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thEatricals2003.11.14
「OH!BABY」

2003/11/01 @ 全労済ホール スペース・ゼロ
13列14番

11月1日土曜日。くもり。
1ヶ月以上ぶりの観劇に、少し心を弾ませながら新宿へ。
スペース・ゼロへとやってくるのは、「BIG BIZ」以来ほぼ1年ぶり。
毎週のように新宿へと足を運んでいる私でありますが、西口方面は徒歩5分圏内しか移動しないので、たいした距離でもないのに久しぶり感たっぷりであります。

開場時間ちょうどに劇場につくと、意外とご年配の方々の姿が多く見られました。そんな客層をにらんでか、客席内にパンフレットの売り子さんが登場。「パンフレットはいかがですか」と言いながら客席を練り歩く姿はどうも変な感じがします。実際、売れてませんでしたし。
で、このままの客層で開演するかと思ったら、開演時間直前になって若い方々が続々とご入場。なるほど、ご年配の方は余裕をもって来場していただけでありました。結果的に座席はほぼ満員。男女比は3:7ほどで、久しぶりに前後左右を女性に囲まれるような格好となりました。
ちなみに、後でよくよく調べてみると、今回の舞台には人気声優さんが出演していたんですね。道理であまり演劇では見ないタイプのファッションをした女性がいたわけだ。

今回の舞台はテレビで活躍中のベッキーさんの初主演舞台で、脚本がラサール石井さん、演出は劇団TEAM 発砲・B・ZINの主宰・きだつよしさんが手がけました。キャストの取り合わせが異色だということでも話題になったようです。

●パンフレット(A4版 21ページ 1200円)
チラシと同じ写真を表紙に使用。ベッキーがメインで色合いもピンクがメインなので、ちょっと男性には買いづらいデザインかも。内容は脚本家、演出家のあいさつ、キャストの紹介と簡単なインタビュー、台本読み合わせ風景、同じ題材でキャスト陣が川柳をよむコーナーなど。大きなモノクロ写真がふんだんに使われていて、写真集のような仕上がりです。

●セット
エントランスホールがダイニングルームを兼ねている、今はほとんど見られないタイプのアパートが舞台。
舞台右手がアパートの入り口。
昔ながらの下駄箱が置かれた玄関を抜けると広めのダイニングルーム。
ダイニングルームの右側にカーペットが敷かれていて、その上にはソファセット。左側にはテーブルと6脚の椅子。奥の壁には大きな本棚。本棚の横には小さな棚。
テーブルの横には2階へと続く階段。
階段の脇には管理人室へのアーチ。その左隣はトイレへと続くドア。どちらの入り口の前には大量の本が積まれています。
2階には3つのドアが並んでいて、向かって左から緑色のドアの1号室、赤色のドアの2号室、青色のドアの3号室となっています。3号室の横には奥へと行ける廊下があって、その先にも部屋がある設定です。

●ストーリー
1984年。上石神井にあるアパート・フラワー荘に2人の女の子が逃げ込んできた。2人とも住んでいた寮を追い出されたのだと言う。しかもその内の1人である金田姫子(ベッキー)は妊娠していて今にも子供が生まれそうな状態。この子供の父親とは記憶喪失で流浪していたところを姫子が助けたのが出会い。そして急激に愛情を深めていった2人だが、姫子の妊娠が発覚した後、その父親はフラワー荘の住所が書かれた紙を残して行方を消してしまっていた。フラワー荘の大家である花山小吉(朝倉伸二)はそんな2人をやさしく迎え入れた。そして、姫子はフラワー荘で無事出産をする。
それから20年後の2004年。あの時の子供である温美(ベッキー)はフラワー荘の大家となっていた。もともとの大家であった花山は10年前に病死。花山には娘がいたのだが、音信不通で行方がわからない。そこで実の娘のように育ててきた温美に遺産相続という形で大家の座を譲ったのだ。本当なら温美の母親である姫子に相続したかったのだが、姫子は同じ年に事故で他界したという事情もあった。
20歳の誕生日を翌日に迎えた温美は、開かずの押入れと呼ばれていて、この数十年間、全く手がつけられていなかった押入れの大掃除をすると言い出した。何もこんな日にやらなくてもと止める住人の言葉を無視して掃除を始める温美。するとそこには見知らぬ男(津田健次郎)の姿が。その男の顔は昔写真で見た温美の父親にそっくり。そして、その男も父親同様記憶を失っていた。
この男の登場がきっかけとなり、過去と未来を交えた大騒動が勃発する。

