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thEatricals2003.08.14
「奇人たちの晩餐会 −馬鹿にしやがれ−」

2003/08/03 @ 世田谷パブリックシアター
1階G列5番

8月3日日曜日。晴れ。
すっかり夏らしい陽気となり、軽く汗を拭いつつ今回の目的地である三軒茶屋へ。
舞台となる世田谷パブリックシアターはとある建物の3階にあるので、そこまではエスカレーターを使用します。
その時にふと気づいたことなのですが、普通エスカレーターの階段部分と手を置くベルト部分の動きはシンクロしてますよね。だから、ベルトに手を置いても、その手が体から前後に離れていくことはありません。当然です。ですが、この建物の2階から3階へと向かうエスカレーターはその動きがシンクロしてないんです。本当に微妙な差ではありますが。しっかり注意していないと気づかないような、本当に些細な差。錯覚なんじゃないかと勘違いするほどの差。でも確かにベルト部分の方がわずかに階段部分よりも遅いんです。手を置くとほんの少し体より遅れているんです。いや、もう本当に微々たるもんなんですけど。ところで、何で私はそんな微々たることに熱弁をふるっていますか?

客席は3階席まで大入り。
若い女性たちに混じって、ご年配のカップルも多数。平均年齢は高そうです。
明石家さんまさんの3年ぶりの舞台ということと、ジミー大西さんが初舞台ということで話題を呼びました。
元々はフランス人作家、フランシス・ヴェベールによる戯曲です。それが映画化され話題を呼び、日本でも陣内孝則さんの主演で舞台化もされています。
ただ、今回の演出は荻野繁さん。「オレたちひょうきん族」の元ディレクターです。つまりテレビの演出家が演出をするわけです。当然さんまさんのこともよくご存知なはず。どういった演出がされるのか興味津々であります。

●パンフレット(A4版 24ページ 1500円)
赤バックにジミー大西さんが書いた絵が印刷されたシンプルなデザイン。そういえば、場内アナウンスではやたらとジミー大西さんが表紙を書いたと宣伝してました。内容は各出演者への簡単なインタビューとさんまさんの一言コメント。さんまさんには津川雅彦さんがコメントを書いています。他に西条昇氏の解説、稽古場リポート、演出家、さんま、ジミーの対談など。

●セット
豪華な装飾が目立つダイニングルーム。
舞台の左手には白い3段の階段がありそこから玄関へと向かうアーチ。
逆に右手には台所に続く設定のアーチと寝室に続くドア。
中央には豪華なソファセット。左右に1人がけのものがあり、中央に3人ほど座れる大きなソファ。
テーブルは大きく、上には電話と灰皿。
ソファセットの後ろ側には低いキャビネットがあって、お酒などのグラスセット。
壁には4枚の絵画がかけられています。
全体的に成金趣味が入った部屋といった印象です。

●ストーリー
出版社を経営している大橋(明石家さんま)には毎週楽しみにしている会食があった。それは馬鹿をゲストに招いて、その馬鹿っぷりを笑うという非常に悪趣味なもの。もちろん招かれたゲストには内緒だ。ある日、ゴルフを楽しんでいる大橋の元に友人(ラサール石井)から電話が入る。今度の会食のための飛び切りのゲストが見つかったというのだ。その話に喜ぶ大橋だったが、そのゴルフ中にぎっくり腰になってしまった。
会食当日。大橋は痛みの引かない腰を妻・由美子(秋本奈緒美)に冷やしてもらいながら今日の予定を考えていた。医者の井戸川(伊沢弘)も無理に会食に行けばさらに病状を悪化させるだけだと注意をする。会食を楽しみにしていた大橋だったが、さすがに1人で満足に動くことも出来ないこの状態では仕方がないと会食の欠席を決める。あとはゲストで招くことになっていた田口(ジミー大西)という男に断りを入れればいいだけだ。
ちょうどそこへ田口が大橋家へとやってきた。大橋は会食に向かう前に田口がどれほどの馬鹿なのかを確認しようと事前に家に呼んでおいたのだ。田口は予想以上のおバカさんだった。言うことやること全てが的外れ。しかし会食にはいけなくなった以上、田口に家にいてもらっても迷惑なだけだ。大橋はことの事情を説明し帰ってもらうことにした。
そこに出かけた妻から電話が入る。理由はわからないがもう家には戻らないというのだ。
過去に女房に逃げられた経験を持つ田口は大橋に勝手に同情し、何か手助けが出来ないかと言い出す。満足に動けない大橋はとりあえず力を貸してもらうことにするが、間違い電話をして愛人の真理絵(松永玲子)を勝手に家に呼び出してしまったり、絶縁している元友人の黒川(うじきつよし)に芝居を売って由美子の居所を聞き出させようとさせるも見事に失敗したり、挙句の果てにはせっかく戻ってきた由美子を真理絵と勘違いして追い返してしまったり、と散々な結果。このことに激怒した大橋は、田口に罵声を浴びせ追い出そうとする。そこに黒川が由美子の居場所についての有力な情報を持ってやってきた。しかし由美子がいるであろうその住所まではわからない。すると田口は国税査察官をしている友人の柴田(温水洋一)なら知っているかもしれないという。大橋は先ほどの罵声で機嫌を損ねていた田口を必死になだめ、柴田を自宅に呼んでもらう。柴田にうまくゴマをすり、情報を手に入れた大橋は必死に由美子の行方を探し出すが、どうしてもその行方をつかむことが出来ない。そこに突然、由美子が交通事故にあったという知らせが届いた。慌てて病院に向かおうとする大橋。そこにまたまた電話が。電話の相手は真理絵。自殺をすると言い放つ真理絵を必死になだめる田口だったが、話の相手をしているうちに自分が誘われた会食の目的を知ってしまう……

