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三人は深い森の中を歩いている。死神の島であわただしい一夜をすごした後、壷じいさんに教わった青い山を目ざして湖を出発したのはお昼ごろだった。暗いじめじめした森にいい加減嫌気がさした頃、いきなり森が終わり視界が開けた。三人の目の前には青々とした草の生えた丘陵が広がっていた。
「ああ、なんて気持ちのいいところなの。」
いちごぼっくりが思わず叫んだ。
見えるのは広々とした草原と、真っ青な空とほんの僅かの雲ばかり。
その雲の間、はるか上空を何かがゆっくりと動いていた。
「あれは…鳥よねえ。でもものすごく高い所を飛んでるみたいね。」
「ほとんど動いてないように見えるけど……。実際にはかなり大きな鳥なんだろうなあ。」
いんげんどじょうがぼんやり言った。
「僕眠くなっちゃった。」
しいのみ君があくびをしながら言った。
そこで三人は思い思いに草原のうえに両手をひろげ、昼寝をすることにした。
ここ数日の冒険で実際三人は疲れていたのだ。
申し合わせたように三人が目を覚した時、お日さまは西の空に傾きかけていた。
「あら、ちょっと寝過ごしたみたい。何処かキャンプを張れるところを捜しましょう。」
三人がなだらかな丘を登りきり、下りのスロープにはいった頃、夕日が沈んだ。目の先には真っ赤な残光の空を背景に、また黒々とした森が広がっていた。その先にはあの青い山。
「あの森の入り口あたりまで行ってみましょうか。」
「あそこに煙りが見えるよ。森を少し入ったところ。」しいのみ君が叫んだ。
「ほんとだ。それに煙突も見えるよ。行ってみよう。」いんげんどじょうはかけだした。
その家は暗い森には不似合いなほど、こざっぱりした、気持ちのよさそうな家だった。
玄関までの小さな道の両側には花が植えられていた。
いちごぼっくりは迷わず戸を叩いた。
しばらくして戸は静かにひらいた。
迎えた人はとても大きな女の人だった。
その人はもう若くはなかったが、まん丸い顔からは大地の温もりと懐かしさが感じられた。
しいのみ君はまるでお日さまのような人だと思った。
その人は両手をひろげ、もうずっと前から三人が来ることがわかっていたように、ニコニコ笑いながら三人を迎えた。
「長い旅をしてきたのね。ここは安心と休息の家よ。ゆっくり休んでいってね。」
「お世話になります。」
三人はそうすることが当たり前のように、ぺこりと頭を下げた。
暖かくて、おいしくて、たっぷりの食事のあと、三人は女の人にこれまでの旅の話をした。
女の人は三人の話を時には楽しそうに、時には悲しそうに聞いていた。
話を聞き終わった時、女の人はぽつりと言った。
「そう…、世の中、まだそう捨てたもんじゃないってことなのね。」
「ここに来る途中の丘で鳥を見たの。とても高いところを飛んでいたわ。」
いちごぼっくりが言った。
「まあ、あなた達あの鳥を見たのね。それは幸運だわ。あの鳥は下から見えるほど、高度を下げて飛ぶことは滅多にないのよ。
あれはホマ鳥という鳥よ。あの鳥は生まれてから死ぬまで決して地面に降りてこないの。大空の上で卵を生むとその卵はもちろん落下するけど、地面につく前に孵化するの。そして孵ったヒナ鳥はそのまま大空に帰っていく。
大空で生まれ、大空で生き、死ぬ時はどこか空の彼方に消えてゆくわ。とても大きな鳥だけど、空気にように軽くて、寝る時も羽を広げたまま空をただよっている。決して大地に羽を休めることはないのよ。」
「なんだか不思議な鳥ね。
……でももうなにも考えられないくらい眠くなっちゃったわ。」
「僕ももう目をあけてられないや。」しいのみ君がつぶやいた。
「僕はもう少しこのワインを飲んでたいけど…」いんげんどじょうがグラスごしに天井を見ながらいった。
「そろそろやすんだほうがよさそうね。」
女の人はやさしくそう言うと、三人を寝室に案内した。
そこでみんなは、暖かい部屋とふかふかのベッドで眠りについた。

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