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いちごぼっくりが旅に出ると言ってから五日たった。
いんげんどじょうは難しい顔をして歩いていた。谷間で見つけた真っ赤な花を、緋鯉の紅子にさりげなくわたすにはどうしたらよいか思案に暮れていたのだ。そんな訳で彼は、いちごぼっくりが目の前に来るまで気が付かなかった。
「あら、きれいな花ね。それって私の旅の餞別なの。」
「ち、ちがうよ。だいいち君は何時も旅に出ると言って、出たためしがないじゃないか。」
「ははーん、あんたそれ紅子にあげるつもりなんでしょ。あんた分ってないわねえ。紅子は何時も自分の赤さを自慢しているのよ。その紅子よりももっと赤い花をあげたって彼女が喜ぶ訳ないじゃないの。」
「そうかなー、そういうもんかなー。」
いんげんどじょうはがっくりと肩を落とした。(どじょうの肩が何処にあるかはまた別のお話。)
「ほんと、ほんと。私の言うことに間違いはないんだから。」
いちごぼっくりはそう言いながら、いんげんどじょうが大事そうに持っていた花を取り上げて自分の頭に飾ると、楽しそうに歩いて行ってしまった。
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