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アルマナの奇跡
機種 ファミコンディスクシステム
発売元 コナミ
開発元 コナミ
発売日 1987年8月11日
定価 2,980円(税別)
プレイ人数 1人プレイのみ
ステージ数 6面
ライフ制 あり
残機制 あり
コンティニュー 3回
パスワード なし
難易度選択 なし




コナミディスクシステムの隠れた名作

 『アルマナの奇跡』は、1987年にコナミから発売された横スクロールアクションゲームだ。当時のコナミはファミコンディスクシステムで精力的にオリジナルタイトルをリリースしていた。中でも『悪魔城ドラキュラ』は大ヒットし、ロムカセット版や海外版も発売されたが、それ以外にも『エスパードリーム』、『愛戦士ニコル』、『迷宮寺院ダババ』、『ファルシオン』など、ディスクシステム専用で、しかも日本以外の国では発売されなかった、隠れた名作がたくさんある。『アルマナの奇跡』もそのひとつで、地味でマイナーな作品だが、実にコナミらしい良質なアクションである。
 パッケージイラストを見ればすぐに分かる通り、本作のモチーフは当時の大ヒット映画『インディ・ジョーンズ』だ。ストーリーも1984年公開の『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』ほぼそのままで、フェドーラ帽をかぶったインディそっくりの主人公カイトが、村から盗まれた神秘の石「アルマナ」を取り戻すため、邪悪なダダ教に立ち向かう。そして峡谷や洞窟、神殿といった秘境を舞台に、岩山や絶壁をロープ一本で登り、イカダでの激流下りや、鉱山をトロッコで爆走したりと、まさにインディさながらの大冒険が繰り広げられるのだ。

『ロックンロープ』の大幅リメイク

 『アルマナの奇跡』の見た目は『インディ・ジョーンズ』そのものだが、ゲーム性の面では、ロープを地形に引っかけて登っていく、いわゆるワイヤーアクションが最大の特徴だ。この本作の操作系は、コナミの1983年のアーケードゲーム『ロックンロープ』から着想を得ている。『ロックンロープ』は固定画面のコミカルなアクションゲームで、キャラクターやステージ構成もまったく別物だが、その核であるロープアクションを生かして全面的にリメイクしたのが、『アルマナの奇跡』といえる。
 またファミコンのワイヤーアクションといえば、『アルマナの奇跡』の翌年、1988年にカプコンが発売した『ヒットラーの復活』の方が有名だが、実はどちらの作品も起源は同じである。1983年、コナミで『ロックンロープ』を開発した藤原得郎は、その後カプコンに移籍し、1987年に『ロックンロープ』のシステムを発展させたアーケードゲーム『トップシークレット』を開発した。そして1988年、『トップシークレット』のファミコン移植版として発売されたのが『ヒットラーの復活』である。そうした意味ではまさに、『アルマナの奇跡』と『ヒットラーの復活』は、偉大なクリエイター・藤原得郎を父とする異母兄弟と考えられる。そして藤原が確立したワイヤーアクションというジャンルは、『海腹川背』など後の作品にも大きな影響を与えることとなったのだ。
 『アルマナの奇跡』では『ロックンロープ』と同様、プレイヤーは自分の斜め上にロープを投げて地形に引っかけ、自由に登り降りすることができる。ジャンプしてロープを投げることも可能だが、『ヒットラーの復活』のようなロープにぶら下がっての振り子運動はできない。また、プレイヤーは6種類の武器をいつでも選択でき、これらを状況に応じて使い分けるのがポイントだ。ただし武器はすべて弾数制限があり、しかも敵はジェネレーターから無限にわいてくるため、敵を倒すよりもロープアクションをうまく使い、かわして進むことが重要になる。このあたりは『ロックンロープ』の精神を受け継いでいるといえるだろう。

独特のロープアクション

 他のワイヤーアクションゲームの例に漏れず、『アルマナの奇跡』も操作がマニアックで、慣れるまでは取っつきにくいゲームだ。特に本作はロープの挙動にクセがあり、例えば高い足場にロープを引っかけたい場合、ジャンプの頂点でロープを投げても届かない。これはロープが伸び切るまでにかなりタイムラグがあるためで、正解はまずロープを投げ、その後ロープが伸びている間にジャンプすれば、より高い位置に引っかけることができる。また、本作はプレイヤーのジャンプ力が異様に低いため、上下するリフトに飛び乗るだけでも苦労する。この場合、まず横の壁にロープを引っかけて登り、ロープの途中から十字ボタン左右+ジャンプボタンで飛び降りることで、リフトに乗ることができる。
 最初は苦労するが、こうしたコツをつかめば、自在にロープを操り、サクサクと進めるようになる。また、もうひとつ有名なテクニックとして、壁にロープを引っかけてジャンプすると、プレイヤーが壁の中に入り込んでしまうことがある。これを利用すると壁をすり抜けて、とんでもないショートカットができてしまったりもするのだ。限りなくバグっぽい技なのだが、面白いので開発者も確信犯的に仕様として残していると思われる。そういう意味では、結構作りが大味な部分もある作品なのだが、結果的にはやり込むほど新しいルートが発見できたり、ゲームの懐の広さにつながっている。

山下絹代による素晴らしいサウンド

 山下絹代と村田幸史が手がけた音楽は、『アルマナの奇跡』の最も素晴らしい点のひとつだ。曲数は多くないが、当時のコナミらしいノリのよいメロディーに、ディスクシステムの拡張音源を使用し、重厚な音色を実現している。メインコンポーザーの山下絹代は、コナミで『悪魔城ドラキュラ』や『エスパードリーム』など多くの作品に参加した後、フリーランスとしてカプコンの『ロックマンX3』、ナツメの『メダロット』シリーズなどを手がけている。特に本作では、作曲、サウンドプログラム、効果音のすべてを担当し、彼女の代表作のひとつといえる。ただし本作の効果音の多くは、『グーニーズ』や『火の鳥 鳳凰編 我王の冒険』など、他のファミコン作品の流用だ。村田幸史はコナミで『ドラゴンスクロール 甦りし魔竜』や『がんばれゴエモン2』などに参加した後、水口エンジニアリングでゲームボーイの『ロックマンワールド3』、『ロックマンワールド4』、『バイオニックコマンドー』などを手がけているが、『アルマナの奇跡』では1曲しか採用されず、それ以外の曲はすべてボツになってしまった。
 『アルマナの奇跡』は決して大作ではないものの、古きよきコナミの魅力が詰まった、とても楽しめる作品だ。また、『ヒットラーの復活』という傑作の影に隠れてしまってはいるが、ファミコンワイヤーアクションの先駆者としても、意義深いタイトルといえるだろう。



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