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thEatricals2003.05.27
ホリプロ×ナイロン100℃ SPECIAL SESSION
「ドント・トラスト・オーバー30」

2003/05/24 @ 青山劇場 1階C列6番



5月24日。土曜日。
関係ないですけど、私の誕生日でありました。
前振り話、終わり。

さて、今回見に行ったのはナイロン100℃主宰のケラリーノ・サンドロヴィッチ初のミュージカル作品、「ドント・トラスト・オーバー30」であります。訳せば「30以上のやつのことは信じるな」であります。私も30以上の人間ですが、言いえて妙だと思う節もあったりなかったり。
今回の舞台は「オケピ!」に続いてやってきた青山劇場。
会場5分後に到着したのですが、劇場前は長蛇の列。文庫本を読みながら、時間をつぶし、劇場内へ。
ところで、私は最近は必ずパンフレットを購入するようにしているのですが、今回のパンフレットはデカい! LPサイズであります。うわ、LPなんて久しぶりに聞く表現だ。でも実際にそうなのだ~仕方がない。ちなみに、楽曲説明などはCDサイズ。(実際にCDケースに入っていますが、CDはありません、一応)役者の紹介はすべて一昔前のジャケット仕様になっているなど、なかなか趣向を凝らしています。専用の黄色いビニール袋つきですが、結構目立つので、目立つのが嫌な方は大きい袋を持参された方がいいです。
劇場内に入ると、グループサウンズの懐かしい曲が流れています。ついつい口ずさんでみたりして。
今回は左端のブロックながら、8列目といい席なので、じっくり役者さんの表情を見ながら楽しみたいと思います。

町並みや、通りを歩く人々の服装や雰囲気がどうも古臭い印象がする東京のとある街角。
中山ユーイチ(ユースケ・サンタマリア)は、婚約者である田中レイコ(秋山菜津子)を必死に探していた。
そんな中、警官に万引きの疑いで連行される1人の少女の姿が。彼女は名前をメグミ(奥菜恵)といった。いつもピン子(安澤千草)、モケ美(犬山犬子)、ローザ(松永玲子)にいじめられていた彼女は、友達もおらず、万引きを繰り返しては、その盗品をグループサウンズ「ザ・シャークス」のボカールであるヒデ(大堀こういち)に貢ぐ毎日を過ごしていた。
そのメグミはどうやらレイコのことを知っているらしい。情報がどうしても欲しいユーイチは近くのラーメン屋で話を聞こうとするが、トイレに行っている隙にメグミにリュックを盗まれてしまう。途方にくれるユーイチ。ところで、そもそもの発端はなんだったのか?
ユーイチが生きていた2004年の東京は、某国の手によるテロ事件が頻発し、平和を叫ぶ若者たちがデモを繰り返す。しかも、そのデモにまで爆撃が行われるような荒んだ時代だった。
ユーイチとレイコは、恋人同士だったが、レイコはユーイチの優柔不断で、すぐ後悔をする性格が好きになれなかった。そのせいか、ユーイチのプロポーズもレイコは断ってしまう。しかし、ギャンブル好きのユーイチの父、裕之介(井上順)が、地雷を踏んで急死。ポケットから当たり馬券が見つかって、ユースケに2億円が転がり込んだと知ったとたん、レイコは手のひらを返したように、態度を急変。すぐさま結婚式へとなだれ込んだ。
しかし、その結婚式の最中、レイコは突然行方不明になってしまう。ユーイチは必死にレイコを探したが、手がかりさえも見つからない。
そこに反戦運動を進めている親友の早川(みのすけ)から連絡があり、彼らのリーダーである万城目メグミという老女の日記の中に、なぜかレイコのことが書かれているという。しかも日付は1958年。つまり、レイコは1958年にタイムスリップしてしまったのだ。そして、ユーイチもレイコを追って、タイムスリップをすることに。
ということで、ユーイチがたどり着いたのは1958年の東京だったのである……と思いきや、どういうわけか更に10年後の1968年に来てしまっていた。
ようやくその時代で再会を果たしたレイコはやたらと老けてしまっていた。それはそうだ、10年間をこの時代で過ごしてしまっていたのだから。おまけに、食べ物を探してゴミを漁る変わり果てたレイコの姿に、ユーイチの愛は一気に醒めてしまう。
そんな時、ユーイチの前に再びメグミが現れる。いつしか2人はつき合い始め、GSブーム真っ盛りの中、バンド結成を決める。ところが、こうしたユーイチの行動により、時間は歪み、2004年の世界が狂い始めてしまった。それに気づいた早川とサキ(村岡希美)は、タイムスリップがなぜか自由に出来てしまうレンゲ(新谷真弓)を使い、時間の歪みを戻そうと試みるのだが……

