前の薄暗いイメージとは違い、明るく開放的になった司令室でゲンドウと冬月は机に座り書類整理をしている。ふと冬月が話しかけてきた。
「碇」
「なんだ、冬月」
「このFFなんだが、私の出番が少ないと思わないかね?」
「シナリオ通りです。問題ない。なくてもいける気がする」
「いや、大いに問題だろう。もう少し出番を増やしてもらうようにできないかね?私に旨みがないからな。これでは枯れ専の私のファンが泣くよ」
「ファンがいるかどうか聊か疑問だが・・・わかりました。先生には特権を用意しましょう」
「ほう、なにかね?」
冬月が身を乗り出す。ゲンドウは書類の整理をしながら提案をもちかけた。
「将来二人の間に子供ができたら名付け親になってもらう。というのは如何ですか?」
「ふむ、なかなか魅力的だがまだ足りないな」
「コウゾウおじいちゃんと呼ばせるようにします」
「ふむ、悪くない提案だ。それで手を打とう」
「わかりました。それでは早速連絡します」
ゲンドウは受話器を手に取るとどこかへ電話をかけ始める。
(碇の奴め、なかなかいいところがあるじゃないか。すぐにシンジ君とアスカ君に連絡して約束を取り付けようとするとはな。しかしあの若い二人の子供の名付け親か、うん、悪くない)
「そうだ・・・ああ・・・すまない。冬月にも花を持たせようとおもってな・・・そうか・・・わかった」
(ほう、あの二人が納得したのか。アスカ君あたりが強硬に反対しそうな予感があったのに・・・なかなかやるじゃないか)
「では、冬月に名前を決めてもらうとしよう」

「リツコ」

「え?そっち?」



レイ、名探偵キドリ




レイは読書が好きだ。ひとりでいるとき本を読んでいると寂しさが紛らわせるとこができる。いや、前のレイはそうだった。
今は自分の世界が本を読むことによって広がっていくことを肌で感じることが面白いからだ。以前読んでいた小難しい専門書は姿を消して今では児童文学や絵本などを読む機会が多い。それは保母をやっているマヤの友人からいらなくなった本などをいくつかもらったことから始まる。
読みやすくわかりやすいそれらの本はレイに影響を与えていった。どうやら最近はブルーナのミッフィーがお気に入りらしい。家で時間があるときはいつもそれを読んでいるからだ。その様子をシンジ、アスカ、ミサトは温かく見守っている。
「ホント、あの子はミッフィーが好きなのね」
ミサトがビールを飲みながら呟く。シンジとアスカもそれに頷いた。
「今更絵本を読むっていうのはどうかと思ったけど、読み返してみると結構大事なことって書いてあるものなのね」
「そりゃそうだよ。子供が読むものだから道徳の部分に重点を置くものだよ。綾波、絵本は面白い?」
「ええ、とても。それに、カワイイ」
ウンウンと頷く3人。
「そうね~ミッフィーは絵が可愛いから女の子にはとっつきやすいのよね~私も子供の頃はよく読んでいたわ」
「ええ!?ミサトアンタも絵本読んだことあるの!?ビール百選の間違いじゃないの!?」
「あんたねえ・・・殴るわよ?」
「まあまあ、いいじゃないですか。綾波が可愛いって言うんですから」
シンジが笑いながら場を収めているとレイがふと顔を向けた。
「ええ、ミッフィーはとてもかわいいウサギさんだわ。口が×になっているところが特に。それが4つにパカッって開いて、ギリギリギリバッツーンって相手を捕食していると思うと萌えるわ」
「綾波、それ寄生獣だから」
「アンタのせいでミッフィーが見られなくなったじゃない!」