●感想
上演時間は約2時間。
2人のやりあう様はテレビでもおなじみなので安心感を持って見ることが出来ます。
ていうか、テレビとほぼ同じ印象でした。
一応2人ともしっかりとした役があるんですが、掛け合っている時はさんま、ジミーのキャラクターなんですよね。
つまり、メインはさんまさんとジミーちゃんの掛け合いで、その他の登場人物は話を進展させるための小道具のような印象でした。
さすがに後半は舞台っぽくなりましたけど、やっぱりちょっと毛色が違うんじゃないかなという思いは消えませんでした。
そう感じたもう1つの理由が観客の笑い声です。
とにかくお客さん大喜び。みんな笑いすぎです。
さんまさんがボケてゲラゲラ、ジミーちゃんがぼけてゲラゲラ、さんまさんが突っ込んでゲラゲラ。
お笑いのライブならともかく、ここまで周りが笑うと逆に冷めてしまいます。
演出家がテレビディレクターだという弊害が出てしまったと思います。
正直、お客さんを笑わせるのがメインなら、回りのキャストもお笑いで固めて、テレビのバラエティでやっているようなものをそのまま上演すればいいんです。
もちろん2人の熱演は認めますけど、あまりに他のキャストがもったいない。もうちょっといい演出が合ったのではないかと思います。

●役者
明石家さんまさん。元々演技力はある方ですし、アドリブにも強い。そういう意味で安心して見ていられました。ただ舞台というのを意識してか、多少トーンは押さえ気味だったような気がします。やっぱりジミー大西という得意なキャラクターを生かすも殺すもさんまさん次第ですから、妙に慎重になっている印象なのでしょうか。
ジミー大西さん。演技なんてとても出来そうにないイメージがありますけど、しっかり演技が出来るというのはバラエティ番組で証明済みです。ただ彼が演じるキャラクターはみんな一緒という問題はありますが。というわけで、そんなイメージがピッタリくる演技でした。それでも2時間の長丁場をしっかりこなしたのは拍手。
うじきつよしさん。途中の大笑いしているシーンは演技なのか素なのか微妙でしたね。ついつい脱線しそうになる舞台を軌道修正させるような役回りに見えました。それでもさんま、ジミーの2人の引力に引っ張られてしまうのは仕方ないのでしょうか。
秋本奈緒美さん。なんか年を重ねるごとに若々しく美しくなっている印象があるんですよね。何かちょっと怖い。今回は唯一笑顔のないキャラクターということで、笑いをこらえるのが大変だったのではないでしょうか。
温水洋一さん。出番が少ないながらも、インパクトの強い演技はさすがです。さんまさんとの掛け合いはピッタリでした。ジミーさんとの掛け合いがうまくいっていたのはちょっと驚き。主役の2人を除けば間違いなくMVPです。
松永玲子さん。出番が少ないのが非常に残念だったのですが、要所要所でのツボを効かせた演技はやっぱり素晴らしいです。私は舞台の下手側に座っていたので、登場シーンでのおみ足を拝見できなかったのがくやしくてなりません。
伊沢弘さん。出番は舞台の最初の方でしかも一番短いので、激語の印象は薄いのですが、さんまさんとの掛け合いはさすがに息がピッタリでした。


面白かったけど期待はずれ感も強し ★★☆☆☆


− 公演データ −

「奇人たちの晩餐会 −馬鹿にしやがれ−」

2003/07/30〜2003/08/03@世田谷パブリックシアター
2003/08/07〜2003/08/12@近鉄劇場(大阪)
全席指定 前売・当日8400円 立見5000円(東京のみ)

- STAFF -
原作:フランシス・ヴェベール
翻案:廣岡豊 演出:萩野繁(フジテレビ)
美術:山本修身 照明:五十嵐正夫 音響:長野朋美
演出助手:藤井清美 舞台監督:杉野信之
演出部:古屋治男、和泉みか、滝沢恵
照明オペレーター:武井由美子、石原由美子
音響オペレーター:伏江克司
スタイリスト:沢木祐子 メイク:五十嵐智春
代役:大場達也 制作:近藤弘道 企画制作:(株)フジテレビジョン

- CAST -
明石家さんま
ジミー大西/うじきつよし
温水洋一/松永玲子/伊沢弘
秋本奈緒美
ラサール石井(映像での出演)
 

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