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thEatricals2003.10.03
オリガト・プラスティコ vol.2
「西へ行く女」

2003/09/13 @ 本多劇場
G列20番

9月13日土曜日。晴れ。
夜になっても暑さは全く引かず、じっとりと汗をかきながら本多劇場へ。
オリガト・プラスティコは、ナイロン100℃主催のケラリーノ・サンドロヴィッチさんと元・東京乾電池の女優広岡由里子さんによる演劇ユニットです。
何とも印象深いユニット名に意味はないとか。逆に潔い印象です。
約2年半ぶりとなる第2回公演は岩松了さんが書いた作品を演劇集団円(こちらは演出も岩松さん)と競作するという企画です。
私は残念ながら円の方を見に行くことができないので、見比べることができません。
岩松さんの作品を見るのは初めてなので、集中して見ることにしましょう。

一人のお客さん、友達同士、カップルなど客層はバラバラな感じ。
30代以上の方が多く見受けられました。
男女比は半分半分といったところでしょうか。
開演前後のアナウンスは、演劇集団円で主役を演じる岸田今日子さんがやっておられました。
もしかしたら円の方では広岡さんがアナウンスをしたのかもしれません。競作ならではの粋な演出です。

●パンフレット(A5版 21ページ 500円)
パンフレットにも使われた広岡さんと宝生さんのスチール写真が表紙。内容はあらすじ、作家岩松了氏の寄稿、KERA氏の一言コメントつきのキャスト紹介、演劇評論家・扇田昭彦氏による前作「カフカズ・ディック」の演劇評、舞台稽古写真など。

●セット
壁や天井がつたに覆われたエントランスホール。
白い壁にはところどころシミが見えて、多少年代を感じさせる印象。
右手には2階へと続く階段が奥にあって、手前にはドアが1つ。階段とドアの間のスペースには、小学校にあるような机と3脚の椅子。ドアの横にも2脚の椅子がさびしげに置かれています。
左手には2つのドア。奥のドアは用具入れに、手前のドアは個室へとつながっている設定。こちらのドアのそばにも椅子と机が。
正面奥は建物の出口になっています。
全体的に無機質で冷たい印象を受けるセットです。

●ストーリー
7月7日。七夕。山の中にある深い森の奥にかつては幼稚園だったという建物があった。その建物の一室で一人の男が目を覚ます。男は記憶を失っていた。どうやってこの建物に来たのかどころか、自分の名前も思い出せない。そこにイノという男が現れ、男のことをスズキと呼んだ。それは男の着ていたジャケットに刺繍されていた名前。しかし、男はそれが自分の名前なのかはわからない。
イノが言うには、この建物から少し離れたところにある井戸のそばに倒れていたスズキを、トキという女が助けてここまで運んできたとのこと。そしてスズキのことを懸命に介抱したという。
そこへこの建物の主である女、ハルが現れた。普段は絵を描いているというこの女。それ以上の素性はわからない。スズキは自分の情報を少しでも得ようとハルと話をするが、どうも展開が乏しい。その後現れたトキは美しい女であったが、感情が欠落しているかのようで、まるで人形を相手にしているような。そんなトキに恋心を抱き、結婚を申し込んだ食料品店の店長であるタジマは、トキの心をスズキに奪われないかとやきもき。
そこへ昔この幼稚園で先生をしていた女・ヤマネが訪れる。7月7日はとある園児の命日。ヤマネはその園児を殺害したという疑惑がかけられていた。後にその疑惑は晴れたのだが、今でも毎年かかさずこの建物へと訪れる。ただ今年は例年とは違って、1人ではなく連れがいた。夫・タカギである。つかの間の再会に喜ぶ面々。しかし夜が更けると共に、隠されていた過去が浮かびあがりはじめた。
その過去がひとつ暴かれるたび、舞台は悲劇への加速度を早めていく。

