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thEatricals2003.09.26
シアターナインス 第5回公演
「実を申せば − to tell the truth −」

2003/09/06 @ PARCO劇場
I列28番

9月6日土曜日。くもり。
何か巡礼になりつつあるパルコ劇場訪問。
今回の作品は、松本幸四郎一家が競演するのが話題となっているシアターナインスの2年ぶりとなる5回目の公演です。
客の入りは9割ほど。男女比は3:7ぐらい。50代以上と思われる年配の方の姿が目立ちました。
場内アナウンスは松本紀保さんがなされていらっしゃいました。
ベテランである松本幸四郎さん、杉浦直樹さんの競演が観劇前より楽しみでありました。

●パンフレット(A4版 40ページ 1500円)
タイトルだけが明記された、水色で統一された落ち着いたデザインの表紙です。内容は演出家マキノノゾミさんと各キャストへのインタビュー、マキノさんと鈴木哲也さんとの対談、嘘に関する精神科医香山リカさんの寄稿、プロデューサー寺川知男さんの寄稿、今回参加していない市川染五郎、松たか子の兄妹対談、稽古場風景、過去のシアターナインスの公演記録など。
パンフレットの他にポスターやTシャツの物販がありました。

●セット
木造お屋敷の居間がメイン。
右手に奈緒子の部屋へのドア。その横に電話が置かれた小さな台。その横にはグランドピアノ。グランドピアノの上には写真などが飾られていていかにもな感じ。
部屋の奥正面はガラス戸になっていて、右手2階へと続く階段。その前の廊下をさらに右に行けば別の部屋と玄関がある設定。階段の左隣には台所へと続くガラス戸。
部屋の中央にはソファセットとテーブル。左手奥側には、亡くなった妻の肖像がが飾られ、その下には食器や酒などが置かれたチェスト。そのチェストの右隣に引き戸があり、そこがサネトモの部屋。
左手の窓からは庭へ出られる。庭の軒下には、使われなくなった植木蜂などが転がっている。
庭は塀に囲まれていて、奥の辺りに裏口がある設定。
一昔前の一軒家をイメージできる、丁寧な作りであります。

●ストーリー
銀行員をしている秋山奈緒子(水野真紀)は、父親であるサネトモ(杉浦直樹)のことが心配でしかたがない。というのもサネトモは妻に先立たれてしまったショックで、仕事を引退し、今ではほとんど外にも出ず引きこもり状態。そんな父親を何とかしようと、偶然街で出会った父親の旧友・藤田風太郎(松本幸四郎)に父親を励まして欲しいと懇願。風太郎は快くそのお願いを引き受ける。
こうして家にやってきた風太郎だが、サネトモは久しぶりに再会したというのにけんもほろろな応対。というのも実は2人は元詐欺師の相棒同士で、5年前に2000万もの大金を風太郎が独り占めして行方を消したことにサネトモは腹を立てていたのである。そんな内情なんて知る由もない奈緒子は、サネトモの応対に腹を立てながらも約束があるため旅行へとお出かけ。
2人きりとなってもサネトモの応対に変化はなく、何とかして風太郎を追い出そうとする。しかし風太郎は調子いい文句を並べては、何とか家に置かせてもらおうとする。そんな風太郎に対してサネトモはついに拳銃まで取り出して実力行使に出る。さすがに拳銃を前にしては引くしかないと判断した風太郎だが、得意の嘘を並べ立て、少しでも気を引くように仕掛ける。そんな風太郎の手口を知っているサネトモは昔と変わらないやり方に呆れつつも、ついに折れて1日だけ風太郎と家に泊まらせてやるのだった。
翌朝。昨晩はなんだかんだ言いつつもの飲み屋で盛り上がった2人。ところがなんとサネトモの布団には若い女性の姿が。この女性、名前を突然パセリ(松本紀保)といい、小劇団「東京マヨネーズ」の女優をしているとのこと。よくよく話を聞けば、お金がなくて稽古場が借りられなくなったという事情を聞いたサネトモが自宅の事務所を稽古場として貸してやると言ってくれたらしい。しかし、サネトモは前日の酒のせいか全く覚えていない。実はこれは風太郎がパセリに入れ知恵をして、一芝居打たせたもの。サネトモは当然それも見破っていて、再び呆れさせられながらも事務所を稽古場として提供してあげることにしたのであった。
一気ににぎやかになった秋山家。芝居の稽古の手伝いなんかをやっているうちに、昔の元気を取り戻し始めたサネトモの姿を見て、奈緒子は一安心。ところが、そんな奈緒子の身に思いも寄らない悲劇が襲い掛かる。それを知ったサネトモと風太郎は、犯人に復讐をしてやろうとたくらむのだが……。

●感想
上演は15分の休憩を挟んで約2時間20分。
嘘を色々なところにまぶしたホームコメディ。
達者な役者さんたちのおかげで安心して見られる幸福感。こういう芝居ってありそうでなかなかないです。
ただ展開が読めてしまう脚本はちょっと残念。
特にオチが読めてしまうのは、こういうどんでん返しものでは大問題のような気も。
まあ、その辺りを含めたとしても、上質な作品であることに変わりはありません。

●役者
松本幸四郎さん。テレビなどで拝見すると、どうしても真面目な役どころが多いので、今作での軽薄な詐欺師役というのは軽く違和感を感じたり。それでも楽しそうに演じられている姿はほほえましくて、ついつい顔がほころんでしまいます。
杉浦直樹さん。しばらくお姿を拝見していなかったんですが、思っていたよりもお年を召されていらっしゃるなぁというのが率直な感想。それでも、凛とした声や、ぴんと筋の通った立ち振る舞いは流石。厳格な昔の男といった感じで、自分もこう年を重ねていければいいなぁなんて。
水野真紀さん。重鎮2人に挟まれて、可愛さを前面に打ち出している演技は、確かにいいんだけど、ちょっとやりすぎかしらとも。でも、その演技すらも嘘の延長なわけですから、計算づくなんでしょうね。女性は怖いです。
松本紀保さん。実は私この方知らなかったんです。勉強不足で申し訳ない。とんがった女優役だったわけですが、写真で拝見した印象とあまりに違っていてビックリ。その割に演技は自然で、実力のあるところを見せつけられた思いです。
木下政治さん。これだけの面子にかこまれながらも、のびのびと演技をされていたように思います。ただ、それ以上の印象が残らないのは、まだまだオーラの量が足りないのかもしれません。


暖かい気持ちにさせてもらえます ★★★★☆


− 公演データ −

シアターナインス 第5回公演
「実を申せば − to tell the truth −」

2003/08/30〜2003/09/26@PARCO劇場
全席指定 前売・当日9000円

- STAFF -
作・演出:マキノノゾミ【劇団M.O.P.】
美術:堀尾幸男 照明:服部基 衣裳:黒須はな子
音楽:川崎晴美 音響:堂岡俊弘 ヘアメイク:小島裕司
演出助手:山田美紀 舞台監督:菅野将機
宣伝美術:高橋雅之 宣伝写真:三浦憲治
宣伝イラストレーター:平田利之
プロデューサー:佐藤玄(パルコ)、寺川知男(松竹パフォーマンス)
企画:シアターナインス
製作:(株)パルコ、(株)松竹パフォーマンス

- CAST -
松本幸四郎/杉浦直樹
水野真紀/松本紀保/木下政治【劇団M.O.P.】
 

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