「ぎ〜んよくつらね〜て〜」 調子外れの歌を口ずさみ飛行しているのは、扶桑海軍リバウ遣欧艦隊所属の、西沢義子飛曹長。 「ちょっと義子、無線入ってるわよ」 注意を促したのは、同僚の竹井醇子少尉である。 「へ、あ、ほんとだ」 それ以上どうすると言うこともなく、西沢飛曹長は鼻歌に切り替えただけだった。こちらも調子外れで。 竹井「それで、目標は見えた?」 西沢「うん、もう見えてる」 リバウ軍港周辺の高地で発見された、中型の陸上ネウロイは、戦力としては大きなものではなかったものの、 地形上陸軍のウィッチが進出しづらく、近辺を飛行中であった西沢飛曹長に、目標の撃破が命じられたのだった。 緒戦で重要な都市部をいくつか失ったとはいえ、オラーシャの広大な国土の大部分は手つかずのままで、 飛曹長の眼下には、のどかとも言える丘陵地帯が広がっている。 竹井「下からみんな見てるそうだから、がんばってね」 どうやら、このネウロイの第一発見者である、近隣の観測所のことをいっているらしい。 西沢「ん〜、了解」 飛曹長は背面降下から一直線に目標に向かう。 白い岩壁にへばりついた、クモのような姿のネウロイがみるみる近づいてくる。 ネウロイと高度を合わせると、機体を横にスライドさせながら、すれ違いざまにネウロイの脚を 射撃、たちまち二本を切断した。 バランスを崩し岩壁から崩れ落ちるネウロイが、無防備にコアのある胴体部をさらすと、 飛曹長は小さくロールし、正確にコアを打ち抜いた。降下を初めてわずか30秒、一航過中の出来事であった。 西沢「終わり〜」 竹井「お疲れ様、下の人たちも大喜びよ。まるで妖精みたいだったって」 西沢「妖精。わはは、それほどでも」 竹井「少しサービスしてあげたら」 西沢「うん」 まだこちらを見ているであろう、観測所から確認しやすいように位置を取り、飛曹長は 大空にループを描く。始点と終点がぴったりと合わさった華麗な飛行に、ひときわ大きな賞賛の声が 地上から上がったのだった。