[完全ネタバレ] 最初の110番通報での he/she の「うっかり口滑らし」はミステリの基本中の基本ネタ。また「唖のスケボー少年」が初めて登場するシーンでは、ショーン・ペンが「あいつは何考えてるか読めなくて気色悪い」みたいなことを言うが、実際に画面で見る少年は「愛らしい美少年」なので観客はショーン・ペンの台詞に引っ掛かりを感じてしまう。これは描写の有無&匙加減が作者の恣意に委ねられる小説では起こりえない齟齬である。 ● とはいえ本筋の部分では、おれはすっかり騙されてしまった。警察での最初の事情聴取でケビン・ベーコンがショーン・ペンに「おい、まさか。過去の借りを取り立てられたとか思ってんじゃないだろうな」とか言うとこで、よしっ、わかった! これは「スリーパーズ」ネタだ!と思ったのだ。親友に消えぬトラウマを(そして親友を救えなかった自分たちには消えぬ罪悪感を)もたらした犯人2人に、ショーン・ペンとケビン・ベーコンが長じて復讐したのだと。それが2人の「過去の秘密」なのだと。ラリー・フィシュバーンに昔の事件を尋ねられるとケビン・ベーコンが言葉を濁すのはそのため。別の場面で、ティム・ロビンスを連れ去った犯人たちは2人とも死んだ。1人は獄中で首を吊って…みたいなことを言うでしょ。だからショーン・ペンは前科者になるのを承知でワザと刑務所に入ったんだと。一人一殺で、もう1人のほうは新人警官時代のケビン・ベーコンが射殺して河に沈めたのだと。…大はずれ。 ● 次に、ショーン・ペンが娘のカレシを(付き合ってる事実も知らないのに)毛嫌いして「あの家の息子とだけは絶対に付き合うな」というシーンで、よしっ、わかった! これはハードボイルド・ミステリの定番中の定番──近親相姦ネタだ!とピンと来た。ショーン・ペンと「ただのレイ」の女房は不倫してて、そして出来たのが娘のカレシ。つまり2人は異母兄妹なのだ。後年、その事実を知った亭主との間で争いとなり、ショーン・ペンはただのレイ殺して河に沈めた。それ以来、家族には内緒でショーン・ペンは「息子」に仕送りを続けていた。ところが実の娘と実の息子が愛し合っていて、明日 駆け落ちするつもりだと、溺愛する娘の口から聞いたショーン・ペンは激情して…。これも大はずれ。アンタ加藤武@等々力警部か!>おれ。 でもあの展開でティム・ロビンスの「嘘」が、ショーン・ペン(あるいはその娘)の名誉を庇うための嘘じゃない…ってのは反則だよなあ。<負け惜しみ。