m a k e s h i F t
thEatricals2003.10.31
コムラプラス第1回公演
2人芝居「カレーとイチロー」

2003/09/20 @ ウッディーシアター中目黒
6列7番

9月20日土曜日。雨。
久しぶりの大雨。
そのせいか、昨日までの残暑が嘘のような寒さ。一気に秋といった風情。
私は今シーズン初となる長袖に身を包み中目黒へと向かいました。
以前勤めていた現場が中目黒だったのですが、駅よりも南にいったことがなかったので、今回の箱となる中目黒ウッディシアターはどこにあるかの検討もつきません。
途中で道を一本間違えたりしながらも、何とか開場5分過ぎに到着。
風が強かったこともあり、傘を差していたにもかかわらず下半身はびしょぬれでありました。
地階にあるこの劇場は、予想以上に小さくてビックリであります。
ディレクターチェアが並べられた観客席は7列で約90席。
それでも幅はそこそこあるので、舞台自体は狭く感じません。
ただ、客席も舞台も奥行きが短いんですね。
窮屈な感じこそしませんが、他の小劇場とは違う狭さが印象的であります。
とりあえず私は後ろから2列目のど真ん中に陣取りました。
舞台全体を見渡すにはちょうどいい席です。
ただ、前列に座高の高い方が座られて、少々思惑と外れたのは余談であります。
天候のせいか、はたまた立地のせいか、客の入りは今ひとつ。7割ぐらいの入りでしょうか。
男女比はほぼ半々。性別問わず個人での客が目立っていました。
今回の作品は元猫ニャー(現・演劇弁当猫ニャー)の小村裕次郎さんが立ち上げた演劇ユニット──ユニットといっても小村さん1人ですが──「コムラプラス」の旗揚げ公演です。
今作では競演にナイロン100℃の村岡希美さん。脚本にMOBOの主催者鈴木哲也さんを迎えています。

●パンフレット
物販はありませんでした。

●セット
12畳ほどのワンルーム。
右手にキッチン兼玄関に続くアーチ。
その横には服がかけられた姿見。壁には「アメリ」のポスターとカレンダー。
左手にはテレビとたんす。たんすの上には備え付けと思われる簡素な棚。
中央奥にはベッドとミニコンポ。壁には象が描かれたインド風のタペストリー。
中央には小さめのテーブル。そこ横には観客席のと同じディレクターチェア。
左斜め奥に窓。レースのカーテンがつけられている。その上にはクーラー。
そして床のありとあらゆるところに脱ぎ散らかされた服、読み捨てられたマンガや雑誌、ちらしなどが煩雑に転がっている。要は典型的な散らかった一人暮らしの部屋であります。

