いちごぼっくり物語

[その7]

 いんげんどじょうは、真紅の身体を大きくくゆらせて悠々と泳ぐ,紅子の姿を思い浮かべていた。きらきら輝く鱗の一枚一枚が彼の頭をよぎっていく。
 ふと目をそらすと周りの木々が真っ赤に燃えている。
 『おお!紅子の赤が木々にまで !』……と思ったのは間違いで、それは西の空に今にも沈もうとしている真っ赤な夕日がすけて見えているのだった。
 『そう言えば仏蘭西のどこかの詩人が沈む夕日と一緒に何かが消えちゃって、永遠がどうとか言ってたっけなー。夕日と一緒に消えてなくなるってのも悪くないかもなー。』
 この時、いんげんどじょうの頭に「おひさまと共に消える詩」という曲想が浮かんだ。彼は苔むした大きな岩に腰掛けると、おもむろに尺八を取り出した。

 夕闇に閉ざされる頃、しみじみとした音色が森に響いた。近くの松の木で、聴き惚れたかみきり虫がうっかり地面に落ちる音がした。
 寂しい夕暮れだった。

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