『夏の記憶』all Poems Written by Naoki Saiki.

【↓読みたい詩のタイトルをクリックして下さい↓】
 
夏の記憶(序文)
 
フルーツバスケット
 
六月の雨
 
祭囃子
 
夕立
 
ほらっ、夏
 
スケッチ
 
夕方過ぎに思うこと
 
夏子ちゃん
 
夏の記憶
 
夕涼み


【夏の記憶(序文)】


 僕の知ってるわずかな夏

 

 そのわずかな夏のいくつかの記憶を

 辿っていってみるとどこか特別な気がする

 それはあの夏の暑さのせいだろうか

 それとも長すぎた休みのせいだろうか

 

 夏 夏 夏

        夏はいつまで…

 

 

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【フルーツバスケット】


 夏 夏 夏 甘夏

 

 そう 今度会うなら夏のいつか

 テーブルの上 フルーツ積み上げ

 目につく色を 味を楽しもう

 

 イチゴ さくらんぼ すいかに オレンジ

 ピーチ マンゴウ メロン 洋なし

 りんご ぶどう パイン パイン パイナップル

 グレープフルーツ キウイ

 夏 夏 夏みかん

 旬のものでもそうでなくても

 

 手が汚れたら洗えばいい

 口が汚れたら拭けばいい

 果汁がとべば そう 笑えばいい

 

 今度会うなら夏のいつか

 甘い夏も すっぱい夏も

 山積みにして楽しもう

 

 

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【六月の雨】


 六月の雨はまだ冷たくて

 ぬれた肌に吹く風に

 腕をさするしぐさ 

 

 この雨が止むころ

 雲の隙間をのぞくころ

 わたしあなたのもとにいけると思うわ 

 

 あと少し あと少し

 この夏まで

 あと少し

 

 六月の雨は秋の雨ほどに感傷的で

 紫陽花の色をかぞえる女の子に

 そっと傘をさしてあげる

 

 「ぬれるわよ」

 「もう帰るわよ」って

 今年は娘の手を引きあの海行こうかな

 

 あと少し あと少し

 あの夏まで

 あと少し

 

 今日の薄着を悔やむ肌が

 強すぎる陽射しを悔やむころ

 きっとだれもが夏を迎える

 わたしの夏まで あと少し

 

 

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【祭囃子】


  カルピスの甘さに負けた

  少女の瞳に涙 しずく

 

  わたし いつか涙が涸れたら

  ここからいなくなるわ

 

  祭りの後の花火に負けた

  少女の首すじに汗 しずく

 

  わたしきっと 今度の夏が

  来る前の秋にいなくなるわ


 せっかく覚えるのだったら 昨日の忘れ方や

 深い眠りを覚えたかった

 “ひと”の言葉の外に…

 

 

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【夕立】


 サラリーマン 鞄かかえて走り出す

 OL 時計気にして雨宿り

  ざまあみろ ざまあみろ

 

 僕は傘閉じ 雨に降られて

  遠まわり 遠まわり

 

 見慣れない商店街の 笑顔や会話が気になりだした

  雲 流れた?  空の明るさ

 

 降ってるうちは良かったのに

 降ってるうちが良かったのに

 ちょっぴりの後悔と眩しさが心のなかに差してきた

 

 あ〜あ

 明日も晴れるといいなあ

 

 

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【ほらっ、夏】


 クーラーの音とブラインドの隙間から見える空は

 とても寂しい夏を演出している

 

 さっきより大きく揺れる木々を見る

 それが外への誘いのようでも

 なぜだか冷え過ぎた部屋から出られない

 

 誰か訪ねてきてくれないかな

 もちろん外へ連れ出してくれるとして

 

  ほら もう外は十分に涼しいから

  ほら はやく 汗だってかくさ夏だもの

  ほら ほら 日が沈む前に

  太陽の残してくれるいくつも幻想拾い集めに

   ほら ほらっ

 

 今日がおわる前 夏がおわる前に

 誰か僕を連れ出してくれないかな…

 

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【スケッチ】


 朝の色を背景にして何か描きたいんだって

 夏の始まりに桜の絵ハガキで便りをくれたおまえ

 真夜中の散歩道の途中で見つけた明るすぎる街灯のよう

 

 そんなおまえのためでなく

 ただ朝を見たくなっただけで

 それで真夜中の散歩道から夜明けの抜け道まで

 ただただ歩いた

 

  待ってましたと

  そろそろ明けてくる空をスケッチ

  あの草原まで走るかと

  吹いてこない風を無理矢理スケッチ

  蹴飛ばした小石を追いかけて

  夜露で溶かした絵の具でスケッチ

 

