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ファイナルコマンド 赤い要塞
機種 ファミコンディスクシステム
発売元 コナミ
開発元 コナミ
発売日 1988年5月2日
定価 3,300円(税別)
プレイ人数 2人同時プレイ可能
ステージ数 5面
ライフ制 なし
残機制 あり
コンティニュー 3回
パスワード なし
難易度選択 なし
リンク 海外版『JACKAL(ジャッカル)』




ストーリー

 19XX年のある日、緑に包まれた平和な国の政府に不吉な情報が飛び込んできた。そこには独裁政治をくわだてている他国が軍事関係の重要人物を人質として誘拐したことを告げていた。政府本部は人質救出と敵本部を壊滅するために、過酷な訓練を受けた4人の男たちからなる特殊部隊「ブラッディ・ローズ」を編成し、送り込んだ。鍛えぬいた肉体と精神力で闘い、与えられた武器を駆使して突き進むファイナルコマンドが、平和な日々を一刻も早く取り戻すために立ち上がる。

武装ジープを駆り、捕虜を救出せよ

 『ファイナルコマンド 赤い要塞』は、コナミが1986年10月にリリースしたアーケードゲーム『特殊部隊ジャッカル』を、ファミコンディスクシステム用にアレンジ移植した作品である。トップビューの任意スクロールシューティングで、プレイヤーはジープを操作し、敵の軍隊を撃破していく。戦場を舞台とした男くさい設定、ノリのいい音楽など、実に往年のコナミらしいゲームといえるだろう。
 本作の特徴は、ただ敵を倒すだけでなく、「捕虜の救出」という要素がある点だ。ステージ中の収容所を破壊すると、味方の捕虜が数人飛び出してくる。彼らをジープに乗せ、ステージ後半のヘリポートまで運ぶと、高得点を獲得できるのだ。ただし途中でジープが破壊されると、乗っていた捕虜も失われてしまう。また、捕虜をヘリに乗せるときは所定の位置に停車する必要があるため、その間は敵の攻撃をしのがなければならない。
 また、ユニークな点として、プレイヤーはジープなので、敵の歩兵は接触するだけでひき殺すことができる。今日でこそ、『グランド・セフト・オート』のように、車で人をバンバンはねるゲームは珍しくないが、当時のゲームとしては十分に刺激的な設定だった。
 本作はSNKの『TANK』と、ブローダーバンドの『チョップリフター』をミックスしたようなゲームだ。『TANK』は戦車を操作し、敵を蹴散らしていくトップビューのシューティング。カプコンの『戦場の狼』と同系統で、同じSNKの『怒』にもつながる作品である。そして『チョップリフター』はヘリを操作し、「捕虜の救出」をフィーチャーした横スクロールシューティングだ。ちなみに、『戦場の狼』、『TANK』、『チョップリフター』はいずれも、『特殊部隊ジャッカル』の前年に当たる1985年にアーケードでヒットしたタイトルである。

ヤツらは、地獄を連れてくる

 プレイヤーの武器はマシンガンと手榴弾の2種類で、どちらも弾数制限はない。マシンガンは常に前方に発射されるが、手榴弾は8方向に発射できる。マシンガンは威力も弱いので、手榴弾をメインに使用していくことになる。また、光る捕虜をジープに乗せると、手榴弾がミサイルにパワーアップする。
 このミサイルによる攻撃が、メチャクチャ爽快なのだ。まず何といっても効果音がいい。グワラッと発射され、コッッ!! と爆発する。ゲームをプレイ中は、グワラッ、コッッ!! グワラッ、コッッ!! この快音が1、2秒おきに繰り返されることになるだろう。さらにパワーアップすると、ミサイルが2方向炸裂弾、4方向炸裂弾になる。これを敵の密集に撃ち込めば、グワラッ、コココッッ!! と一気に誘爆する。この破壊のカタルシスは、数あるファミコンアクションの中でも、最高に爽快な瞬間のひとつと言っても過言ではない。ゲーム自体の難度もそれほど高くないので、頭を空っぽにして、気楽に楽しむことができる。

バージョンによる違い

 ファミコン版『ファイナルコマンド 赤い要塞』は、アーケード版『特殊部隊ジャッカル』の移植だが、その内容はかなり異なっている。例えばアーケード版は、ジープに捕虜を8人までしか乗せられないという制限があったが、ファミコン版では何人でも乗せることができる。また、アーケード版にはステージの区切りがなく、ボスも最終ステージにしか存在しなかったが、ファミコン版はステージごとに新たにボスが追加され、オリジナルの最終ボスも登場する。その中には「口からホーミングを撃つ石像」や、「全長数十メートルの火炎放射戦車」など、奇想天外で意表をつくものもあった。
 全体として、かなり難度が高く、さらに淡々と進んでいく印象だったアーケード版を、取っつきやすく、メリハリのある内容にアレンジしたのがファミコン版といえるだろう。グラフィックなどの性能面ではアーケード版に劣るものの、ゲームとしての遊びやすさやアイデアの面では2倍も3倍も上回っており、実に当時のコナミらしい好移植だった。
 とはいえ、実はファミコン版『ファイナルコマンド 赤い要塞』も、残念ながら完全な内容ではない。4ヵ月後の1988年9月に海外で発売されたNES版『JACKAL(ジャッカル)』と比較すると、さまざまな面でダウングレードされていたのだ。まず、NES版は全6ステージだが、ファミコン版はそのうちステージ1とステージ6の前半が丸々カットされている。さらにNES版はアーケード版『特殊部隊ジャッカル』と同様、画面が左右にもスクロールするが、ファミコン版は上下にしかスクロールしないため、ステージそのものの面積もNES版の方が広くなっている。また、NES版はステージ間にデモや全体マップといった演出が挿入されるが、これもファミコン版には一切ない。これらの変更は、NES版がロムカセットでの供給であったのに対し、ファミコン版は容量の少ないディスクカードでのみ発売されたことによる。
 それから20年以上経った2009年7月、携帯電話用アプリゲームとして、『ファイナルコマンド 赤い要塞』が配信された。こちらの内容はNES版『JACKAL』に準拠したもので、ファミコン版でカットされたステージやデモもちゃんと収録されている。その上で、グラフィックはアーケード版『特殊部隊ジャッカル』に近いものに描き直されており、すべてのバージョンのいいところを合わせた、まさに「完全版」である。ただ残念ながら、結局のところ携帯電話用なので、画面サイズや操作性など、実際のプレイアビリティーは低いと言わざるを得ない。総合的に見た場合、最も完成度が高いのは、NES版『JACKAL』ということになるだろう。
 さまざまなバージョンが存在する本作だが、どれもヒットしたとは言い難く、一般的な知名度は低い。しかし、戦場アクションの名作『グリーンベレー』や『魂斗羅』と同様、80年代のコナミらしさがほとばしる、隠れた良作といえるだろう。



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