いちごぼっくり物語

[その9]

 空は雲一つない快晴。
 いちごぼっくりはごきげんだ。
「私達の出発にふさわしい天気だわ。ねえ、いんげんどじょう、景気づけに尺八でも吹いてよ。」
 そこでいんげんどじょうは「旅の始まり」という曲を吹いた。
 なんとも盛り上がらないメロディーが延々と続いたところで……
 「もういいよ、それ。なんだか虚無僧の三人連れって気分になってきたわ。しいのみ君なんか唄って。」
 「うん、それじゃ僕、『平気な唄』というのを唄うよ。」

 僕は元気な旅人だ
 嵐やカミナリ怖くない
 遠い砂漠もへっちゃらだい
 お腹が空いても我慢する
 闇夜のカラスはちょと怖い
 おばけが出たら逃げちゃうぞ
 ……

 「あー、やめやめ。あんたの歌を聞いてると、これから碌でもないことばかり起きるんじゃないかって気分になるわ。やっぱり私が唄うしかないわねー。」
 そこで彼女は「旅はより道、この世は借りもの」という歌を唄った。

 旅はより道 帰り道。
 大きなカボチヤがころがって
 小さなねずみは逃げるけど
 どうせこの世は借りもので
 返すあてなどありゃしない
 着いたところが天国さ
 
 あたりにいちごぼっくりの大きな声が響き渡った。彼女の唄は声が大きいだけではなかった。
 上空約二十メートルを飛行中のほととぎすの親子が失速して落ちて行くのをいんげんどじょうは目撃した。
 彼は両耳を塞ぎながら、
『いちごぼっくりは旅の道連れとしては確かに頼もしいな。』と思った。
 


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