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thEatricals2003.08.29
ペンギンプルペイルパイルズ #6
「ワンマン・ショー」

2003/08/16 @ THEATER/TOPS
B列9番

8月16日日曜日。雨。
早々とパルコ劇場を後にした私は、そのままの足で山手線へ飛び乗り、新宿へ向かいました。
開演までは多少時間があったので、うどんをすすってからパチスロなんぞを打って、軽く2万ほど負け。傘を差さずに雨に打ち濡れたい衝動を押さえて、THEATER/TOPSへと俯き加減で向かいました。
THEATER/TOPSはビルの4階にあります。早速、エレベーターを使おうかと思うと、THEATER/TOPSに行くなら階段を使えとの看板。
いかにもビルの裏側といわんばかりの少々薄暗い階段をゆっくりと上ります。
会場についたのは開場5分前。そのまま階段で並んで開場を待つことに。
で、開場後、舞台に向かってみると、予想以上に広くてビックリ。ビルの概観や入り口の雰囲気だと、かなり狭い箱なんだと思ってたんです。椅子もパイプ椅子なんかではなく、結構幅広なしっかりとしたものでした。
しかも今回の座席は2列目。今までの観劇では最前列です。
舞台を見上げるような視線もものめずらしい感じでして。
開演15分前には、ビッグコミックスピリッツの劇CMが行われました。
以前、演劇弁当箱猫ニャーでは見逃していたので、ちょっと嬉しいオマケといった感じ。
長田さんがセーラー服姿で熱演していたのが、やたら印象に残っています。
座席はほぼ満席。客層は若い人がほとんど。カップルも多かったので、男女比は4:6といったところでしょうか。
ペンギンプルペイルパインズは演出家・倉持裕と小林高鹿、ぼくもとさきこの3人組がメインの演劇ユニットです。不条理系な脚本、演出で人気があるとのこと。
関係ないのですが、私の隣に座ったのは私と同じ男性1人客。ちょっと同類だと意識していたところ、劇中はほとんど睡眠をとられていて、なんてもったいないのかと、いらぬところで憤慨しておりました。

●パンフレット
パンフレットの販売はなし。
その代わり、今回の脚本が解説つき戯曲として販売されていました。

●セット
舞台中央部分が回りから1段下がっていて、そこに小さな緑色の3脚テーブルと丸椅子が1つ、あとダンボール箱が置かれています。
舞台左右にドアが1つずつありますが、左手は取っ手が隠れていて、一見壁のようになっています。
左右と後方の壁はカラフルなモザイク調。
小劇場らしく、全体的に非常にシンプルな舞台です。

●ストーリー
青井あゆむ(小林高鹿)は寝る間を惜しんで懸賞にはがきを送りつづける、いわゆる「懸賞マニア」だ。しかし全然当たらない。そこで青井は求められている事項だけ書いているから当選しないのだと考えた。それ以来、趣味・性格・健康状態・家族構成・過去の思い出など、応募には全く関係のないことを記入して懸賞に応募し始めた。そして遂に初当選! それはちょっと微妙な人形1体。しかしそれでも青井は大喜び。今日も青井はその人形を糧にはがきを書き続ける。
青井の妻・紫(伊藤留奈)の兄である白根赤太(松竹生)は無職である。深夜、そんな赤太から青井家に電話がかかる。仕事が見つかったというのだ。その仕事は、何でも助けてくれるという自治体の女(ぼくもとさきこ)――青井はイェローと呼んでいた――に斡旋してもらったものだったが、ちょっと変わった仕事内容だった。依頼主である緑(長田奈麻)は赤太にこう告げる。
「数日後、ある人があなたのところへ私について聞きにくると思うけど、私のことなんて知らないと答えてほしいの」
何度か緑と会っていく内に赤太はあることに気づく。『知らない』と答えなければならないのに、だんだん彼女のことを知り始めてしまっているではないか。そのギャップに赤太は焦りを覚え始めていた。
青井の家には池がある。隣に住む緑川黒雄(山本大介)は、池が広がってきていると苦情を言いに来る。しかし池が勝手に広がるわけもない。青井は対応に困っていた。
青井の仕事は飛行機に乗って町の航空写真を撮り、何か変化が見られたら役所に報告するというものだ。青井は明らかに増築が見られる家を発見し訪問する。しかしそこの家主である旦那はいつも留守。家には妻のひろみ(萩原郁)と、旦那の弟・ただし(嶋田健太)がいるのだが、どうしても増築した個所について白状しようとはしない。青井は熱心にその家に通い、説得を試みていた。
同じ世界で生活する人々は、各問題にそれぞれ異なった認識を見せていた。
やがてその認識差が1点へと収束していく。
それは、青井が増築された部屋の扉を発見したのが引き金となる。

