m a k e s h i F t
thEatricals2003.12.19
拙者ムニエル
「HYPER DX寿姫」

2003/11/30 @ 全労済ホール スペース・ゼロ
11列7番

11月30日日曜日。くもり。
空は今にも泣き出しそうな雰囲気の空の下、今日も新宿へ。
拙者ムニエルの舞台を拝見するのは初めてであります。今回の舞台は再演らしいのですが、コアな演劇ファンにはたまらない客演を呼んでみんなで盛り上がろうという番外公演になっています。
劇場ロビーと舞台にはスクリーンが設けられ、エンドレスでプロモーションムービーが上映されていました。劇場内のでは今回執筆を手がけた4人の執筆風景なども見られてちょっと面白かったり。
カップルよりも同姓同士のグループが多い感じ。あと意外と年配の男性客も多かったです。それでも男女比は4:6ぐらいでしょうか。

●パンフレット
パンフレットの販売はありませんでしたが、Tシャツなどの販売はありました。

●セット
舞台後方にスクリーン。周りは赤地に中国っぽい炭字で「長貴富堂満玉」などと書かれていて、赤提灯なんかも吊り下げられて。左上には意味もなく天使の書き割り。舞台左手には大きな仁王の書き割り。右手は今作のタイトルを産気部ターザンのような人の書き割り。舞台中央にはでっかく「寿」の文字がかかれ、その文字を挟むように2段のひな壇。
客席(5列目あたり)の両サイドには唇とテレビの書き割りが置かれ、そこが役者の出入り口に。
客席中央の7〜9列目あたりいは小さな舞台が設置されていました。
お祭り的イメージの公演のせいか、統一性のないポップなセットでした。

●ストーリー
パチ子(伊藤修子)は夫(千代田信一)と売れないお笑いをやっていたが、あまりの面白くなさに観客から斧を投げられる始末。そんな生活に絶えられなくなったパチ子は夫を見限ろうとする。そこに現れた世界の幸せをつかさどるという寿姫(澤田育子)。寿姫はパチ子の夫に弓矢を渡し、寿姫のハートを射抜くチャンスを与える。見事射抜くことができればすばらしい幸せを手に入れることができるのだ。しかし挑戦は大失敗。パチ子はその場から走り去り、寿姫は落胆する。
いつまでたっても結婚相手を見つけようとしない寿姫に痺れを切らしたママ上(千葉雅子)はとある星から結婚相手候補(市川しんぺー)を連れてくる。しかしビジュアル的に気が向かない寿姫はきっぱりとお断り。新たな恋を求めてとある学校に潜入する。寿姫はそこで運命の人・若松(加藤啓)に出会い一目惚れ。しかし若松はなぜかそこにいたパチ子に恋をしてしまう。恋敗れた寿姫は傷心のあまり時空を飛び越えてしまった。

『色情寿姫』
時は平安時代。皇子であるエモのおおえの皇子(江本純子)は婚期を迎え、お嫁さん探しに余念がない。そして何人かの候補の中から選んだのは町田娘(まちだっこ)(町田マリー)。とそこにチェロを携えて現れた色情寿姫(澤田育子)。お互いに一目惚れをしてしまったエモのおおえの皇子と色情寿姫は毎日快楽を貪りあっていた。せっかくのチャンスを奪われた町田娘は腹の虫がおさまらない。刺客を持って寿姫の命を狙おうとするのであった。

再び舞台は現代。
若松は仕事もせずにパチ子との怠惰な生活を送っていた。そんな若松に苛立ちを覚えたパチ子は若松に仕事をしろと叱責する。若松は偶然出会ったパチ子の夫と共謀して、レンタルビデオ屋に延滞をしているビデオを返して欲しくば身代金をよこせと脅迫電話をかける。まんまと大金をせしめた若松であったが、突然パチ子の夫の顔がTSUTAYAのマークのようになってしまった。これは新種の病気であると判断した若松はパチ子の夫を救うため、医者になることを決める。

『天国への階段』
加藤助教授(加藤啓)は最近全く話をしてくれない村上教授(村上大樹)を回診中に無理やり呼び止める。加藤がマスコミに医学界のホープとして取り上げられていることに嫌悪感を抱いていた村上は、週刊誌の記事を取りあげて誹謗中傷を繰り返す。その言葉で頭に血が上ってしまった加藤は思わず村上に手を上げてしまった。
その後、学部長(中村まこと)は2人を呼び出し、院内で揉め事を起こしたことについて怒りをあらわにする。村上はいい気味だとばかりに加藤の悪口を並べるが、なぜか学部長は村上のことを戒める。なぜ加藤を殴ったのか、と。話が見えない村上は、事件の時に現場に一緒にいた市川医局員(市川しんぺー)に証言を求めるが、市川も村上が加藤を殴ったと証言する。そう、学部長と加藤は裏で手を結び、村上を病院から排除しようとしていたのだ。村上はこの策略に気づくが時既に遅し。精神異常者として精神病棟へと軟禁されてしまう。こうして教授へと上り詰めた加藤であったが、教授就任パーティの直前に突然倒れてしまう。原因はかなり重い心臓病。今すぐにも手術を施す必要がある。しかしこの手術を得意としていたのは追放された村上だったのである。急遽呼び戻された村上は倒れている加藤を見て……。