●感想
上演時間は2時間10分。(14:05〜16:15)
タイムスリップを使ったシチュエーションコメディなんですけど、笑いどころは非常に少なかったです。ちょこちょこと小ネタをちりばめてはいるんですが、それもどちらかといえば失笑を買うような内容でありました。
というわけで脚本に非常に不満が残りました。
タイムスリップものを書くときに必ずぶつかるのがタイムパラドックスをどうまとめるのかということです。今回の脚本では途中までは何とか辻褄を合わせていましたが、エンディングではその全てを放棄してしまっています。実に尻切れトンボで気持ちが悪い。
あとエンディングのやり方が気に入りません。
赤ん坊を使って微笑ましいエンディングに仕立て上げていますが、実はハッピーエンドでもなんでもないというのが曲者。何も物事は解決を見せていないどころか、下手すれば事態は悪化しているとも取れる。赤ん坊というキャラクターの力で強引に落としているとしか思えませんでした。
また、複数の時代を行き来するこの話の設定では、時代間のつながりというのが非常に重要です。しかし、この脚本ではやたらめったらと伏線を用意してしまったために、逆に分かりづらい印象を受ける形になっていると思います。帰り際に話をしていたお婆さんたちの「時代を行ったり来たりして話が見えなかった」という会話が全てを物語っていると思います。

●役者
ベッキーさん。良くも悪くもベッキーだなぁという印象。テレビで見ててもそうなんですが、どんな役どころを演じていてもベッキーなんですよね。彼女に問題があるわけではないのでしょうが、そういう印象を持ってる人って多いような気がします。そこから脱せるかどうかがポイントなんじゃないでしょうか。
津田健次郎さん。この方が最近人気の声優さんです。もともと舞台役者としても活躍されていたということで。出番は少なかったですが、いい演技をしていたのではという印象です。ちょっと斜に構えすぎな印象もありましたが。
東野佑美さん。この方も舞台は初めてだそうです。主にテレビでの活動や、音楽活動をされていたようです。いわゆる天然系のキャラクターだと思うのですが、それ以上の何かは感じられませんでした。
蒲生純一さん。この方もテレビでの活躍がメインですね。何かと見かけた覚えがあります。今回の舞台では少々台詞を噛んでしまうシーンが見受けられましたが、そつなくこなしているなという感じです。後半になって出番が少なかったのはちょっと残念だったかも。
朝倉伸二さん。老人の役に最初は違和感を感じたのですが、徐々にその雰囲気になじまされた感じです。役者としての力量を見せつけられた思いです。
清水宏さん。今作のMVPは間違いなくこの方です。ちょっと情けない男を熱演されました。あえて笑いを抑えた演技が見事でありました。


微笑ましいだけじゃ納得がいかない ★☆☆☆☆


− 公演データ −

「OH!BABY」

2003/10/29〜2003/11/03@全労済ホール スペース・ゼロ
全席指定 前売4500円 当日5000円

- STAFF -
作:ラサール石井
演出:きだつよし【TEAM 発砲・B・ZIN】
美術:中根聡子 照明:佐藤公穂
音響:小笠原康雅(OFFICE my on) 衣装:木村猛志(A.C.T)
ヘアメイク:双木昭夫(クララシステム)、森香織(クララシステム)
舞台監督:村田明(クロスオーバー) 演出助手:山ア総司(Playing unit 4989)
プロデューサー:松田誠(ネルケプランニング)、成田哲(ニッポン放送)
主催:ニッポン放送 企画・製作:ネルケプランニング

- CAST -
ベッキー
津田健次郎/東野佑美/蒲生純一
小林愛【TEAM 発砲・B・ZIN】/朝倉伸二/福島まり子【Beans】
石倉良笙【ACファクトリー】/森山栄治【*pnish*】
清水宏
ラサール石井/小宮孝泰
 

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