METAL WOLF CHAOS
メタルウルフカオス




 合衆国副大統領がクーデターを起こしたので、合衆国大統領がパワードスーツを装着して立ち向かう、というゲームである。今何て言った?

 とにかく「魂斗羅系」が好きなヤツは黙ってやっとけ! ブーストダッシュで飛び回り、両手の銃で撃ちまくる、壊しまくる。家を壊すぜ、橋を壊すぜ、ビルを壊すぜ、東(NY)へ西(シスコ)へ。走る、走る、アメリカ合衆国大統領。
 実在する街を舞台に、もう目に見えるモノは何でも壊せる! ってなくらい大量のオブジェクト。そして「超」がつくほどド派手な爆破エフェクト。Xboxだから出来た、Xbox以外では不可能だったゲーム。
 特別に新しいシステムは何もない。現行コンシューマー最高のハードスペックを使って、「ただひたすらブッ壊すだけ」のゲームを作り上げたのである。

 それだけに、大味なゲームではある。武器はマシンガン、バズーカを始め100種類以上あるが、特に細かく使い分ける必要はない。自分の一番気持ちイイ武器を使えばいい。とりあえずクリアしたいなら、とにかく各カテゴリで最も高い武器を買うのだ。戦車やビルがまるで紙キレのようだ。
 Xboxかつフロム・ソフトウェアということで、一見コアなゲームに見えるかもしれないが、ただクリアするだけならかように簡単なゲームなので、気軽に楽しみたい人にもオススメだ。もちろん攻略を極めたい人には、高難度モードやスコアアタックも用意されている。

 言ってしまえば本作は、「戦う大統領」というコンセプトを思いついた時点で、すでに勝っている。この圧倒的な説得力を持つ決めゼリフを思いついた時点で、すでに勝利している。
「大統領? 大統領! 大統領、ムチャです!」
「ムチャではない! 何故なら、私は――アメリカ合衆国大統領だからだーーー!!!」
 アメリカ合衆国大統領だからだーーー!!! ダーッ!

 本作の骨子である、大統領マイケル・ウィルソンと副大統領リチャード・ホークの対決は、まさにジョジョ第1部のジョナサンとDIOのようだ。と言うか実際、露骨なジョジョネタもいくつかあり、作者がジョジョファンであることは想像に難くない。
 また、「マイコーーーッ!!」「リチャーーード!!」の絶叫合戦は、『メタルギアソリッド』の「スネェーーーク!!」「リキッドォーーーッ!!」を彷彿とさせる。「リチャード」というネーミングには、叫んだ時の「語感の良さ」も間違いなく計算に入っているだろう。リチャーーード!! リッチャーーーーード!!!

 大統領(プレイヤー)の美人秘書ジョディ・クロフォードは、本作の影の主役と言える。ゲーム中、実際にしゃべっているのはほとんど彼女である。常に冷静沈着でありながら、ウィットの効いたユーモアも忘れない。大統領がボケ、秘書がツッコむ。アメリカは大丈夫か。

 ハリソン・フォード主演の映画『エアフォース・ワン』に、何とも言えぬ違和感・嫌悪感を感じた人は多いだろう(筆者にとっては胸熱く拳握る、心の映画だが)。だが本作は、日本人から見た「そんなアメリカ」を、礼賛するでもなく、強烈に皮肉るでもなく、誰もが「スカッとする」「バカバカしいと笑える」娯楽作に仕上げている。その匙加減が見事だ。



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