ならず者戦闘部隊
ブラッディウルフ
機種 PCエンジンHuCARD
発売元 データイースト
開発元 データイースト
発売日 1989年9月1日
定価 6,500円(別)
プレイ人数 1人プレイのみ

■ゲームの進め方

 大統領救出作戦に名乗りをあげたキミは、勇敢にも単身出発する…。
 大統領が囚われている極秘基地にたどりつくまでにキミは、敵の前線基地、ジャングル、河川などを通り抜け、待ち受ける敵を撃破していかなければならない。
 大統領とともに囚われている捕虜は、必ず助け出しながら進もう。なぜなら、彼らは有力なアイテム・情報を持っているからだ。
 戦いはいつ終えるともなく続く…。
嵐のような敵の攻撃をくぐり抜け、無事に大統領を救出せよ!
 ――そして、そこでキミを待っている運命は…?!
ステージ数 8面
ライフ制 あり
残機制 なし
コンティニュー 5回
パスワード なし
難易度選択 なし
全セリフ集 オープニング
STAGE 1
STAGE 2
STAGE 3
STAGE 4
STAGE 5
STAGE 6
STAGE 7
STAGE 8
エンディング



 PCエンジン版『ならず者戦闘部隊 ブラッディウルフ』(以下『ブラッディウルフ』)は、1988年にアーケードで発売された同名作品の移植版だ。ただし家庭用移植にあたり、アーケード版から大幅な追加要素が加えられ、ほとんどの面において原作を上回る出来になっている。
 『ブラッディウルフ』は、『戦場の狼』や『怒』タイプのトップビュー・戦場アクションシューティングで、同社の『ヘビーバレル』、『ミッドナイトレジスタンス』、『サンダーゾーン』等の流れを汲む作品と言える(ちなみに『サンダーゾーン』は、設定上の明確な繋がりはないが、本作と同じ名前の主人公が登場する)。屈強な男達が、戦車や、ヘリや、潜水艦や、カルノフ似や、カーネル似(ヘビーバレル所持。コブラ砲、ゴールデンガンでも可)に立ち向かう、暑苦しさ全開のアクション巨編だ。
 ゲームとしては、正直言って目新しい部分はあまり多くない。ジャンプができる点と、接近戦でナイフが使用できる点が、このジャンルではやや珍しい程度だ。谷間をジャンプで飛び越えていく場面や、ナイフ1本で戦う場面があったりと、ゲーム展開の中にもうまく取り込まれている。また、捕虜を助けて情報やアイテムを入手したり、バイクに乗って走り回るなど、細かいアイデアも色々と用意されている。
 だが本作最大の魅力は何と言っても、デコならではの独特の演出にある。ジャンプが「デコジャンプ(デコゲー特有の、物理法則を無視したジャンプ)」だったり、敵兵が天を仰ぎながら死んでいったり、回転しながらスッ飛んでいったり、まあ色々と怪しいんだが、やはり最も特筆すべきは主人公や敵の「セリフ回し」だろう。特に2面中ボス(火炎放射男)の「アツイゼ アツイゼェー アツクテ シヌゼェーッ!」は、元ネタの『北斗の拳』以上に、「デコゲー」を代表する不滅の名台詞として記憶されている。
 また、ゲームスタート時に上官が言い放つ「ワカッタカ!? ワカッタラ サッサトユケ!!」や、ボスの1人「KNIFE KILLER」の「ウヘヘヘ…ナイフデ タノシモウゼェー!」なども最高だ(KNIFE KILLERは「オチ」も最高)。セリフ自体の狂ったテンションもさることながら、表示が全てカタカナである点も、何とも言えぬおかしさを醸し出している。
 さらにPCエンジン版は、ストーリー部分がアーケード版よりも大幅にパワーアップされており、それが本作を単なる「佳作」から、語り継がれる「名作」へと押し上げている。PCエンジン版は、アーケード版にあった2人同時プレイができないので、ゲームスタート時にコードネーム「EAGLE」か「SNAKE」のどちらかを選択するのだが、キャラによってほとんど全てのセリフが変化する。例えばEAGLEでアイテムを入手すると、「パワフルシュリュウダンダ! コレハ ツカエルゼ!」と言って喜ぶが、SNAKEだと「……パワフルシュリュウダンカ」と言って喜ばない。
 だがこのへんは、あくまで枝葉の部分に過ぎない。PCエンジン版最大のサプライズは、物語の折り返し点で起こる。PCエンジン版はアーケード版と面構成が異なり、ゲーム開始後たった4面で、早くもアーケード版の最終面に来てしまう。そしてラスボスを倒し、大統領を救出したプレイヤーは、味方のヘリに乗って無事帰還……というのがアーケード版のエンディングなのだが、何とPCエンジン版では、プレイヤーはヘリに乗ることができず、大統領と引き換えに敵の捕虜になってしまう! そしてここで、最初に選ばなかったほうのキャラが新たなプレイヤーとなり、相棒の救出に向かうのだ! 何という大どんでん返し。今日の基準で見ても、あまりにドラマチックだ。
 そして真の最終面に到達した時、再び衝撃の展開がプレイヤーを襲う。やっとのことで再会した相棒はすでに洗脳され、敵の一員となってしまっていたのだ。そして始まる、狼VS狼の死闘……。果たして、その先に待ち受ける結末(エンディング)とは!?
 本作が今日でも多くの人々に愛されているのは、その素晴らしい演出はもちろんだが、それを支えるゲームバランスが絶妙であることが大きいだろう。難易度は高すぎず低すぎず、しっかりとした攻略性があり、誰でも痛快なアクションとドラマチックなストーリーを楽しめる。また、非常にテンポ良くシーンが切り替わるので、プレイヤーを飽きさせない。
 BGMもノリの良い名曲揃いだ。特に最終決戦で、1面BGMがリプライズされる演出は、熱いセリフ回し、ボスのカリスマ的な強さと相まって、最高に燃える。
 戦場アクションシューティングは数多いが、その中にあって『ブラッディウルフ』は、システムが斬新だとか、難易度が超高いとか、ゲーム的に突出した要素はない。だがその演出の妙にかけては、他に並ぶものがないと断言できる。これからも同様のジャンルが様々なメーカーから発売されるかもしれないが、全てにおいて本作を凌駕する作品というものは、決して生まれないだろう。なぜなら『ブラッディウルフ』は、還らざる80年代の思い出、データイースト株式会社にしか作れない――「デコゲー」だからだ。



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