m a k e s h i F t
thEatricals2004.01.23
G2プロデュース #7
「止まれない12人」

2003/12/21 @ 全労災ホール スペース・ゼロ
1列12番

12月21日日曜日。夜。くもり。
この2ヶ月で早くも3回目のスペースゼロ。おまけに今年5本目のG2プロデュース作品。
当初行く予定だった日にスキーに行く用事をセットしたため、泣く泣くあきらめたこのお芝居でしたが、運良く追加公演が発売になり、急いで発売日に申し込んだところ見事に最前列をゲット。私には珍しくいい方向に転がりました。
会場に入ってまず驚いたのが、舞台となる列車が中央に設置されていたところです。
で、その列車のある個所を谷にして、座席が奥側と手前側にそれぞれ雛壇に並べられていました。
列車よりも手前側(列車の進行方向右手)の座席は数字で列が、奥側(同じく左手)の座席はアルファベットで列が表されています。私は1列目ですので、手前側ということになります。
客層は若い女性がメイン。男女比は3:7といったところです。
今回の作品は1998年に初演された作品の再演です。5年前の作品ながら、内容はほとんど改訂していないそうです。現に時速500Kmで走る電車は実用化されていませんし。

●パンフレット(A4版 32ページ 1500円)
表紙はチラシと同じデザインです。内容は脚本家・後藤、演出家・G2の挨拶、雷神号をデザインした綿谷へのインタビュー、各キャストへのインタビュー及びおすすめする鉄道に関する作品、電車はどのようにして走っているかのコラムなど。

●セット
ホールのほぼ中心に青を基調とした屋根のない列車「雷神号」がドカンと配置されています。
列車前方部にちょっとしたスペースが設けられており、その上部に運転席があります。運転席と車両は折畳式のはしごを使って行き来をする仕様です。
座席は5席×2列の計10席。列車の座席というよりも、ボックス型のソファに近い形状です。座席の左内側には数々のボタンが配置され(1号車はグリーン車という設定で、乗務員呼び出しボタンまであります)、右側の手すりには格納式のテーブルがあるという本格的な作りです。
座席の後部には2人がけのソファーと、荷物を置ける棚が設置されており、かなり洒落た作りになっています。また、そこから後部への自動ドアを抜けると、2両目へと向かう部分も軽いスペースになっており、電話も設置されています。