●感想
上演は約2時間。
率直な感想として、なるほどよく出来たお芝居だなと感じました。
特に、3本のストーリーの絡み具合が徐々に分かりだし、バラバラになっていた時系列が1本の線となったときに、全体のストーリーも1本に集約されていくという展開は素晴らしいです。
また、オープニングとエンディングの演出は実に絶妙でした。
ただ難点なのは、分かりづらい作りの部分や、謎がいくつか残されたままという個所。
何よりも、観劇した全ての人が納得の行く展開だったのかというのが疑問です。
正直、私も最初見終わったときは幾つか疑問が残ってしまって、非常に消化不良の感があったんです。それで、頭の中で再構築して、考えて考えて、ようやく納得のいく感じでした。
他の方はどうかは分かりませんが、もう少し手を差し伸べて欲しいところもあったという印象です。

●役者
小林高鹿さん。序盤はちょっと線が細い演技でイマイチだなって思っていたんですが、徐々に良くなっていました。ラストシーンでもう少し狂気にも似た怖さが感じられたら、なお良かったと思います。
ぼくもとさきこさん。この作品中では異端な役どころだったんですが、外見も含めてすごくキャラクターにあっていたと思います。最初と最後の何気ない演技は素晴らしかったです。
松竹生さん。実は一番普通の人なんだけど、何気ない修飾語のせいでおかしな人に見えてしまうという、ちょっと不思議な役どころが面白かったです。何気ないマイムとか、力量はある方ですね。
伊藤留奈さん。よく聞く主婦の葛藤をきれいに演じていたと思いますが、あまり印象に残っていないんです。他の役者さんの力量に霞んでしまったのでしょうか。決して演技が下手だったわけじゃないのですが。
萩原郁さん。実に可愛らしい方で、個人的に応援したいです。嶋田さんとのやりとりは息もピッタリで、ちょっとクスリとさせられてしまいました。今後に期待です。
嶋田健太さん。癖がない自然な演技で好感が持てます。個人的にはぼくもとさんとのやり取りをもう少し派手にして欲しかったですね。
山本大介さん。登場した時とそれ以降のシーンでのキャラクターのギャップが少々気になりました。デフォルメされたキャラクターを演じているのか、人間の内面の弱さを出しているだけなのかが量れなかったです。
長田奈麻さん。存在感ではやっぱりピカイチでしたね。謎多き美女を楽しそうに演じられていた印象です。今作のMVPです。


ある意味演劇の王道 ★★★★☆


− 公演データ −

ペンギンプルペイルパイルズ #6
「ワンマン・ショー」

2003/08/15〜2003/08/19@THEATER/TOPS
全席指定 前売3000円 当日3200円

- STAFF -
作・演出:倉持裕
舞台監督:橋本加奈子、山本修司 照明:岡村潔 音響:高塩顕
舞台美術:中根聡子 宣伝美術:岡屋出海 音楽:SAKEROCK
衣装協力:田中美和子 ヘアメイク:高橋素子
制作:渡部音子、土井さや佳、谷川隆次(日和庵)

- CAST -
小林高鹿/ぼくもとさきこ
松竹生/伊藤留奈/萩原郁/嶋田健太【50%介護】
山本大介/長田奈麻【NYLON100℃】
 

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