m a k e s h i F t
thEatricals2003.06.04
カムカムミニキーナ 2003年本公演
「孤独なパイロット」

2003/05/31 @ シアターアプル
15列25番

5月31日土曜日。
季節はずれの台風が日本に上陸した、その日。
目が覚めると、当然のように大雨が降っていました。
普段なら、間違いなく引きこもりを決め込むような天候。
しかし、チケットは購入済であります。
雨水がたまり、池のようになった階段の踊り場の水を弾き飛ばしながら、大雨の中、自転車を走らせたのであります。
ていうか、なんだよ台風って。
5月の台風上陸は38年振りだってさ。
おまけに「リンファ」なんて可愛らしい名前付けて。
たった数百メートルの移動で下半身ずぶ濡れだよ。
どこも可愛くねぇよ。けっ。
おまけに時間つぶしで入ったパチスロで相当痛い目にもあったよ。
全部台風のせいだ。
などと悪態をついていたら、夕方にはきれいさっぱり雨が上がっていました。
私の怒りに気がついてくれたのでしょうか?
なら、パチスロで負けたお金も返してください。

カムカムミニキーナは人気のある劇団ということですが、観劇初心者の私は当然のごとく全く知りません。
今回の観劇の動機は、最近テレビで活躍している八嶋さんがいる劇団だということを知ったからです。
基本的にミーハーなのです、私は。
会場となったシアターアプルは去年見たナイロンの「東京のSF」以来。
パンフレットも販売していたので、購入してとっとと座席に座って眺めておりました。割とちゃんとした出来なのね。折りこみチラシも入っていたし、こういう丁寧な作りは好感が持てます。
観客はやっぱり女性が多目。あと、友人同士のグループでの来場が多かったのが気になりました。そのせいか開演前はいつも以上に回りの話し声が大きかった感じ。まあ、別に開演前に大声でしゃべっても構わないんですけどね。ただ、何となく気がついたんで。

20世紀初頭。人類初の有人飛行を成し遂げたライト兄弟(兄:松村武、弟:八嶋智人)は記者トーイ・ザ・アンビリーバブル(山崎樹範)の取材を受けていた。そこにあの有名な名探偵シャーロック・ホームズ(山中たかシ)がやってくる。ホームズは先日起こった殺人事件の捜査でライト兄弟にとある人物のことを聞きにやってきたという。その男の名前はアームストロング(松村武)。有人飛行時のパイロットをした男だ。しかし、彼はある日突然行方をくらましたという。彼がパイロットをした1号機と共に。
殺人事件が起こったのはアームストロングの住む邸宅。たまたま忍び込んだ空き巣が女性のミイラ死体を発見してしまう。早速捜査に取り掛かったホームズとスコットヤードの刑事であるワトスン(市子嶋しのぶ)は、近所に住むデンプシー姉妹(姉:佐藤恭子、妹:田端玲実)に聞き込みなどを行い、その女性の死体をアームストロングの妻、ケレル(松田かほり)であると推理。しかし、動機や犯人などにつながるものは少なく、捜査は難航を極めそうだった。と、そこに突然現れたホームズの兄、マイクロフト(林和義)。彼は現場は情報局が管理することになったと一方的に話を進め、ホームズたちを追い出してしまう。そしてその後発表されたのは、見つかった死体はアームストロング本人だというものだった。虚偽の発表を行ったことに疑いの目を向けるホームズ。そして独自の捜査の末、アームストロングがエジプトのカイロに潜伏しているという情報を手に入れる。早速ホームズはカイロに向かおうとするが、ホームズの恋人であるエリザベス(岩森康子)の友人マーガレット(藤田記子)が必死にひきとめようとする。エリザベスはただ泣くばかりだが、ホームズの「戻ってきたら結婚しよう」という言葉に見送ることを決意する。しかし、マーガレットの気は治まらない。こんなタイミングだというのに、突然ホームズに愛の告白をしだす始末。それを無視して出発しようとするホームズだが、マーガレットの愛の力はすさまじく、走る馬車を体1つで止めてしまうほど。それを見ていたマイクロフトは、その力を見込んでマーガレットを政治の世界に引き込もうと暗躍する。
疑惑の張本人アームストロングはカイロで世界初の空軍を作るために活動していた。しかし、隊員が毎日行っている訓練は実機を使わない想定訓練ばかり。それに業を煮やした唯一の女性隊員レディ(山崎みちる)は、アームストロングに操縦訓練を直訴する。アームストロングはしばらく考えた後に、チェロ王子(今井克己)によって最初に下された爆撃指令を彼女と2人で行うことを決意。しかしアームストロングはその指令で敵の手に落ちてしまう。
一体、アームストロングはどうなってしまうのか? そして殺人事件の犯人は?
登場人物が複雑に絡みあい、物語は意外な結末へと向かっていく。