学校での休み時間、レイがいつものように外を見ながらボーッとしていると声をかけてくる男子がいた。
「綾波、すこしいいか?」
「相田君?どうしたの?」
ケンスケだった。ケンスケは手に持った袋をレイの机の上に置く。するとドサッという重たい音が鳴った。
「なに?これ」
「碇から話は聞いたよ。綾波は本読むのが好きだろ?」
「ええ」
「別に役に立つものじゃないけど難しいのばかりじゃ気が滅入っちまうだろうから、息抜きになればと思って持ってきたんだが良かったらどうだ?」
ケンスケはそういうと袋の中から本を一冊出してレイに見せる。表紙には帽子を被り煙草をふかし虫眼鏡をを持った男性の絵が描かれてあった。
「私、あまり漫画は読まないわ」
「漫画じゃなくて小説だよ。探偵物の推理小説さ。漫画だと綾波の趣味には合わないだろうし、こんなのしか持ってないけど推理小説を何冊か持ってきたよ。探偵推理小説の金字塔といえばやっぱシャーロックホームズだよ。男女関係なく世界中で結構人気のある名作だぜ」
「相田君、こういう本読むの?」
「ああ、一時期こういうのにハマッた時期があってさ。想像もつかないだろうけど」
「ありがとう」
ケンスケは思わずレイの顔をマジマジと見た。
「どうしたの?」
「どうしたのって・・・悪い。なんかさ、綾波は無表情な時しか見たことないから驚いてさ」
「?どうして?」
「お前、今笑ったんだよ」
「そう、こういうときも私、笑えるのね」
「碇のおかげだな」
ケンスケにも自然と笑顔がこぼれた。

それから教室ではレイとケンスケがたまに談笑している姿が見られるようになった。それはケンスケの貸した推理小説が思いのほかレイにヒットしたからだ。
「バスカービル家の犬、とても面白かったわ」
「お!綾波もイケる口なのか。俺もその話好きだぜ。」
「赤毛クラブの話も好き」
「俺はどちらかというとまだらの紐のほうが好きだな」
「それも、いいわ」
小説の話で盛り上がる二人、傍から見ればいい雰囲気なのだが、本人たちにそのつもりはない。彼らの間には碇シンジという人間がいるから成り立つ交友関係であることをケンスケが理解しているからだ。
レイは全校生徒の中でもファンがいるほど魅力的な人物である。口数が少なく神秘的なイメージが先行するがゆえにどうしても一線引いてしまう。彼女と気兼ねなく対等に話せる異性はケンスケ、トウジ、シンジの3人しかいない。そのことを僻む人物がいることは確かであるが、そのことをケンスケは自慢するようなことでもないと思っている。
今でこそケンスケは女子の写真を隠し撮りするようなことはしてはいないが、中学時代にそういうことをしてお金を稼いでいたことを知る人物は学校内でも少なくはない。
その行為がケンスケに思わぬ形で自身の身に降りかかってこようとは誰も予想すらしていなかった・・・


その日、レイは日直でいつもより早めに学校についた。職員室から鍵を取り教室へ向かうとすでにひとりの女子生徒がドアの前で待っていた。
「おはよう!綾波さん!」
「おはよう」
彼女は陸上部所属の片山ミナミ。竹を割ったような性格と明るさで人気のある女子生徒だ。
「随分、早いのね」
普段はもっと遅い時間に登校してくるはずの彼女、レイは何気なく聞くと頭を掻いて照れ笑いを浮かべた。
「いや~授業で使った水着を昨日置き忘れちゃったみたいでさ~ほら、午後に使うでしょ?それまで部室で干しておこうか思って」
「そう、大変ね」
レイはドアのカギを開けると日直の仕事に取り掛かる。ミナミは自分の席に着くと早速探し始めた。
そして朝の日直の仕事を終えて教室に戻るとほとんどの生徒が登校していた。普段は仲のいいクラスメイトとしゃべっているのだが、その日は教室が随分と慌ただしかった。
「ねえ、本当にないの?ロッカーの中は?」
「ない!ないのよどこにも!」
大騒ぎをしているのは片山ミナミだ。彼女の顔は心なしか青ざめている。
「どうしたの?」
レイは近くにいた女子生徒に話しかける。
「片山さんの水着をいれた袋がなくなったんだって!きっと男子が盗ったのよ!あ~~~気持ち悪い!」
体を震わせながらその生徒は言った。レイはその光景を呆然と見つめていた。
そして魔女裁判らしからぬ犯人捜しが始まったのだ。

