・」


「・・・・」


「「ホントかよ!!」」







「ん?」


「どう・・したの?」


「いや、今、誰かの声が聞こえたような気が・・
視線も感じるんだよな」


「誰もいるわけないじゃない。
ほら、続けて。だいぶ気持ちよくなってきたわ」


「そ、そうか。
じゃあ、遠慮無くいくぞ」





おわり


でらさんからえっちっちぃ話をいただきました(笑)

それにしてもケンスケとヒカリ‥‥意外なというか、ケンスケには好運でしたね。
まぁ、男と女の間なんてわからないものですが。

他の人達も良かったです。とくに性犯罪者をシメるレイは良かったですね(笑

もちろん、アスカとシンジの濃厚ぶりも楽しめましたね(大笑

読了後にはぜひでらさんへの感想メールをお願いします。

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