m a k e s h i F t
thEatricals2003.12.05
ナイロン100℃ 25th SESSION
10years anniversary

「ハルディン・ホテル」

2003/11/29 @ 本多劇場
P列9番

11月29日土曜日。雨。
私がライブで初めて見たお芝居の舞台は2002年に再演されたナイロン100℃の「フローズン・ビーチ」でした。そのブラックな笑いに感動したのを覚えています。
そのナイロン100℃は今年で10周年だそうで。その記念公演も兼ねたのが今作「ハルディン・ホテル」であります。
座席は補助席も含めてほぼ満員。でもなぜか私の左隣が空いていたので、ゆったりと鑑賞することができました。若干女性客が多くて、友人同士と思われるグループ客が多かった印象です。
開演時間から5分ほど過ぎて、ケラさんが初めて監督をした映画「1980」の予告編が上演。
その後にお芝居が始まったのですが、最初にキャスト紹介があって実際に役者さんが登場するという演出はなかなか粋な演出だったと思います。

●パンフレット(B5変形 64ページ 1500円)
青で統一された表紙デザインはすっきりとしていながらも洗練されたイメージ。
内容は演出家と各キャストへのナイロン10周年に対するインタビュー、稽古場風景、舞台に合わせてホテルで起こった事件簿、ナイロン在籍年数ごとに3つのグループに分けての座談会、ナイロン過去の公演記録など読み応えばっちりです。
他の物販としてはTシャツ、過去の作品のビデオ、DVDなど。年末に行われるみのすけさんのライブチケットも販売していました。

●セット
シンプルなイメージのホテルが舞台。
中央に開演扉。右手にフロント、左手の1段高い場所に喫茶スペースがあって、いくつかのテーブルと椅子が置かれています。
中央の前面部に机を挟んだ腰の低い背もたれのないタイプの椅子が2つ。右手にはエレベーターがあって、その真上にも同じエレベーター。左手には階段。その前にはソファセットと観葉植物。
中央の上部はホテルの部屋になっていますが、普段はブラインドが下げられています。ちなみに映像の映写はこのブラインドで行われました。

●ストーリー
オープン10周年を迎えたハルディンホテルは、オープンした日に訪れた客に10年後の無料宿泊券を渡していた。多数の客が来ると思っていたチーフのアズマ(みのすけ)だったが、大雪という悪天候のせいか、今朝からキャンセルの電話の応対ばかりをしている。従業員のボウゾノ(喜安浩平)はアズマにこんな日に来る客なんかいないですよと言いながら、このホテルに訪れた著名人の色紙をなんとなく眺めていた。
アズマはそんなことはないとボウゾノに10年前のオープン時の様子を嬉々として話しだす。10年前のあの日、ホテルは笑顔で溢れていた、と。しかしハルディンホテルがオープンしたその日は笑って済ませられない出来事もあったのだ。
やがてあの日を一緒に過ごした面々が1人1人ホテルへとやってくる。ある人は過去の思い出に出会うために。ある人は過去の思い出を持たずに。ある人は……。
過去を知る人々が集まりだし、アズマの笑顔の裏に隠された10年分の出来事は、やがて悲劇という形で姿を現していく。

●感想
上演時間は途中で約10分の休憩時間を挟んで約3時間20分。(13:38〜16:55)
毎度のことながら非常に長いお芝居だったのですが、あまり長さは感じませんでした。
今作は記念公演ということもあって、ほとんどのナイロン100℃所属の役者さんが登場しています。そしてそれぞれの役者さんごとに見せ場が用意されていたのが嬉しかったです。なので一部の女優さんが参加されていなかったのが非常に残念でした。(特に峯村さん)
作品全体を通してケラさんお得意の程よいジョークとシリアスが混在した見事なお芝居だったと思います。ただこれ以上芝居を長くさせないためか、尻切れトンボになってしまっているエピソードがいくつかあったのが残念です。(特に村岡さん演じるヒヅメと小林さん演じるツネヅミのエピソード)
エンディングには賛否両論あるようですが、私はあれでよかったと思います。