再び話は戻る。
紆余曲折の果て、寿姫への愛に気づいた若松は寿姫に告白をする。しかしなぜか寿姫の心はときめかない。実は寿姫にフラれた結婚相手候補が、フラれた腹いせに寿姫の心を奪い去ってしまったのだ。若松は寿姫の心を取り戻すべく、宇宙へと向かうことを決意する。若松は見事寿姫の心を取り戻すことができるのか? そして若松と寿姫の愛の行方は?

●感想
上演時間は途中で約10分の休憩時間を挟んで約3時間5分。(14:00〜17:05)
メインとなるお話の間に毛皮族の江本純子さん、猫のホテルの千葉雅子さん、ナイロン100℃のケラリーノ・サンドロヴィッチさんがそれぞれ脚本を担当したショートストーリーを織り交ぜた内容でありましたが、何かごちゃごちゃしていて、正直見づらかったです。いっそのこと全てバラバラのオムニバス形式にした方がよかったのではないかと思いました。
一応それぞれの作品の感想を言うと、毛皮族のはその独特の雰囲気に最初はちょっとひいてしまいました。他のお客さんのリアクションを見ている感じ、そういう人が多かったような気がします。ただストーリーが続くにつれ、その雰囲気にも慣れて割と楽しめました。ただ癖は相当強い感じです。猫のホテルの作品は堅実な作りで安心して見られました。まあシナリオとしては実にありがちな内容なのですけど、雑多としたメインストーリーをキュッと引き締めてくれていたと思います。ケラさん脚本のは正直つまんなかったです。もうちょっと演出に力を入れればもっと面白くなっていたはず。ケラさんが演出していたらどうなっていたのかすごく気になりました。そしてメインとなる拙者ムニエルのパートなんですが、一言で言えばグダグダ感で一杯。笑えたのはアドリブ部分とハプニング部分ばかり。うーん。
上演時間を長くすることの弊害ばかりが目についてしまった印象でした。

●役者
澤田育子さん。部分部分で演技の波が激しかった気がします。もう少し集中して欲しいです。
加藤啓さん。この方も演技のムラが目立ちました。登場シーンのテンションが持続できればよかったのですが。
村上大樹さん。つっこみキャラとしては弱かったような。店長役は割としっくりきていましたが。
千葉雅子さん。特徴のない役どころながら、その存在感は見事でした。
中村まことさん。悪ノリが過ぎている感もありましたが、この舞台ではそれぐらいでちょうどいいのかも。
江本純子さん。パワーがすごいです。レビューシーン嫌いじゃないです。毛皮族も一度見に行かなくては。
町田マリーさん。登場シーンが少なくてもったいなかった気がします。江本さんにおいしいところもっていかれていた気も。


構成の練りが足りない ★★☆☆☆


− 公演データ −

拙者ムニエル
「HYPER DX寿姫」

2003/11/27〜2003/12/02@全労済ホール スペース・ゼロ
全席指定 前売3500円 当日3800円

- STAFF -
構成・演出:村上大樹
脚本:村上大樹
『天国への階段』千葉雅子【猫のホテル】
毛皮歌舞伎『欲情寿姫』江本純子【毛皮族】
『行け行け!宇宙船!!』ケラリーノ・サンドロヴィッチ【ナイロン100℃】
美術:秋山光洋 映像:上田大樹(iNSTANT WiFE) 照明:斎藤真一郎(A・P・S)
音響:尾林真理 衣裳:松本夏記(ミシンロックス) 小道具:桜井 徹、松浦孝行
舞台監督:村岡 晋、清沢伸也 宣伝美術:吉井花英、寺部智英
宣伝写真:中野愛子 演出助手:向峠江見、端 由紀子、保坂葉
舞台監督助手:藤林美樹 製作助手:宍戸円 制作:内藤利恵子 製作:ナイロビ
助成:芸術文化振興基金 主催:ナイロビ、TOKYO FM

- CAST -
澤田育子/加藤啓
伊藤修子/千代田信一/石川ユリコ
寺部智英/市川訓睦/成田さほ子/山岸拓生
村上大樹
千葉雅子【猫のホテル】/市川しんぺー【猫のホテル】/中村まこと【猫のホテル】
江本純子【毛皮族】/町田マリー【毛皮族】/柿丸美智恵【毛皮族】
 

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