●感想
上演は約2時間。
うわぁ、難解だぁ。
謎が解けたかのように見せかけつつも、実は何も解決されていないストーリー。
登場人物は自分勝手に話したいことを話して、やりたいことをやる。登場人物自身のみが知っている事情は決して教えてくれません。
ヒントや伏線は一杯用意してくれていますから、観客はあれこれと想像できる余地はあるにはあります。でも肝心の部分は最後の最後まで明かされないから、消化不良な気分。
おまけにいつものケラさんの演出が全く姿を見せず、たまに見えてもその場つなぎの印象どまり。
あえてそこを狙ったのだとしても、やっぱしすっきりしません。
昼に三鷹で歩いて少々疲れもあった私には非常に厳しい内容でした。
演劇を見てて睡魔に襲われたのは初めてじゃないでしょうか。
つまり、あまりに難解すぎて、頭が考えることを放棄してしまったのです。
もう少し体調のいいときに見たかったです。
あと多少無理してでも、岩松さん演出バージョンを見るべきだったと後悔しております。

●役者
広岡由里子さん。理屈が先行するあまりお友達にはなりたくないタイプの女性を好演していらっしゃいました。個人的にこういう癖の強いキャラクターの方がしっくりきますね。
宝生舞さん。以前ビデオで見た「マシーン日記」もそうだったんですが、神経衰弱な役柄がぴったりという珍しい役者さんだと思います。今作では感情が明らかに欠落している難しい役柄を見事に演じきっていました。MVPですね。
渡辺いっけいさん。舞台一杯に使うパワフルな演技に圧倒されました。深夜に格闘技の番組のMCをやっていた時の印象そのままという感じ。全体的に各登場人物がかって気ままに動き回るこの作品なの中では観客よりな人物だったので、感情移入しやすくて好印象でした。
長塚圭史さん。演技を見るのは初めてだったのですが、もうちょっと粘着質な演技をするかと思いきや、ものすごくさっぱりとした印象に最初はビックリ。でも物語後半の演技を見ているとどうもわざとらしさが見え隠れしていてちょっと疑問符が浮かんだりも。
安澤千草さん。ちょっと陰のある元先生という役どころがピッタリでした。八十田さんとのコンビも妙にしっくりしていて。ただ終盤の暴れっぷりはちょっと物足りない気もしました。
八十田勇一さん。八十田さんは本当に困った顔をしているのが似合うなぁ。出番が少なかったのがもったいない。
矢沢幸司さん。変わり者のおじさんっていますよね。まんまそんな印象。それでもこの舞台での他の役者さんと比べればそれでも目立たないんですから。そつなく脇役をこなしているっていう感じでしょうか。
鈴木リョウジさん。もともと芸人さんだそうで、ちょっとアクの強さが鼻につきました。嫌いじゃないんですけどね。


コンディション合わず ★☆☆☆☆


− 公演データ −

オリガト・プラスティコ vol.2
「西へ行く女」

2003/09/12〜2003/09/21@本多劇場
全席指定 前売4800円 当日5000円
2003/09/23@盛岡劇場 メインホール
全席指定 前売4500円 当日5000円
2003/09/24@新潟りゅーとぴあ
全席指定 S席5500円 A席4500円
2003/09/27〜2003/09/28@近鉄小劇場
全席指定 前売4800円 当日5000円
2003/09/30@北九州芸術劇場中劇場(小倉)
全席指定 S席6500円 A席5500円 学生3000円
2003/10/01@アステールプラザ大ホール(広島)
全席指定 S席6000円 A席5000円
2003/10/03@大分コンパルホール
全席指定 前売4000円 当日4500円
2003/10/04@メルパルクホ−ル福岡
全席指定 S席6500円 A席5500円 学生3000円

- STAFF -
作:岩松了
演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
舞台監督:青木義博 舞台美術:星健典
照明:吉倉栄一 音響:藤田赤目
衣装:加藤寿子 演出助手:相田剛志
宣伝美術:雨堤千砂子(ワゴン) 宣伝写真:田中亜紀
制作:大矢亜由美 主催・製作:(株)森崎事務所
助成:日本芸術文化振興基金助成事業

- CAST -
広岡由里子
宝生舞
渡辺いっけい/長塚圭史【阿佐ヶ谷スパイダース】 八十田勇一/安澤千草【NYLON100℃】 矢沢幸司/ 鈴木リョウジ
 

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