(クリックで拡大表示)
鳥人戦隊ジェットマン
機種 ファミリーコンピュータ
発売元 エンジェル
開発元 ナツメ
発売日 1991年12月21日
定価 6,000円(別)
プレイ人数 1人プレイのみ
ステージ数 6面
ライフ制 あり
残機制 あり
コンティニュー 無限
パスワード あり
難易度選択 あり




 『鳥人戦隊ジェットマン』は、1991年にテレビ朝日系で放映された同名番組のファミコンゲーム化である。発売はバンダイグループのエンジェルだが、開発はナツメが担当している。
 本作のおよそ2か月前に発売された『特救指令ソルブレイン』も、本作と同じく開発ナツメ、発売エンジェルのキャラクターゲームだったが、こちらはナツメのオリジナル作品、NES版『シャッターハンド(Shatterhand)』をキャラだけ差し替えたものだった。それに対し本作は、最初から『鳥人戦隊ジェットマン』の純粋なキャラクターゲームとして企画された作品である。

もしかナツメが好きならば

 『特救指令ソルブレイン』すなわち『シャッターハンド』は傑作だったが、残念ながら『鳥人戦隊ジェットマン』は、それとは及びもつかないほどの駄作である。企画当初からの、キャラクターゲームとしての様々な制約が、本作をどうしようもなくつまらない作品にしてしまったのかもしれない。
 Aでジャンプ、Bで攻撃、STARTでスカイアタック(メガクラッシュ)と、特別なシステムは一切ない、超シンプルな横スクロールアクション。敵は同じようなものばかり出現し、どのステージにもこれといった仕掛けはない。短いうえに最初から最後までほとんど変化がなく、ひたすら淡々と進んでいく。ひどく出来の悪い『グリーンベレー』、『忍』、『ザ・ニンジャウォリアーズ』といったところだろうか。
 例え地味でも、バランスさえ良ければちゃんと遊べるのだが、『鳥人戦隊ジェットマン』の場合、敵の配置などもあまり練られた印象はなく、1匹1匹確実に仕留めていけば初見でも難なくオールクリアできてしまう。この原因には、「キャラクターゲームなので、誰でもクリアできるように」というバンダイからの意向があったとの話もあるが、それにしても簡単なゲームだ。一応、隠しでハードモードとベリーハードモードもあるが、単に自機の耐久力が低くなるだけで、ゲームの根本的なぬるさは変わらない。
 ステージの最後ではモードが切り替わり、巨大ロボット(グレートイカロス)とボスキャラ(カガミジゲンなどの次元獣)、デカキャラ同士の一騎打ちになるが、ここでもボスごとの戦略性などほとんどない。どのボスも、ひたすらガードして反撃、を繰り返すだけで簡単に勝ててしまう。対戦中のグラフィックもまるで人形劇のようでしょぼい。
 ただ、さすがナツメと言うべきか、操作性や動きの滑らかさに関しては最高級だ。走る、しゃがむ、小ジャンプ、大ジャンプ、あらゆる動作が軽快で、全くストレスを感じさせない。ソードでビシバシ斬ったり、ブラスターをガンガン撃ちこんだ時のヒット感も最高に気持ち良く、アクションゲームの基本、操作する楽しさは完璧と言っていい。それだけに、肝心のゲーム性が散漫にすぎることが残念でならない。
  それでも、『鳥人戦隊ジェットマン』は、ナツメファンにとっては絶対に外せない作品である。なぜなら、本作は最高のナツメ節が堪能できるからだ。タイトル画面で鳴る主題歌を除き、BGMは全て岩月博之氏によるゲームオリジナルの曲。そのどれもがかっこいい名曲で、はっきり言ってこのスカスカなゲーム内容にはもったいないくらいだ。特に、駆け抜けるようなラストエリアのBGMは、あまりに熱すぎて涙なしでは語れない。
 岩月氏は元コナミの水谷郁氏に師事していたという話があるが、コナミックかつヒロイック、そして「泣き」の入ったメロディは、ナツメファミコン作品の中でも最高峰と言っていい。本当に、これを聴くためだけに『鳥人戦隊ジェットマン』をプレイする価値は十分にある。

わたくしがジェントルマンに?

 「キャラクターゲーム」としての『鳥人戦隊ジェットマン』はどうだろうか。一応、原作の設定を意識した、必要最低限の演出は押さえられている。
 タイトル画面では、「オー ジェットー ジェットー ジェットマーン」とテレビと同じ主題歌が流れる。また、ボス戦の前にはグレートイカロスの合体シーン(ハリケーンスクラム)がカットインされ、この部分はなかなか気合いが入っている。
 キャラクターは5人から選べ、レッド、ブラックはブリンガーソード(剣)、イエローはウイングガントレット(パンチ)、ホワイト、ブルーはバードブラスター(銃)と、それぞれ原作にあった武器を使用する。ただ、説明書には「ステージにあったキャラクターを選ぼう」などと書いてあるものの、そんな必要は全くない。
 このように、ファミコン版『鳥人戦隊ジェットマン』の演出は、東映スーパー戦隊シリーズの「お約束」を無難に取り入れた、正直言って新鮮さも何もない内容だ。だが、実際にテレビで放映された『鳥人戦隊ジェットマン』という番組は、東映スーパー戦隊シリーズの長い歴史の中でも、最大級の異色作であり、野心作であり、傑作だったということは書いておきたい。
 脚本の井上敏樹、監督の雨宮慶太をメインスタッフに据えた『鳥人戦隊ジェットマン』は、従来のヒーロー番組ではタブーとされていた、戦隊内での本格的な恋愛劇を取り入れたことで、俗に「戦うトレンディドラマ」などと呼ばれている。だがそうした、「これ本当に子供番組か?」と言いたくなるほどリアルで、時にはハードな人物描写が、視聴者の自然な感情移入を促し、ヒーロー番組の核となる「愛」、「友情」、「ヒロイズム」といった、ともすれば陳腐になりがちなカタルシスを、「子供だまし」ではない、より説得力のあるものに昇華させたのだ。
 各回のストーリーにもまるで大河ドラマのような連続性があり、全51話を費やして描かれた、魅力的な登場人物達のドラマが集束する最終回は、あふれ出る涙を抑えきれないほど感動的だ。ちなみに脚本の井上敏樹は、『鳥人戦隊ジェットマン』の後も、特撮史上に残るカルト傑作『超光戦士シャンゼリオン』、そして『仮面ライダーアギト』、現在放映中の『仮面ライダー555(ファイズ)』でもメインライターとして活躍し、独特の井上ワールドを展開させている。
 『鳥人戦隊ジェットマン』は今日の目で見ても、明らかに「子供番組」の域を超えており、ひとつの独創的なドラマとして、大人の鑑賞にも十分堪えうる傑作だ。ゲームはお世辞にも良い出来とは言えないが、原作はビデオを全巻借りて観ても絶対に損はない。

リエエエエェェェーーー!!!!

 ナツメというメーカーの素晴らしい点として、制作した作品のほとんどが水準以上の出来で、いわゆる「外れ」がほとんどない、ということが挙げられる。だが、残念ながら『鳥人戦隊ジェットマン』は、その数少ない例外と言えるだろう。
 アクションゲームとしては、見るべき点は皆無に等しい。だが唯一、その素晴らしいBGMだけは、後世に伝える価値がある。ただそれだけのためにも、『鳥人戦隊ジェットマン』がナツメ作品であったということを、ファンは知っておく必要がある。



Main