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2000 私の読んだ本ベスト20-ミステリー以外-

ミステリー以外というと純文学、恋愛小説、ノンフィクション、エッセイといったところでしょうか? とにかく「じーん」ときたり、「ほー」と唸ったりする本の数々ですね。何といっても今年の大収穫は重松清さんの作品です。 20冊の中にはその時は「ふーん、こんなもんか」と思っても後から読み返して見るとよかったものもあったりします。ミステリーの境界に立つ数編もこちらに 入れさせてもらいました。

  
今年はじーんと来る本に何冊か巡り会えて幸せです。作品の横*がついているのは2000年に出版。
順位書名著者名出版社あらすじ・ストーリー 選考理由・どこがいいか
1春雷伊集院静新潮社  著者の自伝的小説「海峡」の続編。舞台は瀬戸内の港町。14歳の英雄は様々体験から多くのことを学び成長する。遠い昔のできごとだが、そこにはサラサラの青春があって気持ちがいい。「てふてふ」と名乗る不思議な男の登場がこれまたいい。
2ナイフ重松清新潮文庫いじめ、登校拒否。学校では子供が、親が多くの悩みを抱えている。そして、何とか前に進もうともがき苦しむのであった。新作の「ビタミンF」同様に子、親、家族に視点を向けた数珠の短編集は思わず引き込まれます。「エビスくん」を読んだ時は思わず涙が出てしまった。
3虹の谷の五月*船戸与一集英社 十三歳の少年、トシオ・マナハンはフィリピンのセブ島の僻地に住んでいる日比混血のためジャピーノと呼ばれる。無垢な目を持った少年の成長物語。冒険小説はミステリー??溌剌とした少年の生き方が感動をもたらす直木賞受賞作でした。
4GO*金城一紀講談社  在日韓国人の僕はアッケなく恋に落ちた。彼女はムチャクチャ可愛らしい日本人だった。こちらも直木賞受賞昨。いきおいを実感し、仄かな愛を感じ、切なさが身に凍みる。終って見れば気持ちよさが残った。
5スプートニクの恋人村上春樹講談社  22歳の春にすみれは生まれて初めて恋に落ちた。それは「スプートニクの恋人」だった。ぼくはすみれの行方を探す。中性的で先が見えない村上春樹のミステリアスな世界。うーん相変わらずだ。
6冷静と情熱のあいだ江國香織・辻仁成角川書店 「Rosso」の一ページ目で打ちのめされ、「Blu」の最終行で救われる。女性の立場からエ國香織が綴り、男性の立場から辻仁成が綴る。そして二つの物語はフィレンツェで繋がる私としては辻氏の「Blu」に一票。やっぱ男だからでしょうか。あなたはどっちがよかった?
7ウランバーナの森奥田英朗講談社文庫 その夏、世紀のポップスター・ジョンは軽井沢で過ごした。ウイットとユーモア、そして温かい思いに溢れた喪失と再生の物語。ジョンとはジョン・レノンをイメージしている。フィクションだが何故か彼を思い起させる力が働く。そして、「Loving you。。。」と口ずさみたくなる。モスクワで旅行中読みました。
8砂の王メイセイオペラ*佐藤次郎新潮社 ドラマは、ほんの小さな偶然から始まった。芽ぐまれぬ血統と前頭骨骨折の危機を乗り越え、遂に掴んだ中央G1初制覇。人と馬の感動の物語。何度も競馬場へ足を運び彼のレースを見た。アブクマとの一騎打ち。フェブライリーS優勝。読むたびにジンときます。
9ロケット・ボーイズ*ホーマー・ヒッカム・ジュニア草思社少年は1957年、世界で初めて打ち上げられたソ連のスプートニクが夜空に輝くのを見て、ロケットのとりこになる。夢を乗せて手作りロケットは空高く舞いあがって行った。 「遠い空の向うに」という邦題で映画化された本作は少年の夢と父子の絆を感じることができる逸品です。
