この2002年の秋、劇団顔交換は最大のピンチを迎えていた。

というのも、今までのメインの部員が卒業制作や就職活動のために次々に抜けて、また、後輩部員も参加が少なくなってゆき、気がつけば残された部員はたった2人、演劇をできる状況ではなくなっていたのである。

大学祭といえば部活動に取って模擬店を出したり、年間で作った陶芸作品や古着のバザーをしたり、バンド等はステージ演奏をしたりするが、当然、"演劇部"という以上、演劇を行わないわけにはいかなかったのだが、仕方なく2人の部員は店を開くことにする。しかし、店といっても大学内に出店する場所も取ることができず、移動型のクレープを作る装置を首から下げて校内を練り歩くことになった。

その状況を見かねて顔交換OBや演劇部に関係する有志たちが集結し、1ヶ月でオリジナル脚本を作り上げ、大学祭に間に合わせ底力を見せつけた演劇公演がこの『ハカイの街』である。

主人公はテロと革命と隣国同士の戦争で荒れ果てた街の時計台で働く少女エスと、エスの家に居候している少女アニコ。

エスはアニコを養うためにロベールという老人の経営する巨大な時計台で仕事をするかたわら、革命活動の使い走りもしている。ロベールは街の状況もお構いなしに時計台の歯車点検や時計台の改造に取り憑かれている。
エスとアニコはいつかこの街を抜け出し、南の島へ移住したいという夢を持っていた。毎日のように時計台にのぼり、朝日と夕日の頃に外国へと飛んでいく飛行機を眺めて夢を膨らませる2人。
しかし街の戦闘やテロの激化に伴い、国外への航空機の制限が決定される。エスは最後の飛行機に乗るチケットを手に入れるために、ある仕事を引き受ける。

作品自体は40分程度と短い。
ストーリーが複雑な分、短くすると設定の説明ができなくなるため、現実的場面をピックアップするような演劇のシーン展開の間に、暗転中のラジオ放送や音楽を挿入し世界観を想像させることで展開を早くさせている。

また、本作品ではステージそのものに映像を投影、オープニングも、まるで照明効果のように映像を使い映像的な画面を作り出し、今までの演劇や映画とは異なる新しいエンターテイメントを予感させる実験的な意欲作になった。


《ムービー/サウンドファイル》
 演劇公演Movie 演劇公演【ハカイの街】の全編をムービーで観よう!

《Part 1》

《Part 2》

《Part 3》

《オープニング映像》



《宣伝ポスター/チラシ/パンフレットデザイン》

 
【ポスター/チラシ】
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