寄居・横川半日紀行

(1)東上線
 1月のある日曜日,八高線方面へ行ってみようかと思い立った。思い立ったのが遅かったので,池袋駅に着いたのは11時すぎだった。
 具体的なことは何も考えていなかったが,持ってきた『東京時刻表』を見たところ,埼京線→川越線の快速が行ったばかりだったので,東武東上線のホームへ急ぎ,11:16 の急行に乗った。この時刻表,東京100km圏のJR・私鉄の時刻がすべて出ているので,こうしてふらっと出かけるにはとても便利である。
 東上線は志木をすぎると田畑がかなり多くなる。東京から放射状に広がる鉄道としては「車窓田畑率」(算定は難しいが)はいちばん多いかもしれない。

 八高線へは小川町でも寄居でも乗り換えることができるが,どちらで乗り換えても,同じ列車に乗ることになる。小川町は前に降りて有名な忠七めしを食べたことがあるが,今日はそれほどの時間はないので,寄居乗り換えとする。
 終点の森林公園で小川町行きを待つ。風はなく,真冬にしては日ざしが暖かい。小川町行き(寄居行き接続)は30分ごとで,要するに次の急行で来ても同じことだった。

(2)寄居でそば
 12:56 寄居着。寄居は,八高線のほか秩父鉄道も接続するかなりの規模の駅である。
 食べ物屋を求めて最初に出たところは,町役場がどーんと広がっているばかりだった。休日の役場はおよそなんの役にもたたない。

 反対側へ出てみたら何軒かあって,手近で開いていたのが2軒,そのうちの比較的きれいなそば屋に入った。何も知らずに入ったのだが,思いがけず,店内でそばを打っている本格的な店だった。普通の手打ちそば,柚子入り,芥子入りの3種類の盛り合わせを頼んだところ,こくのある芥子入り,さっぱりした柚子入りのバランスがよく,質量ともに満足した。柚子入り,芥子入りが白いのは殻を混ぜないで作るからだと,若奥さんがそばの実の見本をもってきて説明してくれた。

(3)八高線
 13:48 の八高線高崎行きに乗った。八高線は,高麗川から南が電化されて大部分川越線と直通になり,高麗川以北とは別の線のようになった。高麗川以北は,さすがにべにがら色の気動車はないが,東京の近くではもっともローカル線らしい雰囲気を味わえる路線だ。関東平野もこのへんでは山が近く,車窓は変化に富む。しかし,そば屋で飲んだ酒がきいて,途中からうとうとしてしまい,気がつくともう藤岡のあたりだった。倉賀野で高崎線に合流し,14:29 高崎着。
(4)横川
 あてもなく,とりあえず出ようかと階段を上がると,横川行きの列車の表示があった。碓氷峠廃止後の横川の様子を見るのもいいなと突然思い,14:40の信越本線に乗った。『東京時刻表』は路線図にこの線が出ているが,時刻はなぜかのっていないので,帰りの時刻はわからない。
 15:13 横川着。側線にいろとりどりの電気機関車が並んでいる。どうやら碓氷鉄道むらで展示されるもののようだ。次の上りまで40分ある。近くをぶらぶらするのにちょうどよい。しかし,外へ出ると小雨が降っていた。横川で下車するのは,Nifty の鉄道フォーラム(FTRAIN)の碓氷峠オフ以来である。

 本線の線路がとぎれている脇に,軽井沢への連絡バスの発着所があった。15:25のバスが10人ほどの乗客を乗せて出発していった。バスを見送ってから,釜めしのおぎのやさんが作った小さな碓氷峠資料館を見学,次いで側線を横切る細い踏切を通って,反対側へ行ってみた。国道は車の往来がかなり激しく,横断するのがたいへんなほどだった。おぎのやのドライブインをのぞいてみたら,かなりの客が入っていて,釜めしもよく売れているようだった。
 踏切から碓氷峠方向を見ると,碓氷鉄道むらの建設工事がたけなわだった。アーチ橋を模した門(?)も姿を見せている。駅にある看板では,「98年12月一部開園」とあったのを「99年4月開園」と訂正してあったが,はたして4月に完成するのだろうか。

 15:53 横川発,16:25高崎着。帰りはなんとなく気がせいて,新幹線に飛び乗った。3連休の最後の日なので,当然,満席。大宮から乗った埼京線からは,夕焼けをバックに富士山が美しかった。
 

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