<外傷クイズ>

 

下のレントゲン写真について

1)骨折箇所はどこか

2)どこまで整骨院で治療できるか?

 

 

 

 

 

 


36才 男性

ラグビーをしていて、タックルした際相手の胸ボタンに
右4指が絡まって捻転負傷した。

 

 

                  初診時外観



          右4指掌側部に皮下溢血斑が見られる。

 

 

<症状>

圧痛強度、屈曲不可、安静時痛少々

溢血斑が見られることから、骨折の疑いがある為エコー観察を実施した。

 

 

<仕様>

エコ-本体:日立アロカ社製 Noblus

仕様ソフト:SSB社製ウルトラ三四郎

 

エコー長軸像(右4指掌側面)



左が中枢、右が末梢である。左から中節骨掌側面、右に末節骨が見える。

 

 

 

健側掌側部

 

 

<エコー観察所見>

患側エコー画像からは、末節骨の剥離骨折及び背側亜脱臼、更に中節骨の骨折を疑い、

シーネ固定を施行し、提携医(整形外科)にX線検査を依頼した。

 

 

 

X線画像



側面像に注目!

 

 

 

正常例(別の人物)

 

 

 

 

              1)の解答:骨折箇所   
     
          

末節骨掌側部近位端部が大きく裂離骨折し(白矢印)、末節骨は
背側亜脱臼した(青矢印)。更に、末節骨掌側部が剥離骨折し、
中節骨掌側部へ飛転位した(黄矢印)。

 

 

<考察>

エコー画像においては、末節骨の裂離骨折及び背側亜脱臼は判明したものの、剥離骨片が

中節骨へ飛転位したことまでは判別できず、中節骨骨折と誤認した。

この場合は、X線診断が必要不可欠であった。

100%判別は出来なかったものの、エコー画像とX線画像がほぼ一致したことが重要であると

思われた。

 

<結果>

手術適応の為、提携医から船橋整形外科病院へ紹介され、船橋整形を受診したが、

船橋整形でも対応できず、都内の東京城東病院を紹介され、入院し、手術して

頂いたそうである。

 

2)の解答:どこまで整骨院で治療できるか?

この症例で整骨院で出来る治療といえば、後療くらいである。

応急処置としてシーネ固定をし、しかるべき医療機関に紹介状を書いて行かせれば、

整骨院のやるべきこととしては、それで十分であると思う。

しかしながら、エコー画像による骨折の診断だけはつけておきたい。

 

<まとめ>

通常この様な複合的な骨折は、最初から整形外科を受診することが一般的だと思う。


この患者様が当院に外来受診した理由として、

1.当院のリピーター患者であった

2.二週間前に同側の母指の靱帯断裂の負傷をし、リハビリ通院中であり、本人曰く「母指の
 靭帯断裂の時より痛くはなかったので、こんなに酷い骨折とは思わなかった」とのこと

3.エコー画像診断が出来る為

4.整形外科との医接連携が取れている為

などが上げられる。

当院では、この様な稀な症例がしばしば見られるが、そのほとんどの患者が骨折ではないと

思って来院することが多い。エコー画像診断が出来ることが、その最も主な理由である。

近年、超音波診断装置は飛躍的に画質が向上した。一部ではX線を凌駕しており、

X線検査で骨折が見逃され、当院のエコー画像で骨折が判明する症例も少なくない。

「外傷」を施術することが柔整師の本来業務であるならば、エコー画像診断は必要不可欠

な筈であると思う。

 

 

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