片山ミナミは昨日、部活を終えた後に教室に戻っている。そのとき確かに袋は机の横に下げたままおいたという。それを取ろうとしたときに友人に呼ばれてその場を離れ、そのまま帰宅している。気が付いたのは自宅に帰った後だった。教室に戻ったのは夕方の5時半過ぎ。そこから数分も経たないうちに教室を出ている。犯人はそれより後に教室に入った人物だ。
該当者は4人いた。

サッカー部所属 宮沢リュウ
サッカー部所属 前田コウヘイ
生徒会所属 菊池ヨウスケ
写真部所属 相田ケンスケ

それぞれ4人はこう証言する。

宮沢リュウの場合
『確かに俺は5時半過ぎに教室に行ったよ。前田の奴が宿題の課題を忘れたって言うからな。それを取ったらすぐに前田と一緒に帰ったよ』

前田コウヘイの場合
『ああ、宿題のプリントあっただろ?あれを机の中に忘れたの思い出して教室に入ったよ。でも、すぐに見つかって一緒に帰ったさ。教室を出た時間?うーん・・・ちゃんと覚えちゃいないけど、5時40分頃じゃないかな?』

菊池ヨウスケの場合
『教室に戻ったのは6時半前くらいかな?そのときには彼女が言う袋というのはなかったと思うよ?何故わかるかって?そりゃ彼女は僕の前の席だからね。・・・そういえば6時過ぎ頃に相田君が教室から出てきた所を見たな。大きなバッグを抱えてね』

相田ケンスケの場合
『部活が終わって荷物を取りに6時頃教室に寄ってすぐに帰ったよ。そのときに彼女のバッグがあったかどうかなんて知らないよ。大きなバッグの中身はなんだって?そりゃ・・・カメラとかそういう機材一式だよ』


4人の証言。疑惑は当然の如くケンスケに向けられた。
「相田!あんた片山さんの水着盗ったでしょ!何に使う気なのよ!汚らわしいわね!」
「はあ!?俺がそんなことするかよ!」
「そういえば相田は中学の時に女の子の隠し撮りとかしてたじゃない。しかもその写真を売りさばいてたらしいじゃない!今度は写真に水着でもつけて高額で売りつけるつもりなの!?」
「バカなこと言うな!そりゃ確かに中学のころは女子の写真を隠し撮りとかしてたさ。だが、もうそんなことはしてない!」
「どうだが」
「バックかあったかどうか知らないなんて・・・白々しい」
「なに言ってんだよ!そこまでいちいち覚えているわけないだろ!?」
女子からだけでなく男子からも軽蔑の目を向けられるケンスケ。レイはその様子を他人事のように見ていた。
4人の証言。そしてレイが知る情報。それらのことがレイの中ですさまじい勢いで交差されていく。
「綾波さん、もうあの男に近づいちゃダメよ。何されるかわかったものじゃない!」
それは純粋にレイのことを思っての言葉だろう。
だが、レイは首を振ると凛とした声で呟いた。その声は騒音でざわめく教室内にまるで水の上に広がる波紋のように全員の耳に届いた。
「相田君は、犯人じゃないわ」
誰もが耳を疑った。
「あの男が犯人じゃないって!?綾波さん、碇くんの友人だからって庇うこと・・・」
「いいえ、庇ってなんかないわ。事実を言っただけ」
レイが嘘を言う人物でないことはクラスの全員が気付いている。だからこそ彼女の言葉は衝撃的だった。只一人、レイのことをよく知り理不尽な犯人扱いを受けたケンスケを覗いて。
「綾波・・・誰だ?本当は誰なんだ!?早く言ってくれ!」
理不尽な怒りに燃えるケンスケ。レイは何も言わずに窓へ向かって歩き出す。彼女の行く手を塞ぐ人の壁はモーゼが渡る海の如く割れた。そして窓の前に立つとカーテンを開ける。朝日の逆光が差し込みレイの影ができる。その影の中でレイの赤い目が爛々と煌めいていた。レイはゆっくりと口を開いた。

