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thEatricals2003.05.12
演劇弁当猫ニャー
「弁償するとき目が光る」

2003/05/10 @ 本多劇場 E列22番



5月10日。
その日、私は軽い二日酔いで痛む頭を右手で押さえながらベッドの上で寝込んでいました。
前日、会社の部長と飲みに行き、いい気になって酒を飲みすぎてしまったのです。でも、久保田の萬寿はうまかったなぁ。
今日見る、演劇弁当猫ニャーの舞台は2時から。場所は本多劇場。自宅から下北沢まではだいたい30分といったところ。ただ今日はそれを見た後にTUBEのライブも控えていたので、食事をとる時間が取れるかは微妙なところ。となると、昼食は取っておいた方がいい。それに15分見越すと、家を1時15分には出ておけばいいか……と、頭の中でスケジュールを組む私。とりあえずの結果が生み出されたのでその方向で行こうと目覚し時計を見てみると既に1時20分でした。
慌てて着替え、家を飛び出し、駅のそばにある立ち食い蕎麦屋に駆け込み、電車に飛び乗り、下北沢駅に着いた途端ダッシュ。マルシェの店内を駆け巡り、本多劇場の自分の席についたのは2時ちょうど。とりあえず間に合ってホッとしたのであります。でも、そんなギリギリで行ったせいで、ビッグコミックスピリッツの劇CMは見逃しました。非常に残念です。
そして、開演アナウンスが。そのアナウンスによると、上演時間は間に7分の休憩をはさんで2時間45分とのこと。あれ? 確か上演時間は2時間ちょっとぐらいだったはず。どうやら直前になって、一気に上演時間が増えたそうです。それはそれでいいのですが、夕方にあるTUBEのライブは6時開演であります。間に合うのだろうか? 嫌な懸案事項が生まれてしまいました。まあそれはそれとして、舞台を楽しむことにしましょう。

演劇弁当猫ニャーという劇団は、その昔猫ニャーという名前でしたが2001年に今の名前に改名。ですので、劇団としては長いのですが、まだ4回目公演なのだそうで。
屈指の脱力系ナンセンス劇団ということで、大変期待しておりました。

中間朋子(乙井順)は何かを弁償すると目が光るという、弁償性発光神経症の持ち主。そんな特異体質を治したくて、とある精神病院に入院するも、そこは過去10年間で1人の退院者も出していないといういわくつきの病院。おかげで朋子の担当医である椿(立本恭子)は、ちゃらんぽらんな治療をするだけで、既に匙を投げている状態。そんなある日、元麻薬常習犯の患者で、今は椿の助手をしている林(細川洋平)が朋子宛に爆弾が送られてきたと病室に飛びこんできた。朋子によればそれはJRの差し金なのだと言う。朋子の父親は原宿駅の駅長をしており、事故でなくなった父親から原宿駅を譲り受け、JRがそれを取り戻そうと画策していると言うのだ。朋子が原宿駅を持っており、しかもその価値が30億もあるという事実に目を輝かせた椿は、朋子の病気を治せば原宿駅の権利を貰い受ける約束をする。そこで椿は10年前まで我が病院にいたという天才精神科医、火柱泰三(小村裕次郎)を探し出し、朋子の治療をさせることにしようとした。しかしその火柱泰三は、盲目で善良な納品業者である黒沢の別人格であること分かる。しかもその多重人格症は10年前に完治しているとのこと。今は幸せに暮らしている妻のチヅル(藻田るりこ)は、せっかく治った夫の病気を再発させようとする考えに反対した。しかし、善良な性格であるあまり、あまりにも自分が無力である現実に失望した黒沢は、再び多重人格症の病を再発させる決意を固め、そして椿の催眠療法により、天才精神科医、火柱泰三が復活したのである。一方そのころ、竹下通り商店街会長を務めている竹下カナエ(池谷のぶえ)は、原宿駅の閉鎖で衰退してしまった竹下通りの復興に頭を悩ませていた。やがて、その衰退の原因が朋子にあることを知ったカナエは、徐々に常軌を逸した行動を取り始める。果たして朋子の奇病は治るのだろうか?

うん、面白い。
いくつもの話が現れては、(解決せずに)消えていく。
出てくるキャラクターにまともなやつは全くいない。
舞台は時代を超え、宇宙を越え、想定範囲なんてお構いなし。
もう、真面目に見ちゃいけないんじゃないかという思わされます。
ギャグのセンスも、雰囲気とあいまって奇抜なものが多くて、新鮮な印象でした。
小道具や大道具
それでもやっぱり2時間45分という上演時間は長い。その割に休憩時間が7分っていうのも中途半端だし。
さすがに3時間弱もの間、ストーリーやギャグだけで、観客を惹きつけるのは無理だと思います。
やっぱり役者さんの腕は重要なんですよね。
この劇団は役者さんの上手下手がはっきりしているせいもあって、緩急ではなく、普通に上手下手で芝居を見せられるのは苦痛に感じた部分もありました。特に休憩前のシーンは退屈でした。
役者さんに関しては全体的にセリフが噛み気味な印象でした。
その中で小村さんと池谷さんがみんなを引っ張っているような感じです。
それはそれで悪くはないんですけど、今回客演できていた小村さんがいなくなるとどうなってしまうのかっていうのはありましたね。
そういうのも含めて、こういう作品作りは嫌いじゃないので、次回作も是非見に行ってみたいものです。

乙井順さん。何か初々しい演技。一応主人公なんだから、もう少ししっかり演技して欲しい。あと声も出して欲しい。マイク音声には負けちゃダメでしょ。
小村裕次郎さん。カッコイイ。今回の作品ではピカイチでしたね。台詞といい、動きといい、しっかりと自分の世界を構築されている様子で、見ていて安心します。
池谷のぶえさん。ベテランにも似た風格が漂っていました。この人の演技も安心して見ることができますね。ただ、台詞回しはちょっと失敗していたのかな?
立本恭子さん。真面目な表情でバカなセリフを淡々とこなす演技は好印象でしたけど、もっと声を出してください。聞き取りづらい個所が多かったです。
細川洋平さん。ちょっと微妙な役どころのせいか、印象は薄かったです。でも、のびのび演技してるなっていう印象は感じました。
咲野雅司さん。ならず者のジョーの役はよかった。その反面、ハジメ役はイマイチ。役によって出来不出来の差が大きいのはどうかしら。
高木康寿さん。トミーでのセリフがもうずたぼろ。もうちょっとしっかりしてください。
小澤敏彦さん。がんばってるなぁとは思いましたが、いまひとつですね。時折ハスキーになる声はどうも耳障りな印象が強かったですね。


もうすこし小さい箱の方がよかったのかな ★★☆☆☆


− 公演データ −

演劇弁当猫ニャー
「弁償するとき目が光る」

2003/05/09〜2003/05/13@本多劇場
2003/05/24〜2003/05/25 愛知県芸術劇場(名古屋)
全席指定 前売3300円 当日3500円

- STAFF -
作・演出:ブルースカイ
舞台監督:藤林美樹 舞台美術:秋山光洋
音響:鏑木知宏 照明:山口功一、シバタユキエ 映像:仲井 陽
小道具:四方智子 衣装:猫ニャー衣装部、畠山和美
制作:笠原直樹ほか 助成:財団法人セゾン文化財団

- CAST -
池谷のぶえ/乙井順
立本恭子/細川洋平/西部トシヒロ/咲野雅司
小澤敏彦/荒井隆司/久保貫太郎/高木康寿/藻田瑠璃子
村瀬香奈/小村裕次郎
 

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