休憩込み3時間半。いやぁ、毎度のこととはいえ、やっぱり長いですね。お尻が痛かったです。
よくあるタイムスリップもののお話なんですが、話の中核にもなりうる「どうやってタイムスリップをしたのか?」という命題を、あえて説明しなかった潔さはいいと思います。でも、その反面、タイムパラドックスはしっかり考慮してあったりして。こういう話の強弱のつけ方はうまいですね、やっぱり。
で、結論としては非常に面白かったのですが、これはわざわざミュージカルにする必要があったのかな? という疑問も湧きました。あまり、ミュージカルを見たことのない私が言うのもなんなのですが、通常ミュージカルというのは、実際の台詞を歌に乗せることで、歌と共に芝居が進んでいきますよね。だから、歌がないと話が成立しない。ですが、この作品での歌はあくまで描写を助けるものでしかなく、歌がなくてもお話が成立しているんです。もちろん、いい歌もありましたから、この作品にとって歌は重要であることには間違いないんですけど、ミュージカルと言っていいのかは微妙です。じゃあ、何て言うのかと聞かれると、困るのですけども。
演出はよかったです。
ステージだけでなく、観客席も使ってみたり、ワイヤーを使ってステージをフルに活用したり、映像と音楽と演者のミックスは見ていて楽しかったです。ただ、座席の位置のせいでキレイに見えない部分もあったりはしたのですが……。
セットは、シンプルながらよく出来ていました。印象としては「ヴァニティーズ」の時のを大掛かりにした感じですね。統一感ある小道具を舞台に運ぶシーンも歌にあわせることで、違和感を減らしてくれました。こういう細かい演出ってグッときます。
ただ上にも書きましたが、ステージの左右のスペースは席によっては見えなくなってしまうんです。
ステージ上部の左右ではそれぞれ生バンドの演奏があったり、別シーンを表現したりしていたのですが、それが見えないというのは致命的な気がします。もう少しステージ全体からの見える範囲なども計算しておいた方がよかったと思います。きちんと見えない席にはお客さんを座らせないようにするとかね。
あと、一部の歌はステージ両サイドの電光掲示板に歌詞が出ていたんですが、あれはよかったですね。できることなら、全曲歌詞を表示して欲しかったです。
歌では「プラマイ0」がお気に入り。能天気な歌ですけど、楽しい雰囲気が伝わってきました。
あと「金魚鉢」はいい歌でした。14年前にたまが歌った曲だそうですが、ラストシーンにはまっていたと思います。

ユースケ・サンタマリアさん。これが初舞台だそうで。予想以上の好演だったと思います。主人公のキャラクターがピッタリだったというのもあると思いますけど、自然な演技は違和感もなく、すんなり入り込んでみることが出来ました。ただ、最後の曲では声がかすれていてしまっていたので、もう少しペース配分を考えた方がいいのかな、と。
奥菜恵さん。ちっちゃくて可愛かったです。活発な少女という役どころは、松尾スズキさんのミュージカル「キレイ」と同じなもので、かぶって見えてしまうシーンがいくつかありました。まあ、マイナスだとかそういうわけではないのですが、何となく思ってしまったので。最後のワイヤーを使ってのダンスはキレイで、優雅な空中の舞に心を奪われました。
犬山犬子さん。今作では可愛さを前面に出すシーンが多くてキュートでした。でも、あの金髪のかつらがちょっと違うなぁと違和感を感じたのも事実。猿の着ぐるみの方がしっくりきてましたと言うのは、お世辞になりますでしょうか?
みのすけさん。自分勝手でわがままタイプと、優柔不断で流されるタイプの両極端の2役をうまく演じられていました。ドラムの演奏は流石はプロといった感じ。安心して見られます。
三宅弘城さん。男性陣の中でのMVP。ちょっとバカな役どころながら、キレたときに見せる狂気の演技はすごい。あとギターの腕前も見事で、思わず拍手を呼んでいましたね。
峯村リエさん。私が個人的にお気に入りの松永玲子さん、村岡希美さん。廣川三憲さんなどは、ナイロンでも見慣れていますし、安心して見ることが出来ます。こういう役者さんが多いってのは重要なことです。
新谷真弓さん。個人的なMVPです。いやぁ、本当に可愛らしかった。今作ではずーっと彼女と松永さんを目で追いかけつづけてました。レンゲのような一途な女の子がいたら、もういちころです。やられました。ファンになります。
たまの面々。本当に久しぶりに演奏を聞いたんですが、いいですね。昔聞いた時よりも明らかにいい! 僕がようやく、たまを聞ける年代になったってことなのかしら? 石川さんの変わりない姿に妙に安心したり。
秋山菜津子さん。汚れ役ながらも、時折見せる美しさに目が奪われます。そういえば、秋山さんの「キレイ」に出てたんですよね。だから、妙に比較するような感じで見てしまったのかな。
井上順さん。その場面をほのぼのとさせる一服の清涼剤のような。惜しむらくはもっと歌声を聞きたかったですね。せっかくグループサウンズ全盛時代の話なのに、もったいない。