●ストーリー
鹿児島、青森間をわずか5時間で結ぶ夢の超特急「雷神号」。そのお披露目の日に500倍という確立で乗車券を手にした人々が集まってきた。情報番組のレポーターをしている安芸ゆうみ(奥野ミカ)はハンディサイズのビデオカメラを持って、1人で取材用のVTR撮影にいそしんでいた。それを目ざとく見つけた朝倉(岡田義徳)は必死にサインをねだるが、ゆうみは軽くあしらう。
いざ乗車の時間となり、1号車に乗り込む面々が続々と車両に乗ってくる。ゆうみは早速他の乗客にインタビューを試みようとするが、なかなかいいリアクションが帰ってこない。するとそこに再び朝倉が登場。同じ車両に乗ることができた奇跡をとうとうと語りながら、またもサインをねだる朝倉。そんな朝倉に辟易していたゆうみはまたも軽くあしらうのだった。
他の乗車した面々は以下の通り。「雷神号」に関する知識はマニア並みの少年・どんぐり(植本潤)、もの静かな男・坂本(関秀人)、ジュラルミンケースを大事に抱えた気弱そうな男・近藤(小須田康人)、東北弁を喋る地味な女・渡辺(神野美紀)、「雷神号」という名前を命名したコピーライター・大曽根(後藤ひろひと)、そして鉄道警察員を名乗る来巳(池田鉄洋)。
やがて雷神号は京都駅を通過。そこで酒に酔った男が乗務員である北川(曽世海児)に連れられて1号車に現れた。男の名前は野間(山内圭哉)。その出で立ちは白いスーツに身を包み、頭は後頭部に少しだけ残した状態で剃り上げられている。関西弁で喋るさまはどう見てもヤクザとしか思えない。しかし実はこの野間は「雷神号」の設計者。酒を飲むと別の人格が現れるという厄介な男なのであった。やがて「雷神号」は大阪駅に停車。ここでやたらとゴージャスな出で立ちの女・堀川(楠見薫)が乗り込んでくる。来巳は堀川の姿を見てなぜか色めき立つ。実は来巳は鉄道警察員でもなんでもなく、本当は詐欺師である。そして堀川も同業者。来巳は堀川を慌てて車両後部に連れ出すと、余計な手出しはするなと念を押す。堀川は分かったと返事はするのものの、油断ならない性質だということを来巳はよく知っていた。そんな来巳の目的は近藤の持つジュラルミンケース。あれだけ大事そうに抱えているならば、きっと金目のものが入っているだろうと踏んだのだ。そこへウルトラ警備隊の制服に身を包んだ男・キリヤマ(久ヶ沢徹)が現れた。キリヤマはウルトラ警備隊員になりきっており、意味不明な言動を繰り返す。乗客たちは何かのアトラクションなのだろうと判断した。
やがて乗客の中から財布がなくなったという人間が続発する。来巳が近藤のジュラルミンケースを奪うための準備としてあらかじめ数人の財布を抜き取っておいたからだ。それに気づいた乗客を静めるためという名目を用意し、来巳は鉄道警察員として他の乗客の荷物検査をはじめる。そして近藤のジュラルミンケースに掏っておいた財布を忍ばせ、近藤を犯人に仕立て上げ、ジュラルミンケースは証拠として横領するというのが来巳の考えた計画である。この計画は見事に成功する。しかし、ただ一つ誤算があった。ジュラルミンケースの中身は殺人ウィルスを身にたたえた蚊だったのである。
それを知りパニックになる乗客たち。慌てて1号車から逃げ出そうとドアを開けるが、目の前にはものすごい速さで後ろへと流れていく景色だけ。なんと「雷神号」はテロ組織の標的となり、1号車以外の車両は切り離されていたのだ。逃げ場を失い、さらにパニックが広がる。そんな中、遂に運転者が殺人蚊の餌食に。暴走を続ける「雷神号」と乗客たちの運命や如何に?

●感想
上演時間は約2時間。(19:00〜21:00)
初めての最前列だったわけですが、非常に首が疲れてしまいました。
というのもこのお芝居では列車内ですべてのストーリーが進むので、暗転も舞台転換もありません。ので、基本的に役者さんはずーっと出っ放しです。ストーリーが進む場所はその都度変化しますが、その場所以外でも役者さんはこっそり演技をしているんですね。メインストーリー部分は抑えておかなければいけないのでそこに気を取られがちになるのですが、そうやって油断していると他の役者さんがメイン以外の見えないところで面白いことをこっそりとしていたりするんです。そういうのもチェックし始めると舞台の端から端まで常時見ていなければいけません。しかし座席は最前列。目一杯視野を広げる努力をしても舞台のすべてを視界に収めることができません。結果、常時首が左右に動くことになるのです。当たり前といっちゃあ、当たり前の話ですけど。
ストーリーとしては、大王お得意のご都合主義満載の馬鹿馬鹿しいものです。覚めちゃったら面白くも何ともないかもしれませんが、そういうもんだと切り替えてしまえば笑うしかありません。
あと何よりも役者の力量に委ねられているお話でもあります。関さんの渋み、山内さんの凄み、池田さんの胡散臭さ、楠見さんのパワー、久ヶ沢さんのまじめなバカ加減などなど。
まあその割には、設定のせいか演出によるものか、決して限度を超えたバカ騒ぎは起こさない。その辺りが少し残念だと思いつつも、そうだったらそうでますます首を痛めていたかもしれません。

