リターン・オブ・双截龍 真のストーリー



 元々『リターン・オブ・双截龍』には、製品版にはない様々な演出シーンや、ステージトラップが多数用意されていた。だが、諸般の事情で急にマスターアップが早まったことにより、そのほとんどが無残にもバッサリとカットされてしまった。
 以下に公開するのは、本作のプランナーを務めた海老沼 宗樹氏による、本来企画されていたストーリーの概要である。同じく未使用となってしまった曲を含めた全サウンドスコアや、ロムには残っている未使用グラフィック集と合わせて、描かれることのなかった真の『リターン・オブ・双截龍』を、あなた自身の中で思い浮かべてみて欲しい。



ストーリー
 物語の流れの初期プロットは、格闘家の失踪事件を追って、マリアンが謎の組織シャドーウォリアーズを捜査しているところから始まります。マリアンの職業については、アメリカから届いていた様々な資料の中にテレビアニメ版の『ダブルドラゴン』がありまして、その設定から婦人警官になっています(パトカーと警官服のマリアンのドット絵はロムには入っていますが、画面には出ません)。

 組織の魔の手が、ついにリー兄弟の身辺の武術仲間にまで伸びたことから、リー兄弟が動きだします。そしてステージ間の演出で、だんだんにシャドーウォリアーズのボスが何者か、アジトがどこにあるのかが明らかになっていきます。
 演出は基本的には、ボス戦前とボス戦後にリー兄弟とボスキャラの顔の絵を表示させて会話させる予定でした。ドット絵は大きい顔と口パクと目パチを用意していました(ボスの登場時の通常顔と戦闘後のやられ顔も、絵のデータはロムに入っています。テキストも!)。

 ラスボスのデュークも、初めは顔変え・色変えで2人出して、“もう一つのダブルドラゴン”として双截拳同士の同門対決! にするという案がありました。デューク兄弟はリー兄弟の幼友達で武術の修練仲間、という設定だったのですが、だんだんにネタ自体が縮小して、デュークはピンで出すのが精一杯になり、技も数が減ったので双截拳ではなく新しくオリジナルにして、派手にしてしか登場させられませんでした。

ステージ1 ラスベガス
 各ステージともに、扉が開いてキャラが入ったり出たりするオートアクションでつなぐ部分はほとんど作ってません! 絵の素材はあるのですが残念でした。
 ステージ1から見ると、エレベーターのガラスを蹴破って乗り移るあたりが中途半端で無理矢理フタされています(クラッシュの絵も描いてあったのに!)。

ステージ2 エアポート
 まずベルトコンベアーが不規則なリズムで動く予定で、巻き込まれたら一発死だったのですが、そのプログラムごとなくなりました。ベルトコンベアーは止まったままで、落下地帯も落下しません!(ただの螺旋通路になってしまいました)。それと滑走路には階段があり、飛行機に乗り込んでからフライトになる予定でした。

ステージ3 チャイナタウン
 三重の塔の中の最上階にチェンが2人待ち構えていて、「我らこそチャイナタウンのダブルドラゴン! チェン・ロン・フーとチェン・ロン・ピョウだ。どちらが真のダブルドラゴンか勝負しろ!」というようなセリフを言います。製品版では塔の中でなく、なぜかバルコニーで戦っています。

ステージ4 ゴールデンゲートブリッジ
 製品版では、トレーラーの後部から落下できないように、スクロールしなくなっています! また、キャラの演出関係が一番中途半端な面になってしまいました。

 予定では、ステージ3のチャイナタウンのデューク道場の最後にマリアンが登場し、走り出すトレーラーを発見してパトカーで追跡! その途中で集団に襲われ拉致されます。
 マリアン拉致後に再びトレーラーのバトル画面へ戻り、トレーラーはクラッシュ! そこでシャドーウォリアーズの総帥デュークに遭遇し、幼友達のデュークがボスであることを知ります。デュークの付近にはマリアンのパトカーだけが残されており、マリアンが連れ去られたことを演出する予定でした。ここでデュークとの会話があります。
 「デューク! 俺だビリー・リーだ。幼い頃ともにすごした……」
 「フッ。昔のことなど覚えておらんわ! 女も貴様らも余計なことを嗅ぎまわりすぎたようだな。ここからは生きて帰さんぞ!」
 というようなことを告げられてマクガイアが暴れだし、デュークとその軍団は退散! マクガイアも途中で退散! ジェフを倒してステージ5のスラム街が始まります(ここでAC版『DD1』の1面の曲が鳴るわけです)。

ステージ5 スラム街
 ビルの階段を登って扉に入ると、中は工場が横3画面分ありました。予定ではここでマクガイアが再び戦って再度逃げ、それを追ってビルの裏まで降りていく流れでした。

ステージ6 森林
 森林の先のつり橋がバラバラに壊れて落下し、下には川が流れていて滝があり、その滝の水の裏側に鋼鉄の扉があってアジトの入口になる予定でした。ボスのカーレムはこの扉から出現させるはずでした。

ステージ7 デュークのアジト
 まずエレベーターの左右は見えない壁ではなく、落下するようになっていました。そしてエレベーターの行き着く先の画面は、奥を三角飛びで上に進む画面になるはずでした。上へ進むと大広間ですが、横へ進むとスタートエリアにザップされて、やり直しさせられる予定でした。
 大広間でデュークを登場させて決着させ、マリアンを救出するのですが、デュークの実体から邪悪な影(『DD2』の自分の影のような色変え)が現れて、扉のほうへ逃げていきます。マリアンにデュークをまかせて、邪悪な影を倒すため、さらに扉の奥へと進みます。

 長い通路の中で登場する敵は全て、『DD2』の自分の分身のように影の姿で登場します。最終フロアの奥と手前は炎が燃える予定でした。デュークの邪悪な影はさらに分身をして増殖しながら、リー兄弟を苦しめます。
 「我を消せばデュークの命も絶つことになるのだぞ。お前は自分の友人を自らの拳で殺しても良いというのか! ダブルドラゴンよ。それが真の武術家か!」
 「貴様を倒さなければ、デュークはまた過ちを繰り返してしまう!」
 ここで最後の曲がかかります。

エンディング
 デュークの邪悪な影は火の海に消え絶命。どこからともなく、デュークの魂がビリー達に語りかけます。
 「俺は、もはや煩悩と殺戮の世界で自分自身を制御できなくなっていた。邪悪に染まり暗黒の世界に落ちきる前に止めてくれて感謝するよ。それから、お前達とのたくさんの思い出は忘れない。ありがとうビリー、ジミー。さようなら……」
 安らかな顔でデュークは息をひきとり、最後はデュークの墓標を立てて祈りを捧げます。拳と掌を合わせる「拳手」をとり、幼少の思い出に浸るビリーの頬にひとすじの涙がこぼれ落ちて……。

RETURN OF DOUBLE DRAGON

THE END






※この文章は海老沼 宗樹様の個人的なご厚意により寄稿していただいたものです。ありがとうございました。なお、文章の無断転載はご遠慮願います。

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