ゼロチーム
機種 アーケード ステージ数 6面
発売元 セイブ開発(日本システム) ライフ制 あり
開発元 セイブ開発 残機制 あり
発売日 1993年5月21日 コンティニュー あり
定価 パスワード なし
プレイ人数 1〜4人 難易度選択 あり
“アーケードアーカイブス”公式サイト(Switch/PS4)





 『ゼロチーム』は1993年にセイブ開発から発売されたアーケード用アクションゲームだ。セイブ開発といえば、縦スクロールシューティングゲームの傑作『雷電』シリーズで有名なメーカーだが、本作は同社唯一のベルトスクロールアクションゲームとなる。1990年の『雷電』が世界的なヒットとなった後、1992年にスポーツゲーム『セイブカップサッカー』でも成功を収めたセイブ開発は、1993年の『雷電II』に先立ち、本作『ゼロチーム』をリリースした。
 テクノスジャパンの『熱血硬派くにおくん』(1986年)、『ダブルドラゴン』(1987年)を始祖とするベルトスクロールアクションは、1989年にカプコンが発売した『ファイナルファイト』の大ヒットによってアーケードゲームの定番ジャンルとなり、90年代には各社から類似作品が続々とリリースされた。また、1990年にコナミから発売された『T.M.N.T.』の4人用筐体が海外でトップセールスを記録するなど、4人同時プレイを売りにしたタイトルも多かった。
 『ゼロチーム』もその中のひとつだが、本作の発売当時はベルトスクロールアクションも飽和気味で、カプコンの『ストリートファイターII』(1991年)に端を発する対戦格闘ブームが始まっていたこともあり、一般的な知名度は低い。インターネット上でもほとんど情報を見ないマイナー作品だが、セイブ開発らしい丁寧な作り込みが光る、隠れた名作だ。そして2020年、ハムスターからNintendo SwitchおよびPlayStation 4向け『アーケードアーカイブス』に初移植されたことで、ようやく日の目を見ることとなった。


 世界有数の財団、マクドゥエル。その創設者の孫娘であるドナ・マクドゥエル博士は、日本で発見された古い文献の中に不死の存在が記されていることを知り、研究を開始する。一方、ライバルであり共同研究を行っていたゲプラー博士は、己の欲望のためにドナ博士を誘拐、不死の秘密を手に入れようとするのだった。しかし、財団内で極秘裏に進んでいた計画があった。それは、法律が届かない犯罪のために政府と共同で作り上げた、超法規の組織、“ゼロチーム”である。事件を知ったゼロチームのメンバーは、ゲプラーの野望を食い止めるために立ち上がるのだった。

エース
主人公タイプのオーソドックスな性能。派手さはないが、攻撃も移動も平均的でスキが少ない。
スピード
動きが速い代わりに技は軽い。エースの色違いのようだが、ちゃんとグラフィックは描き分けられている。

スピン
高速ビンタが病みつきになる女性キャラ。空中投げなどアクロバティックな技が特徴。
ビッグオー
ゼロチームのリーダー。パワー最強だが動きは鈍い巨漢タイプ。投げやバックジャンプ攻撃(ダブルラリアット)が強い。

 プレイヤーは4人のキャラクターから選択でき、最大4人同時プレイが可能になっている。濃いめなテイストのキャラクターはアメコミヒーロー的ともいえるし、レッド、ブルー、グリーン、イエロー&ピンクとカラフルなコスチュームは、日本の「戦隊物」のようでもある。ただ正直言って、どれもカッコイイというよりは怪しい風体だし、個性的とも言い難いので、今ひとつキャラが立っていない点は本作のウィークポイントのひとつだろう。
 ただ、紅一点「スピン」のセクシーっぷりは非常に素晴らしい。ピンクのハイレグで、お尻丸出しのTバックというムチャクチャないでたちだが、本作をプレイした人なら、誰もが彼女を褒めるはずだ。その肉感的なヒップに、揺れるバストに、セイブ開発のデザイン力が結集されている(言い過ぎ)。