大きな箱で見るナイロンも新鮮 ★★★★☆


− 公演データ −

ホリプロ×ナイロン100℃ SPECIAL SESSION
「ドント・トラスト・オーバー30」

2003/05/24〜2003/06/08@青山劇場
全席指定 前売・当日 S席9500円 A席7500円
2003/06/13@愛知厚生年金会館(名古屋)
全席指定 前売・当日 S席9000円 A席8000円
2003/06/18〜2003/06/22@大阪厚生年金会館芸術ホール
全席指定 前売・当日 平日S席8500円 A席6500円 土日S席9500円 A席7500円

- STAFF -
作・演出・作詞・作曲:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
作曲・音楽監督:鈴木恵一(ムーンライダーズ)
振付:横町慶子(ロマンチカ)、伊藤千枝【珍しいキノコ舞踊団】
美術:礒沼陽子 照明:大島祐夫 音響:水越佳一
映像:上田大樹 衣裳:三大寺志保美 ヘアメイク:武井優子
フライング演出:松藤和裕 演出助手:佐藤万里 舞台監督:青木義博
宣伝美術:高橋 歩 宣伝写真:中西隆良
主催:フジテレビ、ニッポン放送、ホリプロ
制作協力:シリーウォーク 企画制作:ホリプロ

- CAST -
ユースケ・サンタマリア
奥菜恵
犬山犬子/みのすけ/三宅弘城
峯村リエ/松永玲子/長田奈麻/安澤千草
村岡希美/新谷真弓/廣川三憲
大山鎬則/吉増裕士/喜安浩平/杉山薫
大堀こういち/藤田秀世
たま(石川浩司/知久寿焼/滝本晃司)
秋山菜津子
井上順
(声の出演)小林克也

− 演奏曲一覧 −
第一幕
M−0
オーバーチュア
M−1
君は走って灰になる(全員)
M−2
DON'T TRUST ANYONE OVER THIRTY(メグミ1、メグミ2、メグミ3)
M−3
ゲバルト・ア・ゴーゴー(ピン子、モケ美、ローザ)
M−4
うんこまみれの時間旅行(レンゲ)
M−5
芸能プロダクションのハードな日常(堅部社長、シャークス、アゲハ、社員たち)
M−6
金魚鉢(ソロバージョン)(アゲハ)
M−7
EVERYONE SAYS I LOVE YOU(ユーイチ、レイコ、早川、サキ、レンゲ、村の人々)
M−8
金魚鉢(ラジオバージョン)(アゲハ)
M−9
プラマイ0(裕之介、全員)
M−10
きっかけはリュックサック(メグミ、メグミの父、メグミの母、健坊)
Mー11
抱きしめたいなら(シャークス)
M−12
東京ゴミ砂漠(ユーイチ、全員)
 
第ニ幕
M−13
青空のハニー(ヒッピーの男たち、メグミ、アゲハ、レイコ、レンゲ)
M−14
距離のあるダンス(ユーイチ、レイコ)
M−15
短さについて(ユーイチ、裕之介)
M−16
明日の前日(立花、ローザ、全員)
M−17
暴力猿(アゲハ)
M−18
花咲く乙女よ穴を掘れ(メグミの父、メグミの母、全員)
M−19
大変で行こう(レイコ)
M−20
24時間の情事(ユーイチ)
M−21
懐かしい未来(ユーイチ、メグミ)
M−22
金魚鉢(全員)
 

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