「推理ショーへようこそ」

「その前置きはいいから!」


「今回の殺人事件は・・・・」
「いやいや、人死んでないから!」
「今回の事件は相田君がやったように思わせるための犯行、彼は無実よ」
レイの思いがけない言葉にクラスメイト達は憤慨した。ケンスケは呆然とレイを見ている。
「どうしてそんなことが言えるんだ!」
「相田君は過去に女子の隠し撮りをしていたから、それがエスカレートしてこんなことをした。あるいはそうやっても不思議じゃない。みんなはそう考えている。でも、それは間違い。彼はわざわざ隠し撮りとか、そんなことする必要ないもの」
何故?という視線がレイに集まる。
「彼、今は写真屋でアシスタントのバイトをしているの。だから、わざわざ危険を冒してまでも人物画を撮る必要性がないもの。今ならプロの機材で好きなだけ撮れるわ。私とアスカ、お兄ちゃんとヒカリさん、鈴原君をモデルにしてやっているわ」
「そうだとしても水着を盗まなかった証拠にはならないわ!」
ケンスケとレイ以外の全員が頷く。
「いいえ、彼はやっていないわ。証言がそう言っているもの」
「どこがよ!」
「彼は彼女のバックについて知らないと言ったわ」
「ウソかもしれないじゃない!」
「でもそのあと、こう言ったわ。覚えていないって」
「それがなんだよ!」
「もし相田君が犯人なら、彼女のバックの所在について具体的に答えるはず。もうなかったとか、そのときはあったとか・・・そう言って心理的に自分を盗んだと思われないように嘘をつくはず。でも彼はバックがあったかどうかは覚えていないと答えた。それは本当に知らないからこそ言える言葉なの」
「じゃあ!菊池の言っていたバックはどう説明するんだよ!その中に入れて持ち帰ってなにかしているかもしれないじゃないか!」
レイは首を振る。
「相田君にそんな性癖はないわ。せいぜい写真を見て「カワイイよ。カワイイよハアハア」ってやるだけよ」
「ねえ、なんか爆弾放り投げてない?さっきより視線が痛いのですが!?」

「水着の股のところに白いナニかがかけられていたら真っ先に疑うけど」
「もう殺せよ!いっそ殺せよ!」

「そのバックにはカメラの機材が入っていると言っていたわ。相田君はカメラの扱いはかなり丁寧に扱っているもの。カメラを入れるバックに水気のあるものなんか入れるはずがないわ。それに、普段使っているリュックは容量が小さいから入れようもない」
レイが淡々と語る推理に誰もが耳を傾ける。ケンスケは自分に向けられた疑惑の目が少しずつではあるが薄れていくのを肌で感じた。
「じゃ、じゃあ・・・誰が?」
「私は相田君がやっていないことを確信しているから、そう言っただけ。でも、目星はついているわ」
誰もがゴクリと喉を鳴らす。レイは声を大きくして言った。

「犯人はこの中にいます!」
「知ってるよ!!」


レイはうっとりとした表情を浮かべ、ケンスケはゲンナリしている。
「この台詞、一度言ってみたかったの」
「いや、気持ちはわかるけどね?空気を読んでほしいというか」
「空気?読めないわ」
「わかったから!身に染みてわかったから!」

レイはゆっくりと右手をあげて人差し指を指したままゆっくりと下げ始める。
「犯人は・・・・」
「犯人は?」
徐々に下がる指。その指が指すであろう方向に誰もが意識を傾ける。
「犯人は・・・・!」
レイの指がその人物を指そうとした。その時

ガラッ
「おはよう!って何やってるのよみんな?ホームルーム始まるわよ。席に着きなさい」
担任の鈴木ノリコ先生が扉を開けて教室の中に入ってきた。
「今!綾波さんが犯人を指し示すところだったんですよ!」
「犯人?なんかあったの?」
「片山ミナミさんの水着の入った袋が盗まれたようなんです!」
「あ、そうそう。片山さんの水着の入った袋だけどね。昨日廊下に落ちていたのを隣のクラスの生徒が見つけて届けてくれたのよ。私が預かっているからあとで職員室に取にきてね」

