コナミ戦場アクションの系譜



グリーンベレー
1985/10

 『グリーンベレー』は、戦場を舞台にした横スクロールアクションという点で、『魂斗羅』シリーズの原点といえる。スタッフも『魂斗羅』のデザイナー、中村健吾が参加している。プレイヤーの武器は基本的にナイフ1本だけで、火炎放射器やロケットランチャーなどの特殊武器には回数制限がある。ジャンプボタンはなく、レバーを上に入れることでジャンプする。戦争物ではあるが、敵との間合いを測りながら、近距離攻撃で1人ずつ倒していくゲーム性は、アイレムの格闘ゲーム『スパルタンX』などに近い。
 『グリーンベレー』が発売された当時は冷戦末期であり、明言されてはいないものの、本作の敵がソ連であることは明白だ。『グリーンベレー』の海外タイトル『Rush'n Attack(ラッシャンアタック)』は、『Russian Attack(ロシアンアタック)』をもじったものである。当時の世相をゲームに反映させたコナミの思惑通り、本作は米国を中心に爆発的なヒットを記録した。1987年には、ステージやBGMを大幅にアレンジしたファミコン版も発売されている。



特殊部隊ジャッカル
1986/10

 『特殊部隊ジャッカル』は、トップビューの任意スクロールシューティングで、プレイヤーはジープを操作し、敵の軍隊を撃破していく。ただ敵を倒すだけでなく、収容所から捕虜を救出し、ジープに乗せてヘリポートまで運ぶと、高得点を獲得できる。SNKの『TANK』のように、敵の歩兵は車両で接触するだけでひき殺すことができ、また捕虜の救出をフィーチャーしている点は、ブローダーバンドの『チョップリフター』をほうふつとさせる。8方向に射撃できる操作や2人同時プレイ、そしてプログラマーの辻本英之とデザイナーの中村健吾が参加している点など、翌年の『魂斗羅』に通じる要素も備えている。
 1988年、ファミコンディスクシステムに『ファイナルコマンド 赤い要塞』のタイトルでアレンジ移植され、新しいボスやギミックも多数追加されている。ただし、海外NES版『JACKAL』と比較すると、ステージや演出がカットされていたり、画面の左右スクロールがなくなっていたりと、かなりダウングレードされていた。



魂斗羅(コントラ)
1987/02

 『魂斗羅』は、プレイヤーが『ランボー』と『コマンドー』、敵が『エイリアン』と、当時の大ヒット映画から着想を得ている。またタイトルは、1986年のイラン・コントラ事件で話題となった、ニカラグアの反政府ゲリラ「コントラ」から来ている。
 『魂斗羅』は『グリーンベレー』の流れをくむ横スクロールアクションだが、2人同時プレイおよび、8方向に射撃できるという本格的なシューティング要素を取り入れていた。また、同社のシューティングゲーム『沙羅曼蛇』さながらに、ステージによって横、縦、3Dと、スクロールの方向が切り替わる点も大きな特徴だった。3D面は、コナミの『がんばれゴエモン! からくり道中』や、UPLの『ぺんぎんくんWARS』を参考にしている。
 プログラマーの岡本覚と辻本英之、デザイナーの中村健吾らが中心となって開発した『魂斗羅』は、映画のように目まぐるしい展開と、爽快なゲーム性で人気を獲得。以後20年以上も続く看板シリーズの始まりとなった。



スーパー魂斗羅
1988/01

 『魂斗羅』の続編で、グラフィックおよびサウンドが格段に進歩している。前作の3D面は廃止され、代わりにカプコンの『戦場の狼』や、SNKの『怒』のようなトップビュー面が追加された。前作よりも『エイリアン』色を前面に押し出しているのも特徴である。また、前作は1周エンドだったが、本作は国内版に限り2周エンドとなっており、2周目は非常に難しいことで有名だった。
 前作スタッフから、岡本覚は同時期に開発されていた『A-JAX』に回り、辻本英之が本作のディレクションを務めた。中村健吾は、本作と『A-JAX』両方のデザインを担当。余談だが本作の最終ボスは、辻本と中村が関わった『バトランティス』の最終ボスによく似ている。
 『魂斗羅』シリーズは原点であるアーケード版よりも、後のコンシューマー版で評価されたタイトルである。本作とほぼ同時期に発売されたファミコン版『魂斗羅』が世界中で大ヒットし、以後10作以上にわたるシリーズ作品は、すべてコンシューマーで発売されている。



餓流禍(ガルカ)
1988/09

 『餓流禍』は、『沙羅曼蛇』、『魂斗羅』に続くコナミ第3の当て字タイトルである。『魂斗羅』の舞台も「ガルガ諸島」という名前だったが、ネパールの「グルカ兵」が由来と思われる。
 同社『A-JAX』で搭載されたVRAM回転・拡大・縮小機能を使用し、画面奥へと進んでいく疑似3Dのアクションシューティング。プレイヤーは2人とも『ランボー』そっくりで、まさに『魂斗羅』の3D面だけを取り出して発展させたような作品である。ただし、『魂斗羅』のスタッフは本作には関わっておらず、『沙羅曼蛇』や『魔獣の王国』でデザイナーを務めた櫻井潤が参加している。
 熱いゲームではあるが、射程の短いショットや厳しい時間制限などに加え、グラフィックの見にくさから来る理不尽な死も多く、難度は高かった。しかも3周しないとエンディングが見られないという厳しさが語り草になっている(ちなみに「実は映画だった」というオチ)。なお、1面BGMが同社『フラックアタック』最終面BGMのアレンジになっていることも有名。



