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2000 私の読んだ本ベスト20-ミステリー編-

HPで「本の城」のコーナーを作って一年以上たちましたが、蔵書の追加もほったらかしにし、お薦めの紹介も ほったらかしにしていました。唯一日記で読了した本の感想を書いていたのですが、興味を持った方は いらしたでしょうか?
今年も昨年に続き私の読んだ本ベスト20の発表です。今年は年間100冊読了を目指しましたが結局98冊と なりました。新刊、既刊の数々の作品。ジーンと来る感動の作品や思わず唸るようなすごい作品。くすくすと 笑いたくなるような作品。一年間楽しめました。 今年は多く読んだ事もあって20冊に絞るのは大変な作業でした。あー、絞れないよー。苦肉の策としてジャンルをミステリーとそれ以外に分けて ランクつけすることに。ただし、昨年同様一著者・一作品を原則に選定しています。。 今年も何冊かの人に本を貸しましたが、逆に、面白い本を貸して頂いた方々。感謝しております。今年も面白い本が あったら是非紹介して下さいね。 ここに挙げることができなかった本はお薦めのコーナーで紹介したいと思います

  
ミステリーのジャンルは幅広くなってきているようです。作品の横*がついているのは2000年に出版。
順位書名著者名出版社あらすじ・ストーリー 選考理由・どこがいいか
1一瞬の光*白石一久角川書店  日本最大の財閥の中核企業に勤める若きエリート橋田。新入社員面接で顔を合わせた香折と偶然にもバー出会うことによりストーリーは思わぬ方向へ突き進む。ミステリー?というと疑問だが、不作と言われる今年のミステリーの中に輝ける光を放った本書。読者をぐいぐいと引き込む力に圧倒される。そして、あまりにも切なすぎる。知られざる名作!
2ガラスの麒麟加納朋子講談社文庫通り魔に襲われた十七歳の女子高生安藤麻衣子。美しく、聡明で、幸せそうに見えた彼女の内面に隠された心の闇から紡ぎ出される六つの物語。短編ながらきちんと繋がれたストーリー展開は見事。保健の神野先生が少女達の心の内を解いて行く様子が鮮やかです。
3バトルロワイヤル高見広春太田出版 楽しいはずの修学旅行が、壮絶なバトルゲームに一変した。最後に残った一人だけは家に帰ることができる。壮快なラスト。年末に映画化された本作品。中学生が殺しあうという設定は国会でも問題になったが、この中には友情と正義、自立といった教えも刻まれていると思ってもいいんじゃないか?抜群の面白さ。
4T.R.Y.井上久登角川書店  明治時代末期の上海-日本を舞台に詐欺師伊沢が繰り広げる騙し合いのドラマ。波乱万丈のストーリー展開。「革命」という言葉が違和感なく受けとめられるのは、実に多彩で魅力的な登場人物たちが読者を引き込むからだろう。問答無用の面白さとはまさにこれのこと!
5ダブルフェイス*久間十義幻冬舎  渋谷で絞殺されたホテトル嬢は超一流企業のエリート社員だった。彼女はなぜ二つの顔を持っていたのか?都市に生きる者の底なしの心の闇に刑事達は直面する。東電OL事件がモチーフにされている本書はフィクションではなければ描けないストーリー展開を綿密な取材と構想でかもし出している。
6ひまわりの祝祭藤原伊織講談社 「見つかった。ようやく私たちはたどりついた。アルルの八枚目のひまわり。」幻の歴史的名画をめぐり、かつてアートの世界に生きた孤高の男が辿る清冽な愛。ゴッホの八枚目のひまわりが存在するという設定は「モナリザの微笑」を連想してしまうが、藤原作品の孤独な男のおりなすストーリーは振り返っても満足できるもの。
7ジャンプ*佐藤正午光文社 リンゴを買いに行ったまま彼女は失踪する。彼女の部屋で目を覚ました彼はそんなこととは知らず出張先に飛び立ってしまう。そして、自分の人生を選び取ったことなるとも知らずに。。本の雑誌が選ぶ2000年度ベスト10の第1位。淡々と流れるストーリーが最後で重厚な運命の響きを放ち呆然としてしまう。
8凍える牙乃南アサ新潮文庫 深夜のファミレスで突如、男の身体が炎上した。遺体には獣の咬傷が残されており、警視庁機動隊捜査隊の音道貴子は相棒の中年デカ滝沢と捜査に当る。二人の対立の行方、事件の真相は?直木賞作品の文庫化ということでかなりこの本読まれたらしい。今年の文庫年間チャート7位だそうです。もちろんスリリングで面白いです。
9美濃牛*殊能将之講談社「鬼の頭を切り落とし・・・」首なし死体に始まり、名門一族が次々と殺されていく。あたかも伝承されたわらべ唄の如く。「ハサミ男」であっと言わせた作者の第2弾。完成度という点ではこちらに軍配があがるようです。横溝正史のような世界も久々にはいいもの。ユーモアもあるし。
