レビュー



 『魂斗羅Dual Spirits』を開発したのはアメリカのデベロッパー、WayForward Technologiesである。『コントラ・レガシー・オブ・ウォー』や『コントラ・アドベンチャー』など、過去に海外のAppaloosa Interactiveが開発した魂斗羅作品はいずれも出来が悪かったので、不安を感じるユーザーも多いだろう。
 だが、ここでハッキリ言っておこう。そんな心配はまったく無用だ。もし、「『魂斗羅 Dual Spirits』は日本のファミコン版スタッフが再結集して作った!」あるいは、「『魂斗羅 Dual Spirits』はトレジャーが作った!」などと言われたとしても(上で述べたように、実際はまったく違う)、きっと信じてしまうだろう。それほどまでに本作は、昔ながらの“魂斗羅らしさ”、そして職人的な作り込みに満ちている。

 『魂斗羅 Dual Spirits』はその名の通り、主に初期の3作(『魂斗羅』、『スーパー魂斗羅』、『魂斗羅スピリッツ』)を思わせる内容で展開される。ある意味、どこかで見たようなシーンの連続なので、『魂斗羅スピリッツ』で初めてミサイル渡りを見たときのようなインパクトはないかもしれない。だが魂斗羅ファンであれば、「懐かしい!」「今回はそう来たか!」など、ニヤニヤが止まらないだろう。
 『魂斗羅 Dual Spirits』には、いい意味で“同人作品”のような匂いがある。本当に魂斗羅が好きなスタッフが、ニヤニヤしながら同好の士(ユーザー)の反応をうかがっている感じなのだ。

 とは言え『魂斗羅 Dual Spirits』は、ユーザーのノスタルジーを喚起することだけに頼った、安易な作品ではない。『魂斗羅 Dual Spirits』のコンセプトは明確で、「DSの2画面を使ったゲームプレイ」、その一点にほぼ集約される。すべてのステージ、すべてのボスが、2画面を生かすことを前提にデザインされており、見た目やシチュエーションの目新しさよりも、2画面によって初めて可能になったアイデアで、ユーザーを驚かせるのが本作の狙いだ。
 上下2画面をブチ抜きで使い、上画面からも下画面からも敵の弾が飛んでくる。一見ムチャクチャな仕様だが、丁寧なマップデザインとバランス調整によって、慣れれば違和感なく楽しむことができる。もちろん、まれに上画面と下画面の間に隠れた敵に不意打ちを食らい、「ええっ!?」と叫んでしまうこともある。だが、「2画面ブチ抜き!!」というファーストインパクトと大味感こそが、まさに“魂斗羅らしさ”ではないだろうか? 魂斗羅は決して模範的な“優等生”ではなく、型破りで愛すべき“風雲児”であるべきだ。
 例えば『ダライアス』をプレイして、「横長の画面が見にくい」「画面の継ぎ目が……」などと言ったとしたら? それは野暮というものではないか。

 ゲームの難易度はかなり高い。イージーモードは、集中して臨めば大概の人がクリアできるだろうが、ノーマルモードは丹念なパターン化が必須で、ハードモードではほぼ完璧な操作が要求される。得点による1UPが多いのが、せめてもの救いだ。
 『魂斗羅 Dual Spirits』が難しい理由のひとつに、近作の『真魂斗羅』や『ネオコントラ』と違い、ミスすると持っていた武器が失われてしまうという点がある。そして初期装備の銃は、初期のファミコン版と同様、手連射かつ低威力の豆鉄砲だ。そのため、ある程度残機に余裕があっても、一度のミスでゴロゴロと死んでしまうことがよくある。「ここでは絶対に死ねない!」という緊張感は、久々のものだ。

 また、『魂斗羅 Dual Spirits』の大きな特徴として、『魂斗羅スピリッツ』以降の作品で顕著だった“ボスラッシュ主体”の展開から、“無限に沸くザコとの戦い”に回帰した点が挙げられる。海外では“ラン・アンド・ガン(Run and Gun)”と呼ばれる、走りまくり、撃ちまくる快感が存分に味わえるのだ。右から左から、上から下から突進してくるザコエイリアンの群れを、スプレッドガンの連射で一掃していく感覚は、まさにファミコン時代の魂斗羅原体験を思い起こさせるだろう。

 ゲームを熱く盛り上げるサウンドも素晴らしい。『魂斗羅 Dual Spirits』の音楽を担当したJake Kaufman(通称virt)氏は、個人でファミコンBGMのアレンジを発表するほどのマニアであり、今回の作品にはまさにうってつけの人材と言えるだろう。
 特に本作のステージ1BGMは、virt氏が2002年に「いかにも“昔の魂斗羅っぽい”曲」として発表したオリジナルのチップチューン“Vile Red Falcon”を、DS用にアレンジしたものだ。「もし、ファミコンで魂斗羅の新作が出たとしたら、こんな曲だろ!?」言わば、そんな一ファンの空想から生まれた曲が、本当に最新作のオープニングを飾ってしまったのである。
 その他のBGMも、ファミコンやスーパーファミコン時代のコナミサウンドを思わせるキャッチーな曲調で、過去の魂斗羅作品のフレーズもふんだんに織り込まれている。さらに、敵に撃ち込んでいるときの効果音は、ファミコン版と同じ「チュインチュイン」という小気味よい音そのままなのだ。

 まだまだ書くべきことはたくさんあるが、とにかく2Dアクションゲームとしての完成度の高さ、そして開発スタッフの魂斗羅愛は、特筆すべきものがある。魂斗羅ファンはもちろんのこと、ファミコン版やスーパーファミコン版に熱中した人々は、何が何でもプレイすべきタイトルと言えるだろう。



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