M.I.A.
1989/02

 ベトナムを舞台に、M.I.A.(Missing In Action=戦闘中行方不明)となった捕虜を救出するのが目的の横スクロールアクション。設定上のつながりはないが、本作は『グリーンベレー』の完全なリメイクであり、基本武器のナイフ、レバーによるジャンプをはじめ、プレイヤーのぎこちない動きや、ドラムのみのメインBGMに至るまで、主要な特徴をすべて受け継いでいる。一方、グラフィックやサウンドは大幅に強化され、2人同時プレイや特殊武器の切り替えボタンも追加された。最終面は、救出した捕虜をヘリポートまで援護するという展開になっており、捕虜が全滅するとゲームオーバーになってしまう。ちなみに海外版では、偶数ステージはスクロール方向が反対(左)になっている。
 ベトナムのM.I.A.を題材としたストーリーは、映画『ランボー/怒りの脱出』に酷似しており、ソ連軍を倒す『グリーンベレー』同様、アメリカ人受けを狙った設定である。だが、4年前のゲームを焼き直した内容は当時の基準から見ると地味すぎ、ヒットしたとは言い難い。



エイリアンズ
1990/03

 映画『エイリアン2』のゲーム化だが、タイトルは原題の方の『ALIENS(エイリアンズ)』。本作はディレクションを岡本覚、デザインを中村健吾が務めており、『魂斗羅』のスタッフがついに本物の『エイリアン』のゲームを作ったことになる。映画を忠実に再現するだけでなく、本作オリジナルのエイリアンも多数登場する。
 画面手前と奥にも軸移動できるベルトフロア型のアクションシューティングで、銃がメインの『ファイナルファイト』というイメージ。『魂斗羅』さながらの多彩なショットが登場し、ジャンプの代わりにしゃがみ撃ちボタンがある。2人同時プレイ可能で、1Pはリプリー、2Pはヒックスを操作する。パワーローダーに乗る場面や、画面奥に向かって攻撃するボス戦もある。
 なお海外版のみ、1面と2面の後に、装甲車で通路を進む高速3D面が存在する。映画に登場した少女・ニュートを救出するのが目的だが、国内版ではこの3D面をはじめ、ニュートが登場するシーンはすべて存在しない。



サンセットライダーズ
1991/11

 西部劇をモチーフにした、横スクロールのアクションシューティング。『魂斗羅』、『スーパー魂斗羅』のプログラマー、辻本英之がディレクションを務めた本作は、8方向に撃ちまくる操作をはじめ、『魂斗羅』のシステムをそのまま西部劇に移し替えたような作品である。
 専用筐体では4人同時プレイが可能で、馬に乗っての銃撃戦やボスとの一騎打ちなど、プレイヤーを飽きさせないさまざまな演出も盛り込まれている。生き生きとしたキャラクターたちに加え、ゲームバランスも優れており、非常に丁寧に作られた作品であった。
 1990年に発売した『T.M.N.T.』の4人用筐体が、海外では半年間で2万5千台も売れるほどのヒットとなったため、当時のコナミは海外をターゲットに、4人同時プレイ可能な作品を積極的にリリースしていた。『サンセットライダーズ』もそのひとつである。日本ではマイナーな作品だが、海外では1992年にメガドライブ(GENESIS)、1993年にスーパーファミコン(SNES)にも移植された。



G.I.ジョー
1992/04

 原作は米国ハスブロ社のアクションフィギュア。同時期の『T.M.N.T.』、『ザ・シンプソンズ』、『X-MEN』などと同様、米版権物とタイアップし、4人同時プレイを売りにした作品である。
 画面奥へ進んでいく擬似3Dアクションシューティングで、櫻井潤がディレクションを務めた本作は、明らかに『餓流禍』の流れをくんでいる。ただし、ショットの射程制限や任意スクロールなど、『餓流禍』でストレス要因となっていた要素を徹底的に廃除。弾消し可能なボムは余るほど出現し、スピーディーな展開、派手な爆発と相まって、抜群の爽快感を得ることができた。やや大味ながら楽しめる作品だったが、同時期にカプコンの『ストリートファイターIIダッシュ』が発売され、当時の格闘ゲーム人気に押されてしまった感は否めない。
 ゲーム中、随所でG.I.ジョーのかけ声「Yo, Joe!」が連呼されるなど、原作を意識したテンションの高い演出が秀逸。また1面BGMのメロディは、米国版アニメの主題歌である。



ミスティックウォリアーズ
1993/02

 辻本英之がディレクションを務めた『ミスティックウォリアーズ』は、『サンセットライダーズ』の精神的な後継作だ。舞台を西部劇から忍者物に移してはいるが、『サンセットライダーズ』のシステムをほぼそのまま踏襲している。
 本作も海外を狙った4人用筐体が売りで、世界観も「勘違いニッポン」を意図的に演出した作品である。とても忍者には見えない奇天烈なキャラクターや、「テンプゥラ」「ウドォン」といった意味不明な片言ボイスが笑いを誘う。
 ゲーム性の面では、『サンセットライダーズ』の操作系に近接攻撃が加わり、銃撃戦と格闘の両方を楽しむことができる。映画的なストーリー展開も強化され、アーケードで続いた『魂斗羅』系ゲームの到達点というべき作品だ。ただ日本での出回りは少なく、家庭用にも移植されていないため、コナミアーケードの中でも最もマイナーな作品のひとつである。『ガイアポリス』とのカップリングでサントラCDが発売されており、音楽的な評価は高い。



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