このミニアルバム『ムード21』は、今でこそ、“メディア・バンド”として、活動のすべてをIHONOと呼ぶという自分たちをジャンルで限定化しないスタイルを取っているが、当時はまだ斉木と福島がIHONOをどんなグループにしていくか方向性が決まっておらず、「とりあえずなにかカタチにする」ということを目的としていたかのように自然と出来ていった作品。並行して詩の朗読作品『夏の記憶』も制作された頃だった。
作品内容は、福島のアバンギャルドミュージック路線など現在に通じる曲が収められているが、注目は斉木直樹による楽曲『めまい』だろう。
斉木による歌曲はいくつか存在しているが、アルバム収録はこの1曲のみで、貴重な音源である。(また、『ねぇ、君』収録の『湯上がり美人』『写真屋さん』は彼の作曲であり、メロディメーカーとしても才能を発揮している)
後に『空の片側』が『ねぇ、君』で再録され、詩の朗読アルバムがメイン作品となっていく中で、いったんは「なかったことにされた」アルバムでもある。
自分たちの可能性を広く模索していた最も初期のデモ作品として聴くとなかなか感慨深い。