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thEatricals2003.04.16
シベリア少女鉄道 vol.1'
「笑ってもいい、と思う。2003。」

2003/04/13 @ 王子小劇場



4月13日日曜日。
前日、槇原敬之のライブレポートを書いていた私は、夜更かしをしてしまいました。
で、朝10時。宅配便のチャイムで叩き起こされました。
まだ半開きの眼で、外出。目的地は南北線王子駅であります。
しかし、いくら眠いからといって寝てしまっては、王子で降りる所を行って帰って武蔵小杉駅まで行ってしまう恐れもあるので、無理やり文庫本を読みながらの移動であります。
当日は、前日までの天気が嘘のように快晴。しかも、気温も鰻のぼり。確か24度まであがったと記憶しています。ていうか24度って、ちょっとした夏気分じゃないすか。そこで私は半年振りに出した半袖シャツでのお出かけなのであります。

いつものように関係ない前ふりはここまでにしまして、このサイトのレビュー1発目となったシベリア少女鉄道の新作であります。今作は、旗揚げ公演の改訂版再演ということで、この劇団の原点を見ることが出来るわけです。1本でぐわしっと心を奪われた劇団でありますから、期待も増していきます。
しかし、悪条件が重なってしまい、満足に鑑賞できなかったんです。
1つ目は座った席が悪かった。
今回は4列目の席を選択したんですけど、3列目の真ん中あたりにやたら1人だけ座高の高い人がいたんですよ。まあ、僕も高いんですけど。ともかくその人の後ろだけは嫌だったんで、1つ右隣の席を選んだんです。ところが、私の左隣の席だけがどうしても埋まらず(多分、皆嫌だったんでしょう)仕方なく私が席を詰める形に。おかげで舞台の真ん中が全く見えません。あまり頭を動かすと後ろの人に迷惑だし……。
あと、冷房効きすぎ! 演劇の途中で冷房が入ったのですが、気を利かせすぎです。半袖で来たのがあだになってしまいました。
てなわけで、非常に消化不良な気分で観劇することになってしまいました。むむむ。


受験を控えた季節。とある高校に時期はずれの転校生、守田(染谷景子)がやってくる。彼女は「らしさ」や「見かけ」などに極端な嫌悪感を見せ、人との付き合いを頑なに拒絶した。クラスメートの恵美(水澤瑞恵)は守田に対して必死に手を差し伸べようとするが、我関せずの態度を崩そうとはしない。そんな守田の態度に同じクラスメートの赤石(秋澤弥里)や鶴本(前畑陽平)は嫌悪感をみせるが、雅博(加藤雅人)はバスケ部で自分の思い通りに動けない苛立ちから来る孤独感を守田に重ね、好感を持っていく。担任教師の石根(藤原幹雄)はそんな守田を見て、ゆっくりと心の鍵を取り去ろうと努力した。やがて、真実をクラスメートに話し出す守田。そのことでクラスの輪がまとまり始めていた矢先、とある悲劇がクラスメートたちを襲う。その悲劇は次々と連鎖をしていく。そして守田の元にも、悲劇は訪れ……


今回は大筋となるお話がしっかり作られていたのが何よりも好印象でした。
この劇団おなじみのオチの部分は、会社員勤めの私には少々厳しいものもありましたが、無駄に凝った作りで爆笑というよりは、ニヤリとさせられる感じです。
無駄に凝った作りといえば、前半部分でも無駄にリアリティにこだわった演出が見られました。
例えば、教室のドアの開け閉め、空き缶をゴミ箱に投げ込む、ロッカーの開け閉めなど、色々なところでSEが使われ、役者がマイムで表現をしていました。それはそれでいいんですが、きっちりとフォローされていない個所があったのが非常に気になりました。例えば、教室のドアを開けない生徒がいたり(本当ならしまっているはずのドアを通り抜けている)、ゲーセンが舞台の時に筐体があるべき場所を普通に通ったり。そういえば、ゲームで対戦をしている2人が普通に会話をしているっていうのも現実ではありえません。よほどの大声を出しているなら話は別ですが。リアリティにこだわるならば、一分の隙もない作りにして欲しかったです。劇場でのアンケートにも書いたのですが、無駄なリアリティは邪魔です。それ以外の部分でいくらでも補えるのですし。
それとは逆に、後半部分の凝りに凝った演出はいいと思います。セット、SEと文句なしの出来栄えでした。
あと演出で気になったのが、役者の立ち位置。
ちょっと中途半端な場所に役者が配置されているような感じがしました。この弊害が現れたのが後半部分のとある札を主役たちが上げるシーン。見事に藤原さんが染谷さんにかぶって、一番重要な札が全く見えません。端の席に座っていたならともかく、一番センターにいた私が見えないのはちょっと問題でしょう。
これがまだ初日や2日目ならまだいいです。手の入れようもあるでしょう。しかし、私が行ったのは前楽日です。ちょっと、考えてもらいたいものです。

