グラディウスIII&IV〜復活の神話〜



 アーケードゲームのコンシューマー移植作で、「業務用完全移植のアーケードモードと、家庭用にバランスを再調整したアレンジモードの、2種類を収録!」ということを売りにしているソフトは数多い。
 だが、PS2版『グラディウスIII&IV〜復活の神話〜』に収録されている『グラディウスIII』も、実はそれに当てはまるタイトルだということを知っている人は、あまり多くないだろう。なにしろソフトのパッケージや宣伝を見ても、そんな記述はどこにもないのだから。

 よく知られている通り、アーケード版『グラディウスIII』は、シリーズ中でも群を抜く高難度で有名な作品だった。そして、その難しさの大きな要因のひとつとして、「敵および敵弾の異様に大きな当たり判定」がある。
 たとえば有名なザコ敵「ザブ」の場合、水色:見た目のグラフィック、赤色:実際の当たり判定とすると、


 こんな感じなのである(PS2版の「HI-SCORE TRY」モードを1周することで開放される「HIT DISP」をONにすれば、実際に上図のような当たり判定を表示させることができる)。ザブに近づくだけで、見た目上は明らかに当たっていないのに、いきなり殺されてしまうのだ。
 このほかにもアーケード版『グラディウスIII』には、ボスの撃ってくるレーザーが見た目の何倍も太かったり、壁に近づいただけで空中爆発したりと、さまざまな理不尽判定が存在する。当時のマニアたちは、これらもすべて計算に入れたうえで攻略パターンを構築し、必死の思いでエンディングまで到達したのだ。

 そしてPS2版『グラディウスIII』も、これらの当たり判定を忠実に再現している。ただしそれはあくまで、難易度「NORMAL」以上でプレイしたときの話。ここで難易度を「EASY」に下げると、なんとこれらの当たり判定が、見た目どおりの大きさに修正されるのである。これは取扱説明書にも、どこにも書かれていない。

 この隠れたバランス調整により、理不尽な当たり判定で殺されることはなくなり、アーケード版の開発者が本来意図していたであろう内容が再現されている。また「EASY」なら、回数限定で「コナミコマンド」(フルパワーアップ)も使えるので、アーケード版の「1回死んだら終わり」的なキツさも軽減されている。この難易度「EASY」こそ、万人が楽しめる(というのは言いすぎかもしれないが……)『グラディウスIII』《完全版》と言っていいだろう。

 ただ不思議なもので、アーケード版を極めたプレイヤーにとっては、適正な当たり判定の『グラディウスIII』は、どうしてもスリルが足りないというか、物足りなさを感じてしまうのも事実である。何より、あの理不尽な難しさを乗り越えてこそ、「俺はあの『グラディウスIII』をクリアしたのだ!」と胸を張って言える、という気持ちもある。だからそういう人はポリシーを持って、「NORMAL」をプレイすればよい。

 ともかく、PS2版『グラディウスIII&IV〜復活の神話〜』は、アーケード版の完全移植のみを謳ってはいるが、実質的には完全移植モード(「NORMAL」)と、バランスを再調整したアレンジモード(「EASY」)の2種類が収録されていると言っていい。
 本作の移植に対する素晴らしいこだわりは、アーケード版『グラディウスIII』の(半ば事故のような形で生まれた)カリスマ性を尊重しつつ、「本来はこうあるべきだった」理想形をも現実のものとしている。

 アーケード版『グラディウスIII』はその荒削りさから、激しくプレイヤーを選ぶ作品になってしまったが、ゲーム性・ステージ・サウンドといった各要素は、紛れもなく最高だった。だから未体験の人は、今こそPS2版を手にとり、その魅力に触れてほしい(定価1,890円!)。『グラディウス』、『沙羅曼蛇』、『グラディウスII』を凌ぐ、まさに「神話」と呼ぶにふさわしい感動が、そこにはある。



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