観劇後、よく練られた脚本にしばし腕を組み考えさせられました。
戦争など、最近の世界の世相を感じさせるような内容でしたが、あえてそこを深く言及しなかったつくりはいいと思います。ただ、時代や人物や舞台などが複雑に絡みすぎていて、分かりにくい話だったのも事実。
上演時間も2時間半という割には長く感じられました。展開がまずかったんですよね。
最初に登場した八嶋、松村扮するライト兄弟が面白すぎました。
あそこで一気にボルテージがマックスまで上がりきってしまいました。そこから一気に話はシリアス度を増したこともあり、ボルテージも下がっていく一方。最初のシーンを中盤以降にもってくれば、観客からの印象度も大きく変わったはずです。
それでも最後まで見せきったのは、見事な存在感で場を引き締めた八嶋、藤田両名の力が大きかったと思います。
そうそう、ちょっとファンと思わしき方々、笑い過ぎです。面白いのは認めますけど、度を越した笑い声は迷惑にしかならないと思います。我慢するなとは言わないですけど、声を落とす方法はいくらでもあるはず。ちょっとマナーの悪いお客さんが多かった印象ですね。
小道具、大道具は非常に凝っていてビックリ。特に腕が切られるシーンは素直に驚いてしまいました。また、シンプルなセットもしっかりと作られていて、場面展開に無駄がない気がしました。だからこそ、場面展開時のダンスなどは無用だった気も。でも、使用されていた音楽は割といいセンスしていたと思います、ボリュームがちょっと大きかった気もしましたが。

八嶋智人さん。テレビで見る以上にパワフルな演技は素晴らしかったです。舞台を縦横無尽に動き回り、マシンガンのように放たれる台詞の数々。印象変わりましたね。
山崎樹範さん。序盤で八嶋、松村両名に弄ばれる姿がいいです。いじるよりもいじられた方が生きるキャラクターなのかしら。少々台詞を噛んでいたのはご愛嬌といったところでしょうか。
藤田記子さん。八嶋さん同様にパワフルな演技を見せたもう1人のMVPです。台詞よりも体を使った演技は、その小さな体以上に大きく見えました。
松村武さん。ライト兄弟の兄さんとアームストロングが同じとは最初は気づきませんでした。序盤、元気を出しすぎたせいか、後半ちょっと声が枯れていたようです。ちょっと癖はあるけど、嫌いじゃないです。
林和義さん。隻腕という、ちょっと面倒な役どころをしっかり演じていられました。安定感が感じられる演技は、見ていて安心できます。
山中たかシさん。ホームズにしてはちょっと頼りない印象ながら、さっぱりとした演技はいい感じでした。でも、ホームズファンとしては、もうちょっと威厳もあって欲しかったかな。
岩森康子さん。泣いてる時の手の仕草。癖になりそうです。
インパクトの強い役者さんのパワーのせいか、印象に残った役者さんが少なかったです。


メリハリつけすぎ ★★★☆☆


− 公演データ −

カムカムミニキーナ 2003年本公演作
「孤独なパイロット」

2003/05/21@やまと郡山城ホール・大ホール(奈良)
全席指定 前売 3800円 当日 4000円
2003/05/24〜2003/05/25@近鉄小劇場(大阪)
2003/05/28〜2003/06/01@シアターアプル
全席指定 前売 4300円 当日 4500円
2003/06/05@アステールプラザ中ホール(広島)
全席指定 マチネ 前売 4500円 当日 5000円
ソワレ 前売 5500円 当日 6000円

- STAFF -
作・演出:松村武
舞台監督:原田譲二、山本圭太 美術:加藤ちか
照明:林之弘((株)六工房) 音響:伊東尚司
衣裳:木村猛志(A.C.T.)、加藤真理茂(A.C.T.)、木村春子
小道具:桜井徹 宣伝美術:ミスヒロト 宣伝写真:ナカタニマイ
制作:鈴木祥子 制作協力:(株)ネルケプランニング
後援:TBSラジオ

- CAST -
八嶋智人/山崎樹範/藤田記子/松村武
林和義/山中たかシ/松田かほり
山崎みちる/今村佳岳/田端玲実/市子嶋しのぶ
岩森康子/中島栄治郎/今井克己/小島啓寿
米田弥央/松尾ユウコ/木戸大/佐藤恭子(東京公演のみ)
 

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