10慟哭貫井徳郎東京創元社女児誘拐・殺害事件起こり、事件究明に奔走する中、一人の刑事が意外な事実に直面する。新興宗教が鍵だった。タイトルの通り「慟哭」である。そしてラストは仰天である。あまりにも巧みなストーリーに唸るばかり。それにしても宗教の力は恐ろしい。。。
11涙流れるままに島田荘司光文社警視庁捜査一課刑事・吉敷は別れた妻の面影に手繰り寄せられるようにある事件の再捜査を始めた。冤罪を信じる老婦人の願いを叶えることができるのか?壮絶なラストへ直進する。上下巻の作品。前半重苦しい空気に苛まれるが最後に残されていたシーンはあまりにも感動的で電車の中で読んでいた自分は涙流れるままになりそうなのをこらえるのに必死でした。
12MISSING本多孝好双葉社  1994年の第16回小説推理新人賞受賞作「眠りの海」を含む5編が収録された短編集。全てが純文学とミステリーのハイブリッドのような味わい。全ての作品が「寡作」という感じの大人しい作り。しかし、一編一編読み進めて行くと本書の傑作振りが体中に染みわたってくるのだ。
13アナザヘヴン*飯田譲冶・梓河人角川ホラー文庫ベテラン刑事飛鷹と部下の早瀬の前に東京を震撼させる連続事件が発生した。犯人は、殺害した被害者の首を切り取り脳を料理していたのだ。犯人は一体何者なのか?この世の常識を覆す、サイコサスペンス巨編。映画化された本作品。本から先か?映画から先か?映画を先に見た自分は出演者のイメージをうまく乗せて本書を楽しめました。ちなみにTV「eclipse」は全くの別物。
14ホワイトアウト真保裕一新潮文庫  日本最大の貯水量を誇るダムが、武装グループに占拠された。職員、ふもとの住民を人質に、要求は50億円。24時間の残された時間で、一人の男が完全と立ち上がる。こちらも映画化された作品。映画もなかなかのものですが、登場人物の微妙な心理描写は原作でないと読み取れないでしょう。。まー松嶋菜々子さんを見てるだけで満足の人は別だが。
15ハンニバル*トマス・ハリス新潮文庫  「羊たちの沈黙」続編ついに登場。あの血みどろの逃亡劇から7年。FBI特別捜査官となったクラリス・スターリング新たなる戦いに挑む。待ちに待った続編。レクター博士の凄まじさはさらにパワーアップしていました。映画の公開が待たれます。
16オルファクトグラム*井上夢人朝日新聞社  片桐稔は姉の家で何者かに殴られ気を失う。1ヵ月後目覚めた時、姉が殺されていたことを知らされ、同時に異常な「嗅覚」身についていることに驚くのであった。不思議な鼻のちからで犯人を遂に突きとめる。楽しいミステリーとは本書のような作品をいうのでしょう。奇想天外な設定のもとで描かれた作品で驚かされました。
17幻の女香納諒一角川書店  弁護士栖本のもとをある女はいきなり消えてしまった。そして5年後,偶然の再会を果たすが、数日後、彼女は殺害されていた。彼女の失踪と殺害の謎を探って行く。緻密な構成に裏づけされた謎解きの醍醐味を堪能できますね。主人公の男のスマートさと不甲斐なさの共存が読者を安心させます。
18DZ*小笠原慧角川書店  本年度横溝正史賞受賞作。DZとは二卵性双生児のこと。アメリカへ留学していた恋人の周辺で起こった事件は涼子にとって大きな繋がりがあった。医学、心理学の専門的な用語、あまりにも偶然が重なりすぎるラストにミステリ専門誌の評価は高くないが、「え?え?そうなるの?」というスリル感というか。。。いいと思うけど。
19動機*横山秀夫文藝春秋  4編の短編からなる作品集。心のい中に潜む「動機」がテーマであり、4編それぞれで事件や出来事の元へ次第に辿りついて行く。王様のブランチで話題になった本。「このミス」でも2位にランクされた本書は完成度の高い短編集と言えるでしょう。
20コンセント*関口ランディ幻冬舎  四十歳の兄が3年間の引きこもりの末、者も食べず、衰弱死したことから始まる。兄の死の謎を追いながら妹ユキは自分を見つめることになる。繊細で過敏な人の心が、信じられない出来事を引き起こす今日この頃。時代にマッチした問題作なのでしょう。これは。

ベスト20には入れませんでしたが面白かった・よかった本はまだまだあります。(順番に意味はありません)
奥田英朗著「最悪」、福井晴敏著「Twelve.Y.O」、殊能将之著「ハサミ男」、鄭石華著「シュリ」、宮部みゆき著「クロスファイヤ」 、香納諒一著「デイブレイク」、氷川透著「真っ暗な夜明け」、高嶋哲夫著「イントゥルーダー」、森博嗣著「そして二人きりになった」、新野剛志著「八月のマルクス」、 野沢尚著「リミット」、加納朋子著「いちばん初めにあった海」、近藤史恵著「凍える島」、東野圭吾著「私が彼を殺した」、森純著「八月の獲物」、逢坂剛「禿鷹の夜」、 黒川博行「疫病神」、北川美歩「僕を殺した女」、麻耶雄嵩「鴉」、黒田研二「ウエディングドレス」、山本文緒「恋愛中毒‐Loveholic-」等々