●ストーリー
中野にあるワンルームマンションに住んでいる派遣社員の中森沙耶(村岡希美)は、夕方にやってくる彼氏のために手料理をせっせと作っていた。
そこに何どもかかってくる電話。電話の相手は何度も中森の名前を呼ぶが、沙耶は決して電話に出ようとはしない。やがて電話は切れる。そこに再び電話が。居留守を決め込んでいる沙耶は鳴り続ける電話をベッドの上から眺めるのみ。しかし留守番電話から流れてきた声は田舎の母親の声。慌てて受話器を取る。母親が言うには今日到着するように宅急便を送ったということ。ちょうどそこに訪問者を告げるチャイムの音。てっきり宅急便が届いたものだと思った沙耶は、電話を切り玄関のドアを開ける。そこに立っていたのは散々電話をかけ続けていた男・斉藤滋(小村裕次郎)だった。
実はこの斉藤という男は、消費者金融「モンキーローン」の人間。沙耶はそこに借金をしていたのだが、返済が遅れ気味であったため、担当者である斉藤は必死に連絡を取ろうとしていたのである。
まさか家にまで来るとは思っていなかった沙耶は、何とかして斉藤を帰らせようと説得するが、斉藤も仕事であるから、そう簡単には引き下がらない。そこにタイミングよく電話が鳴る。沙耶はこれ幸いとばかりに、電話を理由に斉藤を追い返そうとする。
慌てて電話へと走りよる沙耶。とそこで突然大量のマンガを載せていた棚が壊れてしまった。慌てて棚の下に自分の体を入れて棚を支える。そのせいで1歩も動けなくなってしまった沙耶は、仕方なく斉藤に助けを呼ぶ羽目に。
沙耶の許しを得て、部屋に入ってきた斉藤は、沙耶を助けると早速返済についての話を始めだす。沙耶は明日電話をするからと必死に斉藤を追い出そうとする。しかし、斉藤はこのまま行けば間違いなく破滅の道を歩みますよと、沙耶を脅す。また、沙耶の言動からこの部屋に彼氏がやってくることを知った斉藤は、その彼氏に借金の肩代わりをできないのかと持ちかける。しかし付き合いだして間もない沙耶はそんなことできないと断るのみ。散々言い合っていた2人だったが、突然斉藤の表情が変わる。
斉藤はかばんから別の債権者から受け取ったばかりの200万円を沙耶の前に出し、想像もしなかった台詞と言い放つ。
「この200万の半分で、中森さんの借金を全て返済します。そして残った100万円を持って、2人でどこか遠くへ逃げましょう!」
突然の台詞にとまどう沙耶。しかし斉藤にはその台詞と伝えるだけの理由があった。
2人に隠された関係とはいったい何なのだろう?

●感想
上演は約2時間。
なんかありそうでなさそうなシチュエーションコメディ。
大笑いこそないんだけど、クスクス笑える佳作といった印象。
消費者金融に関する題材というのは、最近の世相を反映しているのでしょうか。
男女それぞれのキャラクターは、少々デフォルメされていますけど、探せばどこにでもいそうなキャラクターなので感情移入がしやすく、ちょっと心境の変換なんかを追っていくのも楽だし、楽しい。
特に難しいことを考えずに、2人の行く末を見つづける感覚は本当に覗きをしているような感じで、この劇場を舞台として選んだのは正解だったと思います。同じ小劇場のスズナリとかでこの感覚の芝居は絶対似合わないと思う。舞台との距離がどこからも近く感じられるこの劇場ならでは臨場感が気持ちいいです。

●役者
小村裕次郎さん。小村さんの芝居を見るのはこれが3回目なのですが、どのキャラクターもデフォルメや、オーバーリアクションなどでぼやかされていますけど、割と等身大の男性像を描いているなと常々感じていました。特に今作では、真面目で不器用なサラリーマン像が非常に好印象でした。この路線で今後も行けば「はずれ」はないんでしょうけど、もう少し毒の強いキャラクターとか、線路を1本外れているような人間を演じている姿を見てみたいです。
村岡希美さん。ナイロンではちょっとアクの強いキャラクターが多い印象があったので、こういう普通の女性像は新鮮でした。(そういえば「ドント・トラスト〜」でも割と普通の女性だったっけ)大げさなリアクションも含めて、何かいいなぁ……と笑顔で拝見してしまいました。


ありがちなストーリーを役者でカバー ★★★☆☆


− 公演データ −

コムラプラス第1回公演
2人芝居「カレーとイチロー」

2003/09/17〜2003/09/21@ウッディーシアター中目黒
全席自由 前売3000円 当日3300円

- STAFF -
作・演出:鈴木哲也【MOBO】
舞台監督:清沢伸也 舞台美術:秋山光洋
大道具協力:(有)イトウ舞台工房 音響:茶木陽子(モックサウンド)
照明:シバタユキエ 舞台写真:引地信彦
製作:コムラプラス 製作協力:磯村文希、大麦麦芽会

- CAST -
小村裕次郎/村岡希美【NYLON100℃】
(声の出演)
南谷朝子【NANYA-SHIP】/大山鎬則【NYLON100℃】
池田エリコ/山岸拓生【拙者ムニエル】
 

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