黒い道


 気が付くと白い世界の上に立っていた。
 前も後ろも右も左もすべてが白。
 唯一白くない黒い道が足元からまっすぐ伸びていた。
 周りに何も道標がない以上、この黒く細い道を歩くしかなかった。
 道は長く、ただまっすぐに地平線に向かって伸びている。
 どのぐらい歩いたのだろう。
 しかし、いつ終わるとも知れない道を歩きながらも、あまり体は疲れていない。
 やがて一本道だった黒い道に分岐点が現れた。
 真っ直ぐの道に飽き飽きしていたこともあってか、右に曲がることにした。
 次の分岐点は程なく現れた。
 先ほどは右に曲がったのだから、次は左だ。
 迷うこともなく歩みを進める。
 それからは立て続けに分岐点が現れるようになった。
 左へ、次を右へ、また左へ行き、次は右。
 次から次へと曲がり、歩みを進めているうちにおかしなことを感じた。
 分岐点へと差し掛かると、考えよりも先に足が動いているようなのだ。
 まるで誰かに操られているかのように。
 その疑念は歩く距離が伸びるごとに確信へと変わっていく。
 それでも足は歩みを止めず、やがて遠い視線の先に道の終わりが見えた。
 そして多分最後と思われる分岐点も見える。
 その道の先には大きな丸い穴が見えた。
 あの穴の中には何があるのだろうか。
 この道を曲がらずに真っ直ぐに進みたいという強い欲が生まれた。
 しかし、足は曲がろうとするだろう。
 それでも真っ直ぐに進みたかった。

 私はすばやく周りを見回すと、分岐点を無視して真っ直ぐ進んでいった。
 そんな私に誰かが言った。
「何、あみだくじでズルしてるんだよ!」


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