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thEatricals2003.02.17
PARCO + CUBE
「SLAPSTICKS」

2003/02/14 @ PARCO劇場



一応会社勤めなんかをしていると、平日の仕事終わりにプライベートな用事を入れるというのは難しいもので。特に私のいる業界じゃ至難の技と言っても過言ではない。
そんな金曜日に「SLAPSTICKS」を見てまいりました。
え? 仕事? そんなものは定時に何も言わずに逃げましたよ。変に誰かに挨拶して仕事増やされたらたまらないですからね。
スーツ姿での観劇ってのもおつなものです。
今回の席はPARCO劇場のちょうど真ん中に当たる列。中央通路沿いでしたので、観劇中は足が伸ばせて中々快適でした。あまりに快適なのか、隣のおじさんは途中で寝てましたけど。
この作品は1993年にナイロン100℃で初演。キャストを豪華に再演とあいなりました。
ケラリーノ・サンドロヴィッチ作の中でも異色と噂の作品であります。

舞台は1940年のアメリカ。
映画配給会社の社員であるデニー(住田隆)は、モノクロの無声映画を退屈な表情で眺めていた。
その映画を必死に宣伝するビリー(山崎一)。しかし、時代遅れの作品に興味のないデニー。どうしても、この作品を復活させたいビリーは自分が助監督をしていた頃の話を始める。
助監督をしていたビリー(オダギリジョー)の話の舞台は1923年。過去にチャップリンなどを育てた喜劇界の有名映画監督マック・セネット(大谷亮介)はハリー(廣川三憲)、ドロシー(峯村リエ)、マリー(種子)などの役者たちを使って映画作りに励んでいた。そんなある日、喜劇役者ロスコー・アーバックル(古田新太)の姪ルイーズ(すほうれいこ)が現場に訪れる。セネットとアーバックルは親友同士。アーバックル自体はルイーズの役者デビューに乗り気ではないようだが、スポンサーなどの関係もあり、セネットに任せたようだ。若くて美人なルイーズの登場に俄かに現場は活気づいた。
その晩、編集作業にいそしむビリーの元に有名コメディ女優メーベル・ノーマンド(金久美子)がやってくる。彼女に出会えた感動から興奮するビリー。しかし、どうも彼女の様子がおかしい。彼女は麻薬に手を出していたのだ。ちょっとした手違いでその麻薬を吸い込んでしまったビリーは眠りに落ちて夢を見る。それは8年前に別れたビリーの恋人、アリス(ともさかりえ)との楽しい思い出だった。
翌日、ビリーたちの元に衝撃的なニュースが伝えられた。アーバックルが女優ヴァージニア・ラップ(中坪由起子)を殺害したというのだ。この事件を皮切りに次々とビリーに襲い掛かる悲劇。そしてアリスとは思いがけない再会をすることになるのだ。



3時間15分という長編(合間に15分の休憩あり)だったわけですが、さほど気にはならなかったです。(多分、席のよさもあったと思う)
休憩前と後では展開が別印象。明の前半、暗の後半といったところでしょうか。しかし、展開的にはやっぱり後半の方が面白い。前半にその面白さがもう少し見られれば感動の度合いが全然違ったかもしれない。
劇中には実際に無声映画の場面が流れるのですが、今までしっかりと見たことがなかったので、非常に興味深かったです。裏話なんかは普通に勉強になります。
ケラさんの脚本とはいえ、ナイロン100℃での演劇と比べると、役者さんが違うこともあってか、非常に落ち着きが感じられました。その分笑いが控えめな感じ。ただ、当時の監督たちに対するオマージュが感じられる脚本は非常に清清しい印象を与えてくれます。
ライトと黒い幕で展開されるシンプルな舞台は、作品の内容に合ってましたし、役者さんの味が色濃く出ていい感じです。


オダギリジョーさん。テレビではちょくちょく見るけど、この人の演技って全然見たことがなかったんです。想像以上にいい芝居をしていて驚きました。でもやっぱりコメディよりの印象が強いです。もっとシリアスな演技も見てみたいです。
ともさかりえさん。うわぁ、細いなぁ。簡単に折れそう。コメディとシリアスの狭間における、はかなさのようなものが非常に印象的な演技でした。正直、作品中に必要なヒロインなのかどうかは疑問なのですが、存在感はありましたね。
古田新太さん。なんでもない台詞や動きでどうしてあんなに面白いかなぁ。ていうか、今回のスタイルは少しずるいです。派手な動きはないものの、その場にいるだけで古田ワールドにする力はやっぱりすごい。でもカーテンコールでは他のお客さんはえこひいきしすぎだと思った。
大谷亮介さん。渋い芝居で見せる存在感は見事でした。格好いいです。
山崎一さん。安心して見ていられます。こういう印象を与えるのは、簡単なようで難しいもの。飄々としている中に、たまに見せる真剣の光。このままいってください。
住田隆さん。ビジバシステムの印象がものすごく強いんで、役者としてはどうなのかと疑問がありましたが、なかなかだったのではないでしょうか。でも、もっと大げさな感じがよかったかなぁ。
金久美子さん。初見でしたが、貫禄がありましたね。
廣川三憲さん。ちょっと癖があって、正直得意ではないんですけど、ラジオ司会者なんかで見せる何気ないテクニックは流石だと思いました。
後でナイロン100℃のサイトの撮影日記を見て知ったのですが、今回はとことん嫌なキャラを意識していたとか。ということは、まんまとはまっていたわけですね。でも、考えてみれば去年見た「東京のSF」では嫌な印象はなかったことに気づきました。うーん、一貫性がない感想で恥ずかしいなぁ。
村岡希美さん。最近、お気に入りの役者さんです。あの独特の演技はつぼにはまったらたまりません。今回のギブス姿の登場も素敵でした。
すほうれいこさん。可愛かったけど、もう少し頑張ってほしいかな。

この文章をアップしたあと、何気なくサイト巡りをしていたら、このロスコー・アーバックルに関する事件について、非常に細かく記述されているのを見つけたので、リンクしておきます。
でぶ君の転落 ロスコー・アーバックル強姦殺人事件」(マジソンズ博覧会


素晴らしい役者たちが織り成す良質の舞台 ★★★★★


− 公演データ −

PARCO + CUBE
「SLAPSTICKS」

2003/01/31〜2003/02/16@PARCO劇場
2003/02/26〜2003/03/02@シアター・ドラマシティ(大阪)
全席指定 8500円

- STAFF -
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ【NYLON 1OO℃】
美術:堀尾幸男 照明:原田保
音楽:中村哲夫 音響:水越佳一
衣裳:前田文子 衣裳製作:松竹衣裳
映像:上田大樹 映像協力:喜劇映画研究会
ヘアメイク:杯裕子 演出助手:福山雅朗
舞台監督:福澤論志
宣伝写真:平間至 宣伝衣装:井嶋和男
宣伝美術:タイクーングラフィックス
プロデューサー:尾形真由美、北牧裕幸ほか
企画:キュープ 製作:(株)パルコ・(株)キュープ

- CAST -
オダギリジョー/ともさかりえ/古田新太
山崎一/金久美子
峯村リエ【NYLON 1OO℃】/廣川三憲【NYLON 1OO℃】
住田隆/村岡希美【NYLON 1OO℃】
吉増裕士【NYLON 1OO℃】/中坪由起子【HIGHLEG TOWER】
種子/坪田秀雄/眼鏡太郎【NYLON 1OO℃】/すほうれいこ
大谷亮介
 

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