●役者
岡田義徳さん。ただうるさい能天気なやつという印象が強すぎて、ちょっと鼻についた感がありました。まあ他の曲者の中に埋もれないためにはうるさすぎるぐらいでも問題ないのかもしれませんが……。
植本潤さん。さすがに子供役には無理がありましたね。それに無理に裏声で通す必要もなかった気がします。子供を演じるのに重要なのは声だけではないと思います。
山内圭哉さん。登場シーンでのアドリブ満載の歌には笑わされました。奥野さんもツボに入っていたようでしたし。ただ、その後がちょっと大人しくなってしまっていたのが残念です。でもやっぱりあの髪型(と言っていいものか)はインパクトあるよなぁ。
楠見薫さん。力強い演技に心を惹かれました。ぐいぐいと引っ張っていく説得力が感じられる演技だったと思います。
池田鉄洋さん。いかにもな詐欺師役がしっくりきていました。後半一気に印象が薄くなるのは、仕方なしといったところでしょうか。
久ヶ沢徹さん。難しくもおいしい役で場内の笑いを一手に引き受けていた印象です。無表情で淡々と台詞をこなす姿は馬鹿馬鹿しくも見事でした。
神野美紀さん。蛹から蝶へと変身したときは観客の目を引きましたが、それ以降は単なる1登場人物といった感じ。地味な役どころだったので仕方ないのかもしれませんが、楠見さんとの絡みはもう少し見たかったですね。
曽世海児さん。役どころとしては山内さんと同じぐらいおいしい役だっと思います。見た目のギャップもあってうまくいってたと感じました。
奥野ミカさん。基本的に普通の人なので前面に出ている部分が多くても印象が薄いんですね。ていうか、これだけの役者に囲まれれば仕方ないか。
関秀人さん。静かな渋みの中に、燃え滾る情熱を垣間見せる熱演だったと思います。でも、何か作りすぎだよなぁっていう感想もあったりします。
小須田康人さん。見た目の印象が妙にぴったりで、すんなり入り込めました。その分、意外性があまり感じられなかったような。
後藤ひろひとさん。何気なく重要な役どころなんですけど、そんな感じが全然しない。さすがは大王!?


時速500Kmの疾走感 ★★★★☆


− 公演データ −

G2プロデュース #7
「止まれない12人」

2003/12/04〜2003/12/06@札幌メディアパーク・スピカホール
全席指定 札幌えんかん会員以外の限定鑑賞券2000円

2003/12/10〜2003/12/23@全労災ホール スペース・ゼロ
全席指定 前売5500円 当日5800円
2004/01/09〜2004/01/10@大野城まどかぴあ 大ホール(福岡)
全席指定 前売4500円 当日5000円
2004/01/12〜2004/01/18@MIDシアター(大阪)
全席指定 前売5500円 当日5800円
2004/01/22@NTTクレドホール(広島)
全席指定 前売5800円 当日6000円

- STAFF -
作:後藤ひろひと【Piper】 演出:G2
美術:綿谷登 照明:黒尾芳昭 音楽:佐藤史朗 音響:内藤勝博
スタイリスト:遠藤百合子 ヘアメイク:小島裕司 演出助手:若月理代
舞台監督:金子武男 演出部:網倉直樹、奥村亜紀、桑原理恵 照明操作:松本大介
宣伝美術:河野真一 制作:千葉博実、尾崎裕子、藤田早苗、安積智子
プロデューサー:大西規世子 製作総指揮:G2 主催・製作:ジーツープロデュース

- CAST -
岡田義徳/植本潤【花組芝居】/山内圭哉【Piper】
楠見薫/池田鉄洋【猫のホテル】/久ヶ沢徹【サモ・アリナンズ】
神野美紀/曽世海児【Studio Life】/奥野ミカ/小林浩司【Studio Life】
関秀人【立身出世劇場】/小須田康人/後藤ひろひと【Piper】
(声の出演)
三上市朗【劇団M.O.P.】
コング桑田【リリパット・アーミーII】
松永玲子【NYLON100℃】
 

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