 『ゼロチーム』の操作系は、8方向レバーにアタックボタンとジャンプボタンというオーソドックスなものである。特徴的なアクションとしては、上方向にレバーを入れたまま連続で攻撃すると強力な「必殺拳」を放つ。これがどう見てもC社の昇龍拳(ないしはタイガーアッパーカット)そのまんまで笑いを誘う。また、アタックボタンとジャンプボタンを同時に押すと、ド派手な雷を落として周囲の敵を一掃する「雷神光撃」!! 何やら大げさな感じだが、要はメガクラッシュである。
 他社のベルトスクロールアクションに比べるとキャラクターのサイズは小さめながら、グラフィックパターンが豊富で、キビキビとよく動く。身長の3倍近くまで飛び上がる必殺拳。ズガガガガッと小気味よい多段ヒット。左右だけでなく、奥にも手前にも投げられる大量のオブジェクト。レスポンスもよく、操作しているだけで楽しい。
 プレイヤーだけでなく、ドラム缶にはまり込んでジタバタする敵、ウエスタン・ラリアットからウィーを決めるハンセンもどき、戦いに巻き込まれて逃げ惑う一般人など、とにかく見ていて飽きない。背景の描き込みも異常なほど細かく、『雷電』シリーズでも見られたセイブ開発の超絶グラフィックが炸裂している。
 なお本作では、敵の見た目はどれも普通の人間なのだが、倒すと例外なく爆発四散して死亡する。意味は分からないが、四方八方から襲いくる敵たちを拳ひとつで爆殺していく爽快感は最高だ。


 『ゼロチーム』は全6ステージ構成で、アメリカンな街並みからスタートし、敵を追って和風の古城を抜け、最後は孤島の洞窟に隠された寺院へ乗り込んでいく。各ステージのボスは侍、忍者、歌舞伎など、海外市場での受けを狙ったのか、勘違い日本的なキャラクターが多い。
 ステージ1はさすがに簡単だが、ベルトスクロールアクションの典型で、ステージ2のボスあたりから手ごわくなってくる。本作は固定の回復アイテムが少なく、ほぼランダムなので、運の要素も大きい。ステージクリアで体力が全回復しないのも厳しいところだ。特に最終ステージは、大量のザコが取り囲んでボコボコにしてくるにもかかわらず、運が悪いと回復アイテムが全然出ない、といったこともある。本作はキャラクターが小さい分、移動できる範囲も広いので、縦横無尽に動き回って被弾を避けつつ、敵を一方に固めていくのがコツといえるだろう。
 サウンドは作曲に山中礼一、効果音に『雷電』シリーズで有名な佐藤豪がクレジットされているが、佐藤もステージ1BGMやプレイヤー選択画面BGMなどの作曲を担当している。ベルトスクロールアクションのBGMといえば攻撃的でロック調の曲が多い中、『ゼロチーム』のBGMはマーチ調で、どこか牧歌的だ。アドレナリンが出る感じではないので好みが分かれるところだが、これは企画担当者からのオーダーで、冒険映画『インディ・ジョーンズ』のBGMを意識して作曲されたためだ。ちなみに、ボスの「うわぁ〜!!」というやられ声も佐藤の声である。


 一見すると地味な印象は否めない『ゼロチーム』だが、優れた操作性、緻密なグラフィック、練り込まれたゲームバランスなど、セイブ開発の高い技術力が発揮された良作である。『雷電』と同様、派手さはなくとも純粋なゲーム内容で勝負する、同社の制作姿勢が伝わってくる。ベルトスクロールアクションの王者といえばカプコンに違いないが、それらの作品とはまた一味違った魅力があり、数あるベルトスクロールアクションの中でも、マイ・フェイバリットになり得る一作だ。



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