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次の日は曇天模様のはっきりしない天気だった。昼頃には旅の疲れも手伝って三人とも歩くのが嫌になってきた。草原のなかにえんえんと続く単調な道もつまらなかった。
いちごぼっくりが言った
「なんか今日は調子がでないわね。昨夜の夢見が悪かったせいかなあ。」
「ふーん。」いんげんどじょうは気のない返事。
その時しいのみ君が立ち止まった。
「あそこに見えるのは何かな。あの大きな柳の木の先。」
しいのみ君はそう言いながら、早足でどんどん歩き出した。
「あれは…そうね。多分茶店かなんか。…だといいんだけど。いんげんどじょう、あんた確か老眼で遠目がきくんでしょう。あののぼりみたいの、何て書いてあるの。」
「ええーと、『酒家、さるのこしかけ』。こりゃいいや。酒が飲めるぞ。」
三人は庭先のテーブルに座ってごきげんだ。
「なんにします?」やかん頭に白鉢巻きの店主が威勢よく聞いた。
「とりあえず私、ビール。」これはいちごぼっくり。
「それじゃ『月光仮面』って地ビールがあるよ。」
「ちょっとネタが古そうだけど、それでいいよ。」
「おじさん、日本酒はどんなのがあるの。」しいのみ君は日本酒党だ。
「そうだね、『亀浦島』これは甘口。『裏乙女』これは淡麗辛口と言ったとこかな。」
「端にある『亡国の翼』って言うのは?」
「これは超辛口、冷やして飲むと最高だよ。」
「僕それがいいや。」
「そちらのにいさんは?」
「上の棚の洋酒、『Strange Love』ってどんなの?」
「こいつは変態科学者が作った度数96のスピリットだよ。飲むと口から火を吹くぜ。隣の『Invisible Mist』なんかロックでもなかなかいけるよ。」
「じゃそれ、氷少なめ。」
「あいよ。」
「この辺は呑気そうな所ね。」
「まあそうだね。あんたらも呑気そうだけど。」
「そんなことないわよ。深刻な目的があるんだから。」
「へー、そうかい。ところであちらのとんがり頭のにいさんはいい飲みっぷりだねえ。ペースが早いや。」
「え?…ちょっといんげんどじょう。しいのみ君大丈夫なの。なんだか目が座ってきたわよ。」
「あっ、やばい。『暴れ弾丸』になっちゃったよ。ああなったしいのみ君には近づかない方がいいかもしれないなあ。」
「『暴れ弾丸』ってあの伝説の酒乱男のこと?あれはしいのみ君のことだったの?」
「知らなかったの? それにしても酒乱男はひどいなあ。」
「ひどくないわよ。店で暴れたあげくマスターを丸坊主にして、血糊で頭にやらしい絵を描いちゃったんでしょう。」
「うわさってすごいもんだね。その店のマスターはもともとやかん頭だったし、血じゃなくて赤い絵の具だよ。あの絵はすごかったなあ。でもそのお陰で絵を見に客がわんさか来たんだぜ。」
「ど、どんな絵だったんですかい?」
いんげんどじようはそっと店主の耳もとで囁いた。
「ひえー。……俺も描いてもらおうかなあ。」
マスターの悲鳴でこちらを向いたしいのみ君の顔は確かに恐かった。
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