●役者
みのすけさん。ちょっとした狂気をはらんだ役どころは天下一品です。本当にこういう一見まともな人間が一番怖かったりするものです。
犬山イヌコさん。かわいらしい役どころながら、10年で年月以上に老け込んでしまっているのに苦笑しました。
大倉孝二さん。動きが大きいので、ついつい目を奪われてしまいます。そのせいで他の役者さんのおいしいところも奪っていたような気も。探偵さんならもう少し大人しくするべきなんでしょうけど、これもアリですね。
三宅弘城さん。前半には笑いを後半には渋みを出した演技の切り分けは見事です。大倉さんとの絡みは見ていて非常に楽しかったです。
松永玲子さん。今回はきれいに脇役に徹していた印象です。でしゃばり過ぎない演技の中に見せる凄みはさすがでした。
村岡希美さん。いつものような何ともいえない不気味さ(失礼)が足りなくてちょっと物足りなかったです。
廣川三憲さん。チンさんのキャラクターにはケラさんの作品に直接通じるものがあると思いました。笑いの中に見え隠れする怖さに説得力があります。
小林高鹿さん。ある意味、作品中のキーになりえる人物ながら、ものすごく地味な役どころなのが意外でした。個人的にはもうちょっと目立って欲しかったんですが。
新谷真弓さん。今回はちょっと艶っぽい演技が見られて満足です。
喜安浩平さん。前半にツッコミで大忙しだったせいか、後半になって存在感が一気に薄れてしまって残念です。
藤田秀世さん。最後に自殺をしてしまう役どころなのですが、自殺直前のシーンの心象がイマイチだった気がします。図太さの方が目立ちすぎていて、繊細な心の描写が足りなかったせいでしょうか。
眼鏡太郎さん。お尻を前面に出した演技がおかしかったです。それしか印象に残ってないですけど。


集大成と言っても過言はなし ★★★★☆


− 公演データ −

ナイロン100℃ 25th SESSION 10years anniversary
「ハルディン・ホテル」

2003/11/07〜2003/11/30@本多劇場(11/07はプレビュー公演)
全席指定 前売5000円 当日5500円
プレビュー公演のみ 前売4000円 当日4500円
2003/12/05〜2003/12/07@近鉄小劇場
全席指定 前売5000円 当日5500円
2003/12/13〜2003/12/14@北九州芸術劇場 中劇場
全席指定 前売4000円 当日4500円
2003/12/17@栗東芸術文化会館きさら 中ホール
全席指定 一般4800円 友の会4300円

- STAFF -
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
舞台監督:福澤諭志+至福団 舞台美術:松井るみ(センターラインアソシエイツ)
照明:関口裕二(balance,inc.DESIGN) 音響:水越佳一(モックサウンド)
衣裳:ミシンロックス+コブラ会 映像:上田大樹(INSTANT wife)
振付:長田奈麻 演出助手:山田美紀(至福団)
舞台監督助手:掛川裕行、宇野圭一(至福団)、望月有希、堀越春美
照明部:瀬戸あずさ、菅原勇治
音響部:茶木陽子(モックサウンド)、大西弘雄(Half-Note)
衣装部:伊澤潤子(大人計画)、梅田和加子(大人計画)
小道具製作:宇佐美雅子(バックステージ)、橋本加奈子(SING-KEN-KEN)、高橋朋子、秦真佑子
ヘアメイク:武井優子 映像協力:新見文(INSTANT wife)
大道具:唐崎修(smile stage) 大道具製作:C-COM舞台装置、オサフネ製作所
小道具:高津映画装飾 特殊効果:特効 運搬:マイド
宣伝美術:高橋歩 宣伝写真:中西隆良 制作:花澤理恵
企画・製作:(株)シリーウォーク

- CAST -
犬山イヌコ/みのすけ/三宅弘城/大倉孝二
松永玲子/長田奈麻/新谷真弓/廣川三憲/村岡希美
藤田秀世/大山鎬則/喜安浩平/吉増裕士/杉山薫
植木夏十/眼鏡太郎/佐藤竜之慎/廻飛雄/皆戸麻衣/柚木幹斗
小林高鹿【ペンギンプルペイルパイルズ】
 

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