 夏色水彩絵の具をおまえに送るよ

 夏が終わる前に

  たまには早起きしろよ

 

 夏の朝を背景にスケッチしたおまえの世界が

 夏の終わりに不意にやってくるんだろうな

 何ごともなかったように当り前の顔してやってくるんだろうな

 だけど 待っているから

 ずっと 待っているから

 おまえの描く夏を 待っているから

 

 

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【夕方過ぎに思うこと】


 夕方過ぎに思うこと

 一雨降ればいいのにな

 夕方過ぎに思うこと

 また日が短くなったかな

 

 ここで終わる一日じゃないけど

 今日一日に意味の一つもほしくなる

 


 夕方過ぎに考えること

 この風どこから吹いてくる

 夕方過ぎに考えること

 今日…

 

 ここで終わる一日じゃないけど

 ニュースが今日を締め括るかのようで

 


 夕方過ぎに思うこと

 君 自分 誰か

 夕方過ぎにうたう うた

 なるべく涙が出ないうた

 

 

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【夏子ちゃん】


 夏子ちゃん

 夏子ちゃん 斜向かいに住む 夏子ちゃん

 名前通り夏の似合う女の子だった

 サンダル ワンピース

 お母さんと一緒に夕涼み

 

 夏子ちゃん

 夏子ちゃん 太陽のような子 夏子ちゃん

 ひまわりの柄の服が似合う女の子だった

 神社や草むら

 虫取りだってしたよね

 

 夏子ちゃん

 夏子ちゃん 夏服の学生通りの夏子ちゃん

 陽射しを気にしながら自転車をこいでたね

 肌を焼く太陽を

 ちょっと恨めしく思ったでしょう

 

 夏子ちゃん

 夏子ちゃん 冬の薄い陽射しの中の夏子ちゃん

 今日の艶やかなあなたの姿

 もう夏子ちゃんなんて

 呼べないね

 


 夏子さん

 夏子さん 斜向かいに住んでいた 夏子さん

 この夏が来る前に新しい幸せ見つけに

 どこかへお嫁にいったんだって

 どうか お幸せに…

 


 とても可愛かったよ 夏子ちゃん

 とても綺麗だったね 夏子ちゃん

 でも どんなに大人になっても 僕にとって君は

 ずっと夏の似合う女の子 夏子ちゃんだよ

 


 ずっとずっと駆けていられると思っていた夏が終わり

 寝転んだ草の上 思い浮かべた無限の空も霞んできたけど

 思い出すよ 夏が来ると

 


  麦わら サンダル

  プール帰りのアイスクリーム

  氷屋 風鈴の音

  涼風の看板

  わらび餅売りのおじさん

  畑ですいかを冷やすおじいさん

  手招きするおばあさん

  手持ち花火の短い夜

  そしてやっぱり君 夏子ちゃん

 


 終わりそうにない暑さが

 ふっと緩んだときの不安とさみしさが

 もう会えない

 夏を 君を

 あまりに強くつかまえたから…

 


 夏はいつまで

  僕らをつかまえているのだろう

 

 

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【夏の記憶】


 思い出せない 夏の日

 思い出せない 夏

 

 思いがけない 夏の終りに

 思いがけない 秋の風

 聞き覚えのある サマータイム ブルース

 

 思い出すのは 君

 思い浮かぶのは 君の嫌いな冬

 

 春の真ん中にうつむき 夏の空に薄笑い

 冬は君が嫌いだから 秋もゆううつ

 

 君は何を思って灯台なんかが好きだと言ったの

 僕は君を思ってあかりを追ってみるけど

 なぜだか追いつけない

 


 思い出せない 君の顔

 思い出せない 波の音

 

 思いがけない 宝さがしに

 思い浮かべる 砂浜 貝殻

 うわさだけ聞く 波の音

 


 思い出すのは 冬

 思い出すのは 冬の嫌いな君

 

 春の終りに焦り 夏の終りにも焦る

 冬の訪れにも焦るから 秋もゆううつ

 

 君は何を思って歌を口ずさむのだろう

 僕は真似して歌ってみるけど…

 音がずれてる

 


 思い出せない記憶には

 どんな四季が似合うのだろうか

 

 

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【夕涼み】


 鈴の音 チロリン

 風涼し

 溜め息一つで風の休息

 待ちくたびれて

 鈴の音 チロリン

 逃がしてなるかと深呼吸

 

 

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