今回初めて見る役者さんもいたのですが、演技に関しては良くなっていると思います。まだ2本しか見ていない私ですが、前作よりは実力が増していると分かります。
大筋のストーリーが非常に暗い話ながら、きっちりと演じきれていましたから、このままの流れで終わっても評価できるものだったと思います。逆にその芝居がしっかりしていたからこそ、オチの部分がかぶさった時に、笑いになかなか昇華できなかったという弊害が起きていたのがちょっと残念です。

染谷さん。難しい役どころをきっちりこなしていて、技量の高さに唸りました。やっぱり主役を張るだけのことはあります。エンディングで唯一見せた笑顔が印象的でした。
藤原さん。前作では正直パッとしない印象だったんですが、今作では飄々とした感じがピッタリ。あまり前に出ずに淡々とこなす芝居なんだなと、色がちょっとわかってきました。
秋澤さん。前作では見られなかった憂いのある表情が素敵でした。ただ、目の前にあった前列の客の頭さえなければもっと見ることが出来たのが残念でなりません。あと、前作の時にも感じたのですが、やる時はとことんやる姿勢が見えた方がいいと思います。
水澤さん。後半の衣装は素敵です。あそこのシーンは素直に面白かった。本家を見たことはないのですが、淡々とした口ぶりが役柄にはまっていました。ただ、話が進むにつれて印象が薄くなっていくのは残念。
吉田さん。今回の芝居に関しては正直イマイチでしたね。本筋にはあまり絡んでこないせいか、印象も薄い。何よりも台詞をかんでしまって思わず笑みが浮かんでしまったのは最悪。これが笑いを求められるシーンならそれを笑いに昇華させるなりのアドリブもできたでしょうが、シリアスが求められていたシーンに笑顔はありえません。
土屋さん。やっぱりずるい。
加藤さん。この劇団にはない男っぷりが出てて好印象。
前畑さん。あざとさがチラチラ見えながらも嫌いではないです。ただ、前半部分と後半部分のギャップに埋もれてしまいました感が。
加藤さん。もっと声を出しましょう。何も聞こえませんでした。

他がやらないことを大真面目で取り組む姿勢だけで納得してくれる時期は過ぎていると思うんです。
今作では次のステップをにらんだ作りが見えた気がします。あとはこれをどこまで高水準にしていくかが演出家の腕の見せ所でしょう。非常に楽しみです。

もっと面白く出来たはず ★★☆☆☆


− 公演データ −

シベリア少女鉄道 vol.1'
「笑ってもいい、と思う。2003。」

2003/04/10〜2003/04/14@王子小劇場(ノーカット完全版)
2003/04/26@パルテノン多摩小ホール(パルテノン多摩小劇場フェスティバル2003)(ショートカット版)
全席自由 前売2300円 当日2500円 04/11昼1800円 04/26前売1800円 当日2000円

- STAFF -
作・演出:土屋亮一
舞台監督:谷澤拓巳 音響:中村嘉宏 照明:伊藤孝
舞台美術:齋田創+突貫屋 大道具:松本謙一郎+突貫屋 音源製作:霜月若菜
映像:池田学、稲川真矢 衣装・小道具:染谷景子、水澤瑞恵、秋澤弥里ほか
宣伝美術:土屋亮一 制作:渡辺大 制作協力:TWIN-BEAT

- CAST -
染谷景子
藤原幹雄/秋澤弥里
吉田友則/水澤瑞恵/前畑陽平
加藤雅人【ラブリーヨーヨー】/加藤A太郎【IDENTITIES】
土屋亮一
 

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