MICHILYN Webmaster's Review 1 

今どき、こんな園医っているだろうか?
〜NHKドラマ『私の青空』2000.4.22放映分を見て驚いたこと
(2000.4.24)


出勤時間によって見たり見なかったりしている、いわゆるNHK朝ドラ。今期(2000年4月期)の『私の青空』は、未婚の母を自ら選んだヒロインが、一人で子供を育てつつ働いていくという設定で、保育園の話なんかも出てくるようなので、多少関心を持ってストーリーの推移を追っていました。

が、先の土曜日(4/22)の放映を何気なく見ていて、ぶっ飛びました。

ヒロインは築地市場の氷屋さんで働き始めたのですが、ある時自分の商談の直前に保育園から電話が入り、子供がひきつけを起こしたといって呼び出されます。そして保育園のシーン。子供はもうケロッとしていて、とりあえず事なきを得ます。保育士が往診に来ていた園医に「もう大丈夫でしょうか?」
園医のセリフ、「お母さん見たら元気になっちゃったねー。もう大丈夫です。」「最近、あまり構ってあげていないってことはないですか? 自分に関心を向けてくれないと、病気になるってこともあるんですよ。」
ヒロイン、一瞬気まずそうに沈黙ののち、「はあ、仕事で忙しかったりとか、色々あったものですから...。」

ウソでしょー、と思わず声を出しましたよ私は。だってこんなヒドイ園医さんって今どきいますかね? 舞台は1994年頃みたいですけど、いつ保育園を取材したんでしょうか。

整理しましょう。

(1) 日頃構ってあげてないから病気になる? というのは単なる俗説ですし、少なくともひきつけとは何の関係もありません。しかも、働く親を支援すべき立場の園医がそんな決め付けをして親を(結果的にではあれ)追い詰めるなどというのは、かなり非現実的です。

(2) こんなことを言われて、親が反論できないのはともかく、保母さんもとい保育士さんが黙ってるもんでしょうか。そもそもこのドラマ、保育園のシーンですら保育士さんの存在が希薄で、そのこと自体ひどく現実離れしているのですが。

(3) 余談ながら、発熱の有無について一度も触れていないのは不自然な気がします。大体、保育園が保護者に連絡する一番の基準は発熱ですし、ひきつけの診察においても熱があるかどうかは重要な判断材料です(発熱を伴わない場合は、てんかんの可能性を考えて脳波検査をするらしいです)。

これらから推測できることは、(1)脚本家(内舘牧子)もスタッフも、保育園や小児科医の取材をろくに行わずに、知っている範囲の先入観で書いている、(2)その先入観には「働く親は子供を十分構ってやれない、だから子供にも影響が出る」という考えが含まれているらしい、ということです。

もちろん、保育園が働く親の側に立たないかのような書き方をすることが、保育園関係者の多くに失礼であることは言うまでもありません。しかも保育園でロケまでしてるんですから、このドラマのスタッフって一体何やってるんでしょうか。保育園は働く親の刺身のツマくらいに思っているのだとしか考えられません。

このドラマ、この先ヒロインは「給食のおばさん」になり、子供たちが日常食べているものを知って愕然とし、「家族の食卓」の大事さを説くようになる、というストーリーらしいんですが、上記のような先入観垂れ流しの姿勢では、また働く親たちの子育てに対する偏見を振りまいて、挙げ句に「やはり母親が家にいて作ったごはんが最高よね〜」なんてこと言い出すんじゃないでしょうか。

最後に一言、「ともかくみっちり取材してから書けよな〜。」ま、言ってもムダかな。

(end of memorandum)


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