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いちごぼっくりはしいのみく君といんげんどじょうのイメージをとぎらすことなく歩いていった。町なかで人とも行き会ったが、声もかけずに通り過ぎた。町を抜けるとおだやかな田園風景が広がっていた。
『私が思うにここはまだ黄泉の国ではないわね。その手前の曖昧模糊とした中間地点だわ。ここでは死者の魂も、寝ながら夢をみている魂もいろいろ混在してるみたい。』
少し先にレンゲのいっぱい咲いている土手があった。辺り一面えんじ色のカーペットを敷き詰めたようだ。頬を気持ちのいい風が撫でていく。いちごぼっくりは左右一面畑が広がる土手の上を歩いていった。
ずっと先に誰かが座っていた。
近づくとそれはなんとしいのみ君だった。
「しいのみ君」
いちごぼっくりは大声で叫んだ。
しいのみ君はいちごぼっくりを見ても、なんだかはっきりしない様子だった。
「しいのみ君、私よ。」
いちごぼっくりはしいのみ君の手を強くつかんだ。
「……ああ……、僕はどうしたんだろう。なんでこんなところにいるのかなー。」
「いいこと、あんたは私の死神ダンスを見て死んじゃったの。ここはあの世よ。それで私がこうして迎えに来たわけ。これから私と一緒に現世に帰るのよ。」
「ふーん、そうなんだ。でもここも気持ちのいいところだね。」
しいのみ君はまだ、心ここにあらずという様子だった。
「ところでいんげんどじょうを知らない。」
「そうだねー。確か途中まで一緒だった気がするんだけど…、よく覚えてないなあー。」
「ふーん、そうなんんだ。」
いちごぼっくりはまわりを見回した。
土手のわきを小川が流れていた。
いちごぼっくりはなんだか、その小川を辿ってみたくなった。
「しいのみ君、私と一緒に来て。」
二人は小川をとぼとぼと辿っていった。しかしそれはだんだんと頼りない感じになって、最後は泥のなかに消えていた。
「まさかこんな泥の中にいる訳ないし。あいつどこいっちゃったんだろう。」
その時土手のうえを吹く風にのって、かすかに尺八の音が聞こえてきた。
「しいのみ君、これっていんげんどじょうじゃない。あいつときたらまったく、こんな時に呑気にもう。」
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