「はい?」

誰もが耳を疑う。先生はもう一度言う。
「だから、私が預かってるから後で職員室に来なさい。片山さんいいわね?」
先生はそれだけ言うと教壇の前へと歩き始めた。
「ほら、なにしているのよ?ホームルーム始めるわよ。席に着きなさい」
狐に包まれたような顔をする生徒たち、レイは下げようとしていた腕をそのままに呆然としている。
「じゃ、じゃあ・・・今までの修羅場は・・・」
「勘違い・・・ということになるよな・・・」
全員の視線が片山ミナミに集中する。ミナミは視線を漂わせるとペロッと舌を出した。

「テヘッ」

「テヘッじゃねえええええええええええええええええええええ!!!!」

こうしてレイのいるクラス全員を巻き込んだ騒動は幕を閉じた。
終わってみれば疲労しかない。その日誰でもが疲れ切った顔をしてクラス全体がある意味お通夜のように暗かった。



数日後、ケンスケは廊下で話をしているアスカとシンジに声をかけた。
「なあ、二人とも放課後なんか予定あるか?」
「ないけど・・・」
「なによ?なにか用事でもあるの?」
「ちょっと放課後付き合って欲しいけど、いいか?」

放課後、シンジ、アスカ、レイの3人はケンスケに連れられてドーナッツショップへと来ている。あの事件の時に唯一ケンスケの潔白を疑わなかったレイに何かお礼をしたいというケンスケの計らいだ。ただ、レイと二人きりで店に入るほどの勇気はなかったためシンジとアスカに一緒に来てもらったということだ。ケンスケの話を聞いて二人は快く承諾した。
「相田、アタシを誘ったんだからアンタがアタシの分まで奢りなさいよね」
「あん?なんで俺が惣流の分まで払わなきゃいけないんだよ。そういうのは彼氏の役目だろ?」
「それもそうね。シンジ~ご馳走様❤」
「アスカ・・・ケンスケ・・・そりゃないよ・・・」
シンジに奢ってもらうとわかった時点で遠慮なしに注文をしドーナッツをもしゃもしゃと食べるアスカを余所にシンジは少しだけ落ち込む。
「でもさ、そっちのクラスでそういうことがあったなんてね。何か騒いでいるな~とは思ったけどレイからは何も聞いてなかったら、レイを誘ってどこか行きたいなんて言うからビックリしたわよ」
「俺の柄じゃないってことはわかってるさ。でも、あのとき俺の潔白を信じてくれたのは綾波だけだからな。礼のひとつやふたつするさ」
「アスカなんかはケンスケが綾波のこと好きなんじゃないかって思ったからね」
「相田はどうなのよ?レイのこと好きなの?」
ケンスケの隣でもぐもぐ食べているレイを余所にシンジとアスカは身を乗り出してケンスケに聞いている。
「好きか嫌いかって聞かれたらそりゃ好きなほうさ。でも、その感情はあくまでもLike、Loveじゃないね。そもそも俺じゃ釣り合わないよ」
ケンスケは笑って答えた。ケンスケは物事に常につり合いというものを考えるところがある。だからこそ高望みはしないし低すぎるものも望まない。ただし目標には常に全力かつ効率的に向かっていくのだ。
「でも、ケンスケ災難だったね」
「ま、身から出た錆の部分もあるけどな」
「仕方ないじゃない。事故ったとでも思って忘れることね」
ドーナッツを食べていたレイの口が止まり顔を上げた。
「相田君、事故、起こしたの?」
「あ~レイ違うわよ。そういう意味じゃなくて・・・」
「言葉の言い回しだよ。考えようによっては事故といえば事故だな」
「そう、相田君は事故を起こしたのね。わかったわ」

「事故った相田君は不運ハードラックダンスしちまったのね」

「今度はなんの影響受けたのよアンタ・・・」

レイは「ぴゅあ」だから何にでも影響を受けてしまうんですね(昏倒)

レイにはどうかまっすぐ育って欲しいものです。

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