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いちごぼっくりがいいかげん待ちくたびれた頃、いんげんどじょうとしいのみ君が戻ってきた。
二人とも無言で疲れた顔をしている。
しばらくしていちごぼっくりがぽつりと言った。
「この先に湖があるそうよ。」
三人がその湖のほとりについた頃、雲の間からお日さまが顔を出した。
「きれいな湖ねえ。いんげんどじょう、あんたまた泳ぎたくなったんじゃない?」
「ぼくはこういう澄んだ水はどうも苦手なんだよね。」
「ねえ、あそこに変なものが飛んでるよ。」
しいのみ君が指差した湖上30メートルあたりから確かに薄黒い変なものがこちらに向かって飛んでくる。それはみるみるうちに三人の目の前にやって来た。
「つ、つぼじいさん!」
いんげんどじょうが素頓狂な声をあげた。
「あれがあんたが以前話してたじいさんなの。やたら元気そうじゃない。」
いちごぼっくりが小さくつぶやいた。
「やあ、やあ、やあ!またお会いしたね。あんときゃ世話になったなあ。今度はお連れさんも一緒かね。」
「おじいさん、お久しぶりです。お元気そうですね。」
「元気、元気。、もう絶好調だよ。」
「とうとう飛行術もマスターされたんですね。」
「そうなんじゃよ。わしはこの湖で飛行の訓練をしたんじゃ。どうだいわしの飛びっぷり。かっこええじゃろう。」
「なかなかのもんですよ。」
「そうじゃろ、そうじゃろ。先日はとうとう本物の海まで飛んでいったよ。海はあんたたちこんなもんじゃないよ。とにかくでかい。」
「おじいさん、海はどっちの方角なの。」
いちごぼっくりがあわてて尋ねた。
「海はここから南東の方角。そうじゃなあ、あそこに見えるあの青い山のずっと向こうじゃ。」
「まだまだ遠いんだなあー。」
しいのみ君がつぶやいた。
「そうそう、わしはこれからその海のかなたを目ざして飛んでゆくつもりなんじゃ。
あんたら知っとるかね。あの海の真ん中、東方何百里のかなたに鳳来島があるんじゃ。そこではいつでも腰みの一つのかわいいねえちゃんがふらふらダンスを踊りながら、花を手に迎えてくれるそうじゃ。」
「そ、それってちょっと違うんじゃ……。」
「おっ、一句浮かんだぞ。
ひんがしのしまにうるわしきねえちゃんのたつみえてかえりみすればみうしないけり」
「あ、あのねえ、おじいさん。その島は……」
「だからわしは真直ぐ前を見て進むのみじゃ。さらばじゃ!」
いちごぼっくりが口を挟む間もなく、つぼじいさんはひらりと飛び上がると、さっそうと東をさして飛んでいった。
「人の話を聞かないじいさんねえ。」
いちごぼっくりがあきれ顔で言った。
「じいさんだろうがばあさんだろうが年寄りというのは人の話を聞かないもんだよ。」
話してる間にも、つぼじいさんは少し腰がふらついてはいたが、もやのかかった湖のかなたに消えて行こうとしていた。
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