10ダックコール稲見一良早川書房野鳥を題材とした六つの小説を収めた短編集。男たちの凛々しさと自然の厳しさ、その中から滲みでる愛と優しさが読者を魅了する。本作はミステリマガジンに連載された話もあるのでミステリーなのだろうが人と人、人と自然のやり取りがあまりにも優しく伝わるのでこちらのベスト20に入れさせてもらいました。
11ポプラの秋湯本香樹実新潮文庫夫を失ったばかりで虚ろな母と、もうじき7歳の私。ポプラの木が生えるアパートに引っ越しすと不思議な大家のおばあさんがいた<。/TD>「夏の庭」以来の著者の作品は子供の心理描写を等身大で描いた不思議な話でした。
12メランコリーララバイ安西水丸NHK出版  広告代理店に勤めるぼくの耳にペニー・カーターの「メランコリー・ララバイ」が流れ込んで行く。著者の自伝的小説。これまた久々に安西作品を手に取った。何だかかつて読んだ感じがするのは同じ歌手の曲が似ていることが多いのと同じ感覚か?でもこの世界が好きです。
13逃亡帚木蓬生新潮社香港で情報活動に従事していた守田軍曹は「わらわれのやったことは捕虜虐待だ」という同僚の言葉を聞き憲兵隊を離れる決心をする。そして逃亡が始まった。「憲兵」という言葉さえ知らなかった。逃亡を続けやっと家族に再開できたのに。男を支える家族の強さと健気さに感動する。
14朗読者*ベルンハルト・シュリンク新潮社  15歳の少年ミヒャエルは21歳年上のハンナと恋に落ちる。ハンナは突如失踪。彼女が姿を隠した事実がわかり、時は過ぎて行く。読み始めて正直げげと思った。そして平穏な心理状態で読み進め。最後は思った通り哀しくなった。
15サイレンススズカ無垢なる疾走*都地政治新潮社  どの馬よりも前を走り、そして真っ先にゴールを駆け抜けて行った名馬サイレンススズカの秘話がつまった作品。とにかく目立った馬でした。抜群の才能を持っていながらなかなかそれを開花することができなかった。充実の毎日王冠を目の当たりにして見ることが出来て自分は幸せだと思う。
16永遠の緑*浅田次郎JRA  2000年JRA・CMの父娘が主人公になった書き下ろし競馬。「勝つのはあの馬だ。エバーグリーン」あのCMにはこういう物語がしまわれていたんですね。ただ、、、松嶋菜々子の彼氏が「あれ」とは。。。
17ラジオデイズ鈴木清剛角川書店  追い払うことも仲良くすることも出来ないかつての同級生がやってきて、オレの六畳で暮らし始めた。家から出て暮らしている若者の自分の空間がある意味で実感できる。やっかいは突如潜り込んで来るもの。結末は壮快でした。
18ボディ・レンタル佐藤亜有子河出書房新社  「私のカラダは誰のものでもない」。女子大生マヤの禁断のファイルを描く。「ボディ・レンタル」。エロチックな響きは危なさを感じる。不可思議で変わった話でした。
19夕日が目にしみる〜象が空をT〜*沢木耕太郎文藝春秋  歩く、読む。十年を束ねる全エッセイのPart1.ここには事実と虚構の狭間にあるものを深く意識しつつ読む方法がある。沢木エッセイ作品をあげておきましょう。本を読む姿勢が綴られているところが興味深い。
20死ぬかと思った*やぎの目幻冬舎  「死ぬかと思った」出来事を笑いのスパイスで告白した低レベルな臨死体験集。今年読んだ本で「くだらない本」のNo1でしょう。あまりにもおかしいので今までに10人近くに貸して笑いの渦の道連れにしてあげました。

ベスト20には入れませんでしたが面白かった・よかった本はまだまだあります。(順番に意味はありません)
椎名誠著「アド・バード」、山田詠美著「色彩の息子」、志水辰夫「きみ去りしのち」、村山由佳著「僕らの夏〜おいしいコーヒーの入れ方U」 、辻仁成著「海峡の光」、三浦哲郎「ふなうた」、江國香織著「すいかの匂い」、村上春樹編「そうだ、村上さんに聞いてみよう」、藤原伊織「ダックスフントのワープ」、 重松清「ビタミンF」、川上弘美「蛇を踏む」、ジュンパ・ラヒリ「停電の夜に」、木村俊太「スペシャルウィーク」、三浦恵「音符」等々