いちごぼっくり物語

[その33]

 いちごぼっくりはブランコに話しかけた。
「私もこの家にいたことがあるのね。でもそれって何時のことかしら。」
 ブランコは答えた。
「もちろん今の君が生まれるずっと前のことさ。」
「それって前世のこと。」
「まあそういう言い方もできるかな。」
「生まれて死んでまた生まれて死んでゆくのね。そういうのって何か意味があるのかしら。」
「意味なんてないさ。人々はいつも何かに意味を見い出そうとする。何か意味がないと気が済まないんだな。でも本当は意味なんてないのさ。人々は生まれて成長することで、経験を積み、学び、何かを得たような気になっているけど、それって錯覚なんだよね。」
「錯覚ってどういうことよ。」
「生まれた時の状態が完璧なんだよ。それから人々は少しづつ傷付き、損なわれてゆくんだ。生きてゆくということは、意味と無意味の狭間でうごめきながら、少しづつ壊れ、枯れてゆくことなんだよ。」
 いちごぼっくりは少し間をおいてから答えた。
「私はそうは思わないわ。あんたはこの屋根裏部屋であまりに長い、たいくつな時間をすごしすぎたのよ。」
 
 その日の夕食の時、いちごぼっくりはいんげんどじょうに言った。
「屋根裏部屋にあんたととっても気の合いそうな人がいるわよ。」



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