いちごぼっくり物語

[その20]

しいのみ君はぼんやりと窓辺の椅子に座っている。
窓の向こうには夕暮れの静かな風景が広がっている。部屋はなんとなく見覚えがある。しばらくしてしいのみ君は気がついた。
ここはずっと昔見たおじいさんの部屋だった。
机には薄っすらとほこりがたまっている。壁に掛かっている絵も昔のままだ。

しいのみ君は考える。
『みんなと一緒に旅をするのは楽しいけれど、やっぱりこの夕暮れ時、一人でぼんやりと部屋に座っているのが最高に幸せだなー。人生にこれ以上の幸せを求めるのは贅沢というものだよ。
僕はもう海を見たのだろうか、それともまだなのかな。僕はもう何度も何度も海を見てきたような気がする。あれ、どっちなんだろう。…そんなことはもうどうでもいいや。』

しいのみ君は目をつぶって部屋の匂いを嗅いだ。なつかしさが甦ってきた。物音一つしない部屋でしいのみ君はじっとしている。そのうち目を開けて窓の外を見る。遠くに青い山が見える。その山に焦点を合わせる。突然山がぐんと近くなり、山道を登る三人連れが見えた。それはいちごぼっくりといんげんどじょうとしいのみ君だった。
「え!」と叫んだところで目が覚めた。



 


 


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