2010とは
〜ファミコン史上最も過小評価されている傑作〜




 『2010 ストリートファイター』(以下『2010』)は、1990年にカプコンからファミコンで発売されたアクションゲームだ。タイトルに『ストリートファイター』の名を冠しているため、誰もが『ストリートファイターII』(以下『ストII』)のようなゲームを想像することだろう。だが本作には、リュウもケンも登場しない。それどころか本作は、1対1の対戦格闘ゲームでもない。
 ゲームの舞台は西暦2010年。主人公はサイボーグ警官「ケビン」。彼を操作し、様々な惑星(ステージ)で「パラサイト」と呼ばれる犯罪者を倒していくという、SF的世界観を持った横スクロールアクションとなっている。

 つまり本作は、ゲーム内容、ストーリー、全ての面において、いわゆる『ストリートファイター』シリーズとは全く無関係、全くの別物である。そのタイトルから想像される内容を期待すると、大きな肩透かしを食うことになるだろう。
 だが確実に言えるのは、『2010』は『ストリートファイター』の名を借りずとも、独立したひとつのゲームとして、間違いなくファミコンアクションゲーム史上最高レベルの傑作であるということだ。

●約20もの短いステージが連続する、ボス戦主体のスピーディーなゲーム展開!

●通常の縦横スクロール面に加え、固定画面、強制スクロール、ボスラッシュなど、バラエティに富んだステージ構成!

●滑らかなアニメーションで繰り出される、パンチ、キックをはじめ10種類以上のショットと、フリップジャンプ(バク宙)、ぶら下がり、はりつきなど多彩なアクション!

●歯ごたえのある難易度と、何回プレイしても飽きが来ない絶妙のランダム性!

●優れたグラフィックとサウンド、そしてゲームを盛り上げるハードなストーリーデモ!

 だが同時に『2010』は、ファミコンゲーム史上最も過小評価されている作品のひとつでもある。理由のひとつは、単に『ストリートファイター』という紛らわしい名を冠しているためだが、これはゲーム自体の素晴らしい完成度とは全く無関係だ。そしてもうひとつの理由は、その高い難易度のためである。

 確かに『2010』は、数あるファミコンゲームの中でも、最も難しいゲームのひとつであると言えるだろう。だがはっきり言っておくが、それはテストプレイやバランス調整のされていない、理不尽な高難度では断じてない。
 どんなに厳しいと思える場面にも必ず攻略法が存在し、何度も繰り返しプレイすれば、必ずエンディングに到達できるようになっている。さらにやり込めばノーミスクリアも安定してできる、絶妙なバランス調整がなされている。決して「クリア不可能なゲーム」などではない。

 『2010』は、豊富なアイデアと高い完成度に裏付けられた、数々の魅力にあふれている。それもそのはず、本作を作ったのは、『大魔界村』、『ロックマン』、『ヒットラーの復活』、『ストライダー飛竜』など、カプコンを代表する名作を手がけた精鋭スタッフ陣なのだ。『ストリートファイター』を名乗らずとも、十二分に勝負できるだけのオリジナリティを持っている。

 敷居の低いゲームではない。万人向けとは言えない。だが間違いなく傑作である。『2010』をクリアできる人々の中には、本作をベストのアクションゲームに挙げる人も少なくない。その評価が決して誇張でないことは、実際にあなた自身の手で確かめて欲しい。



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