「1面から高難度」挑戦的な難易度曲線

 大抵のゲームは、「序盤はゲームや操作に慣れるよう簡単に、そして終盤に向け徐々に難しく」という作りになっている。ステージとプレイ時間が進むにつれ、難易度が緩やかな曲線を描くように上がっていく、これが理想的な難易度曲線と言われている。

 だが『2010』は違う。一番最初の面から、容赦なく難しい。しかも操作が非常にテクニカルだったり、ゲームシステムがかなり特殊であったりするにもかかわらず、だ。
 なので初めてプレイすると、操作に慣れる間もなく、何をしたら良いのかもよくわからないうちに敵の猛攻を受け、問答無用で瞬殺される。要するに「操作やコツは死にながら覚えろ」というわけなのだが、これにほとんどのプレイヤーは我慢できず、最初の面で投げ出してしまうことになる。

 だが、この最初の壁を苦労しながらも乗り越え、2面、3面と進んでいくと、どんどんバラエティに富んだ面が出てきて、難しくても先が見たくなってくる。そうして頑張ってプレイを続けているうちに自然と操作にも慣れてきて、テクニカルで多彩な攻撃を使い分け、スピーディーで華麗なアクションを駆使する楽しみ――他のゲームでは味わえない、『2010』ならではの楽しみ――を得ることができるようになってくる。

 そしてある日、以前死ぬほど苦労し「こんなの何度やってもできねーよ!」などと思っていた場面が、今日はサクッとクリアできるようになっていることに驚くのである。ここまで来れば、もう完全に『2010』にハマってしまうはずだ。自身のスキルアップが目に見えてわかるようになってくるので、プレイそのものが快感になるのである。
 最終的には、何度も何度もコンティニューを重ね、何時間もかけてクリアした『2010』が、ものの30分ほどで、しかも鼻歌混じりでノーミスクリアできてしまうようになってしまう。何と言う快感だ!!

 最初から完全にプレイヤーを突き放し、あえてバランスを厳しめに設定している『2010』。こうしたプレイヤーに媚びない、いわゆる硬派なゲームは、確かに好みが分かれる。本来は、投げ出してしまわない程度にプレイヤーを苦労させつつ、最後までプレイさせるのが、理想的な難易度曲線なのだろう。

 だが『2010』のように、ここまで確信犯的に最初の壁が高いと、これはもうカリスマだ。こいつはもう、「クリアできるものならクリアしてみろ!」と言っているのだ。そこに共鳴し、「やってやるぜ!」と挑戦意欲をかきたてられ、何度ゲームオーバーになろうとも諦めずにトライし続けた人にだけ、他のゲームでは味わえない、最高の達成感と征服感が与えられるのである。「俺はあの『2010』を制覇したのだッ!」と。

 そしてまた、ゲームを一通りクリアできるようになった時に、この難易度バランスの新たな価値がわかってくる。1面から難しい、気を抜くと余裕で死ねる。つまり何度プレイして腕を上げても、最初から最後までダレることなく、緊張感のあるプレイを楽しむことができるのだ。
 クリアするまでが「苦行」や「作業」で、一度エンディングを見たら二度とプレイしたくないようなゲームもある。だが『2010』は、「やればやるほど上手くなり、面白くなるゲーム」だ。極めて奥の深い、スルメのようなゲームなのである。



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